予選第二回戦の出場選手
「今日の対戦はうちが出るにゃ!」
「私も出たいです!!」
最強クラン決定戦の予選第二回戦が始まる。
メルディやリファが出場の意欲を示していた。
「それじゃ、ふたりは確定ね」
本来なら対戦相手の出方を見てから出場選手を変えても良いのだが、ハルトはメルディたちに戦ってもらう気でいた。それは上位の冒険者であっても、彼女たちなら余裕をもって勝てるとハルトが確信していたからだ。
「シトリーさんが出たんだから、私も出て良いよね!?」
「いや、シトリーは出たって言うか……」
アカリも対戦に出たいという。彼女はハルトを除けば、この世界最強のヒト。本気の一振りで空間に異次元への穴を開けてしまうような力の持ち主だ。だからこそハルトはアカリの出場には賛成できなかった。
またシトリーは自らの意志で闘技台の上に立ったのではなく、邪神に召喚されて無理やりハルトと戦わされただけ。
「ダメ、なの?」
「──うっ」
上目遣いでアカリにおねだりされて、ハルトがそれを拒否できたことはない。
「わかった。アカリにも出てもらうよ」
「いいの!? やったぁぁ!!」
「ただし絶対に、絶対に本気出しちゃダメ。これはフリとか、そーゆーのじゃないから」
冒険者のCランク昇級試験の時、ハルトはアカリに三割の力でやれと言ったが、それを守られなかったことがある。彼自身も昔同じような失敗をしてティナを傷つけてしまったので、アカリを強く怒ることはできなかった。
「絶対に本気を出さないって、俺と約束できるか?」
「うん! 約束できるよ、ハル
遠目に対戦相手を確認し、スキル<神眼>で彼らの実力を読んだアカリがそう発言する。ハルトの直感もそれなら問題ないと告げていた。
「よし。なら怪我とかしない程度に頑張って」
「はーい」
これで三人の出場選手が決定した。
「私も出たいの!」
「妾は力比べにさほど興味はありませんので、他の方にお譲りします」
「今回は私も止めておきます」
白亜は出場を希望し、キキョウとシトリーは不参加を申し出た。
邪神に操られてハルトを攻撃した際に怪我を負ったシトリーだったが、彼女の怪我はリュカとセイラの治癒魔法で完全回復していた。そもそも悪魔である彼女には、手足の欠損すら大した問題にならない。リュカたちが治すより先に目覚めていれば、自らの力で回復することもできただろう。
「白亜は参加。シトリーとキキョウは不参加っと。あと六人出れるけど、出たい人いる?」
「あ、あの。私が出てもよろしいでしょうか?」
「私も出たいですにゃ!」
犬獣人のリリアと猫獣人のサリーも参加希望だという。それに続く者たちがいた。
「俺も出たいです!」
「ケイトが出るなら、私も!!」
かつて守護の勇者とともにこの世界を救ったとされる大賢者カナが創り出したオートマタという人造魔物。その第三世代であるケイトとアリアは単独で属性竜を倒せるほどの実力がある。
そんな彼女らも出場を熱望していた。
「おっけー! みんな、よろしくね」
これで残る参加枠はふたり。十人揃っていなくても先に六勝できれば勝ちとなる。ハルトが他に参加希望者がいないか確認しようとしていると、彼に近寄る小さな影がふたつ。
「ねぇ、パパ」
「わたしたちも、たたかい、する」
「おっ。スイとスーか、いいよ。怪我には気を付けて──って言っても、君らにダメージ与えられる冒険者なんてそうそういないよな」
ハルトが膨大な魔力と加護を与え、最強種へと進化させた四体のスライムたち。それらは幼女の姿で人化し、エルノール家の一員となった。彼女らはハルトやティナたちのことをパパ、ママと呼んでいる。
最近のスライムガールズは、以前より少し成長した少女の姿でいることが多くなった。そんな彼女らの長女スイと次女スーが参戦を申し出た。
「ふたりとも、無理しちゃダメですよ」
スイたちが出ると聞き、心配したティナがやって来た。
「はーい」
「むりせず、がんばる」
こうして十人の選手が決定した。ハルトやルーク、リューシンが出ないので、選手全員が女となった。とはいえ全員がエルノール家で過ごす者たちだ。ハルトが垂れ流す魔力を吸収し、周囲のハイレベルな者たちにつられて自然と力がついていく。今や彼女らの実力は、世界有数のSランク冒険者並みとなっていた。
不運だったのは、そんなことが分かるはずもない対戦相手たち。
「おうおうおう、なんだテメーら。こんなガキどもが俺らの相手だってのか?」
対戦が始まる時間となり、相手クランの冒険者たちが近づいてきた。
「一回戦の相手がよほど雑魚だったんだな」
「しかも全員女かよ」
「おいおい、逆にラッキーじゃねーか」
「寝技に持ち込まれても文句言うなよな」
「簡単に敗北宣言させてやんねーから」
「ぐふっ。お、オデが……。ぐふふっ」
ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべる男たち。彼らはB級クラン『バイゼル』に所属する腕利きの冒険者だ。
「ねぇ、ハル
そう言いながらデコピンの構えをするアカリ。彼女の
「アカリ、やめなさい」
アカリを制しながら対戦相手をチェックするハルト。そして彼は問題ないと確信した。
「俺の仲間たちなら、みんな大丈夫だから」
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