【血(NO.04)】
……それから私は1人で生きることにした。
もともと誰にも頼らず生きてきた私にとって、それは悲しくも何ともないことだった。いずれ1人で生きていかなければならない、子供の頃から分かっていたことだ。
私が大事にしていたあらゆるものは失われた。
何もかもがなくなって、生きる目的さえも失われて、私に残されたのは体内を巡るどす黒い血だけだった。
どこで死のう。そう考えながら、私はあちこちを
湖面に浮かんだボートのように、風が吹けば揺られて、波が立てばその流れに身を任せた。目的もなく、到着点もない。私は大きな湖の上のたった1つのボートだった。
『
私が授かった魔法は皮肉にも、日々を生きていくのには苦労しない力を与えてくれた。
身体能力、瞬発力や腕力、跳躍力を大幅に向上させる魔法。5大元素のどれにも属さない
その頃のプルシャマナでは、凶暴な魔物が
—————あんたみたいな細いのが、退治屋?
魔物退治の要望は主に集落の役場に持ち込まれる。私は噂を聞きつけては、その集落に出向いて仕事を
退治屋だと名乗り出ると、人々は奇異な視線を向ける。怪しみ、
「前報酬は要らない。証拠に魔物の首を持ってくる」
私がそう言うと依頼主は馬鹿にしたように笑う。
—————もう何人も殺られているんだ。あんたには無理だよ。
その言葉を聞き流し私は魔物の巣へと
そこから、
敵の首を目掛けて一直線に、標的が大きかったら喉元に。生物としての急所を一撃。それが一番早い。派手な魔法も下準備もいらない。シンプルでわかり易い。
グシャ。
壊れた噴水のように血が噴き出す。
びしゃびしゃと私を真っ赤に染めていく。臭くて汚いケダモノの血。私の腕の中で魔物の頭が醜悪な断末魔を
魂の抜けた首はもう物質でしかない。その重さと引き換えに私は幾ばくかの報酬をもらう。
—————悪魔。
1人の依頼主は私のことを見て、そんな風に言った。約束通り魔物の首を持ってきた私に向かって、
私はそれを気にしない。そんな言葉は言われ慣れている。
これはせめてものの罪滅ぼしだ。
だから、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して—————
「終わった」
そう言うと、依頼主は
もうこの集落にいることはできない。狭い集落ではすぐに噂が広まって、皆が
どうでも良い。報酬を受け取った後は大きな街を目指す。
出来るだけ人口の多い街。誰も私のことを知らない街。すれ違う人に注意を向けない街。
私が顔のない人々の一員として迎えられる街。
生きるのに十分な食料を買って、硬いベッドの上で眠る。
孤独なボートの上を
—————あぁ、わたしはなんて……おぞましい生き物なんだろう。
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