最強クラン決定戦 本戦(6/10)
『ん? なんだ、あれは──』
最初に気付いたのはファミリアに攻撃を仕掛けようとしていた重魔法騎士団だった。彼らは上空に浮かぶ巨大な岩の塊から何かが勢いよく放出され、この闘技台に向かって落ちてくるのを確認した。
『こ、攻撃が来るよ! 退避っ!!』
幻影蝶というクランの精霊使いたちが操る石の巨人は見た目に反する機敏な動きで、空から落ちてきたそれを何とか回避した。
他のクランハウスも回避に成功している。
『質量爆弾ってとこか?』
『こんなの、喰らったらヤバすぎるにゃ』
マジックナイツと牙技団は降ってきた岩の塊を見ながら恐怖を感じていた。
『落ち着きなさいな。いくらあれだけ巨大浮遊物でも、ここまで大きな岩を何度も落とせるわけがない』
蛇の形となったクランハウスに搭乗してやって来たファスダラム。彼らはハルトたちの攻撃が何度も来ないと予測した。
しかし、その考えは間違っている。
そもそもファミリアから降ってきたそれは、落下時に敵クランハウスを攻撃することが目的のものではないのだ。
『おい。この岩、動いてないか?』
『なに?』
『アレは……翼?』
『ま、まさか、ドラゴン!?』
ひとつの岩からは翼と強靭な尾が伸び、ドラゴンの形となった。これはリューシンとヒナタが搭乗するゴーレムだ。
『こっちの岩からは尻尾が生えてきたぞ! ろ、六、七、八……きゅ、九本ある』
『儂はこの形状の尾を持つ魔族を知っておる』
『あぁ、間違いない。アレは九尾だ!!』
別の岩からは九本の尾が生え、九尾狐の形に。こちらには九尾の母娘が搭乗している。災厄級の魔族が姿を見せたことで、会場にも緊張が走る。
『他のも変形し始めた!』
残りのふたつはそれぞれ人型になった。ルークとリエルが乗るのは巨大な杖を携えた魔導士のような形状。アカリとシトリーが乗るゴーレムは剣を持ち、騎士のような形状をしている。
『俺らのクランハウスを落としたいなら、まず俺らを倒せよ』
羽ばたき空に舞い上がったドラゴン型ゴーレムからリューシンの声が響く。
『母様、コレで話せばよいのかの?』
『そうみたいね。もう外に聞こえてるんじゃない?』
『よし! では──空におる主様に、手出しはさせぬのじゃ!!』
九尾型ゴーレムからはヨウコとキキョウの声が聞こえる。
『スゲーな、コレ。自分が杖を持ってるみたいに動ける』
魔導士型ゴーレムが杖を振り回す。
『ル、ルークさん。その杖、魔法を使うためのモノだと思います』
ルークが杖で敵クランハウスを物理攻撃するのではないかと危惧したリエルが念のために確認しておく。
『私たちのは分かりやすいね! 斬って、避けて、斬る!!』
『いざという時の防御は私にお任せください』
騎士型ゴーレムはアカリが攻撃を、シトリーが防御を担うようだ。
『……バカな。あれだけの巨大なクランハウスを空中に滞在させつつ、我らのクランハウスと同サイズのゴーレムを四体も?』
『しかも動きがめっちゃ滑らかにゃ』
『一体一体が屈強で、そして美しい』
『ファミリア、面白いクランだ』
『賞賛に値する! だが、この大会で優勝するのは俺たちだ!!』
ゴーレムの変形に目を奪われていた決勝参加クランたち。しかしマジックナイツがドラゴン型ゴーレムに攻撃を仕掛けたことで、全てのクランハウスが動き出した。
『かかってこいやぁぁぁぁ!』
『返り討ちにしてやるのじゃ!!』
『リエル、行くよ』『はい!!』
迎撃態勢に入るリューシンたち。
『オルガ直伝、アカリ式抜刀術を披露しちゃおうかな』
剣を腰に構え、抜刀姿勢をとった騎士型ゴーレム。
『アカリ様。それはダメだとハルト様から通達が』
『えー。じゃあ、ノーマル飛空斬にしとくね』
向かってくる巨大クランハウスに向かい、アカリが操るゴーレムが剣を振るった。
斬撃が飛ぶ。
飛竜を容易く斬り殺すその斬撃を、幻影蝶と人魔連合は華麗に避け、重魔法騎士団は幾重にも展開した魔法障壁で真正面から受け止めた。
『あらら、止められちゃった』
『ぐっ。どんなもんかと思いきや、展開した魔法障壁百層のうち九十層をたった一撃で持っていかれるとは……』
『あんなの、まともに喰らえませんよ』
『次を出される前にやねーとな!!』
幻影蝶と人魔連合がアカリたちのゴーレムに迫る。
ファスダラムと牙技団は九尾型ゴーレムに狙いを決めた。ドラゴン型ゴーレムに攻撃を仕掛けているのはマジックナイツとアークユニオン。
ルークが操る魔導士型ゴーレムは大規模魔法を幾度も展開し、ギアロットと御庭番衆を寄せ付けないでいた。
重魔法騎士団はアカリに破壊された魔法障壁の修復を優先している。
こうしてクランハウスと巨大ゴーレムたちによる殴り合い大戦が本格始動した。
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