最強クラン決定戦 予選(15/22)
「さて、貴様は俺の孫とどういう関係なのかな?」
「ど、どうしてそれを!?」
「孫の顔は知らなかった。しかしあそこにおるリファが俺の孫であるなら、貴様のことを応援しておるエルフの少女も俺の孫だろう。末のリエルだろうな。そのくらいのことは魔力の波長から分かる」
ルークとリエルが仲良さげに会話している様子をダイロンは見ていた。そしてリエルが自身の孫であることにも気づいていたようだ。
「……俺は、リエルの夫です」
「そうか。賢者を伴侶にするとは、我が孫も見る目があるな」
ダイロンは満足気に微笑んでいる。
「俺たちの結婚をお許しくださるのですか?」
「許すも何も、貴様らは既に結ばれておるのだろう? その婚姻に問題があればサイロスが止めるはず。息子が認めた婚姻について俺がとやかく言うつもりはない」
この言葉を聞いてルークは安堵の表情を見せた。彼としてはダイロンに力を示し、リエルとの結婚を認めてほしいと思っていたようだ。
「孫ふたりが賢者と結ばれるとは、アルヘイムの未来が楽しみだ。くれぐれも早死して孫を悲しませぬようにな。なんなら俺が魔界で見つけてきた秘薬をやろう。寿命が延びるぞ」
「あ、ありがとうございます」
リエルが幸せであるなら、それを限りなく維持してやりたいという祖父なりの提案だった。闘技台の上にいるルークを心配そうに見つめるリエルの表情を見て、ダイロンはふたりが良い関係を築いているのだということにも気づいている。
「婚姻にとやかく言うつもりはない。しかし夫として、俺の孫を守れる力があるかは見ておきたいのだ。だから全力で俺と戦え」
ダイロンが覇国を上段に構える。たったそれだけの動きだった。しかし数千年の時を生きるハイエルフが、弛まず鍛錬し続けてきたのだ。その動きがあまりに流麗でルークは思わず息をのんだ。
「オリハルコンを剣一本で細切れにするエルノールのようなバケモノである必要はないぞ。賢者であるという貴様の。ヒトとしての能力を限界まで高めたお前の力を見せるのだ」
「はい。全力でいかせていただきます!」
ルークが雷属性の
それを確認したダイロンがルークに斬りかかる。
ただ振り下ろしただけで覇国から斬撃が飛んだ。
覇国は魔力を刀身に魔力を纏わせて振ることで遠隔攻撃が可能になる武器だ。しかしダイロンは覇国をただの大剣として使い、超高速でそれを振り下ろすことで真空の刃を放ったのだ。
ルークに真空の刃が迫る。
それを彼は難なく躱した。
「さすがだ。雷属性の魔纏を扱うとは」
「まてん?」
「貴様が今やっているように、魔法を身に纏う技術だ。分かって使っておるのではないのか?」
「あぁ、俺たちはこれを魔衣と呼んでいます」
それはハルトが考案して名付けた魔法。彼は邪神の呪いでステータスが〘固定〙されたことにより、肉体強化魔法の恩恵を受けられなくなった。せっかく魔法のある世界に転生したのだ。肉体強化魔法を使って大岩を持ち上げたり、手刀で海を割るようなことがしてみたいと妄想していたハルトは、いざそれができないと分かるとかなりショックを受けた。
しかし彼は諦めなかった。魔法で身体の内側から強化できないのであれば、魔法を身体の外に纏うことで肉体強化魔法と同じ効果が得られるのではないかと考えたのだ。そしてハルトは見事にその魔法を完成させた。
肉体強化魔法は最下級の魔法であり、魔法系の職であればだれでも扱える。物理系戦闘職でも使える者が多くいるのだ。その魔法にどれだけの魔力をつぎ込むかで肉体強化のレベルが変わる。
一方で魔纏は修得難易度の高い技術だ。魔力や魔法を身体の周りに停滞させることが必要で、それらを自在に動かすことができなければ意味が無い。ただしそれが出来た時、肉体強化魔法とは比較できないほどの攻撃力を得られるようになる。ハルトが生み出したつもりでいる魔衣は、この世界に古くからある技術だった。
「魔力や魔法を思うままに操作できねば意味を成さない技術だ。しかし貴様は俺の攻撃を避けてみせた。完璧に魔纏を使いこなしている証と言えよう」
ダイロンがニコニコしている。魔纏が使える時点で並みのヒトではないのだ。それを使えるのであれば魔人や悪魔と言った脅威とも十分戦えることを彼は知っていた。
「孫の夫として申し分ない力を持っておるのは分かった。安心して孫を任せられる。だが、もっと他にはないのか? 俺を驚かせるような魔法を見せてくれ!」
「驚かせるような魔法……。わかりました」
ルークの雰囲気が変わる。彼はつい先日開発に成功したとある魔法を発表する場として、今ここがふさわしいと判断した。
「お見せしましょう。俺が編み出した、究極魔法の一段上の魔法を」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます