第221話 式神のお仕事
守護の勇者が元の世界に戻った後──
「はぁ、記憶の女神様も人使い荒いよね」
「私たち式神だから
「うん、まぁ、そうなんだけど……」
魔王城に、二体の式神がやってきた。
「とりあえず、さっさと仕事終わらせて帰ろ!」
「──って言っても、世界中から
彼女たちは、記憶の女神に仕える式神だった。
女神と遥人が契約を交わし、遥人がティナに別れを言う時間を記憶の女神が与えた。
その代償として、遥人はこの世界の住人から自分の名前に関する記憶を失わせることに同意したのだ。
遥人に救われたこの世界の住人が彼に感謝すると、そのエネルギーが信仰心となって記憶の女神の許に届けられるようになっていた。
「そうね。精霊たちに手伝ってもらってるとはいえ、消さなきゃいけない名前が多すぎるよ……」
現在、記憶の女神に仕える式神と、世界中の精霊たちが協力し、人々の記憶や書物、彫刻などから遥人の名前を消してまわっている。
「遥人、人気者だったからね」
「うん。でもその分、このお仕事で女神様のとこに入る信仰心もすっごい量になりそうじゃない?」
「そうだね。もしかしたら、私たちの肉体もグレードアップしてもらえるかも!」
「おぉ、それはいいね。そしたら私、もっと胸をおっきくしてもらうんだ!」
「えっ、そこ!?」
そんな会話をしながら、二体は魔王城の最深部──玉座の間に倒れている女性に近づいていった。
「彼女、生きてる?」
「うん、生きてる。というか、女神様が遥人の名前関連の記憶を消した影響で、ちょっと気を失ってるだけだから。死んでたら困るから!」
ふたりの眼下で倒れているのは、ティナ=ハリベル。
守護の勇者である遥人と共に旅をし、勇者タカトと共に魔王ベレトを倒した英雄のひとりだ。
彼女をここに残して、遥人やタカトたちは元の世界に帰っていった。
「彼女の記憶は私たちが消さなくていいんだよね?」
「うん。遥人と繋がりの深い人たちの記憶は丁寧に消さないとまずいからね。女神様がやってくれたの。私たちのお仕事は、ティナが身につけているものから、遥人の名前を消すことだよ」
「りょーかい! それじゃ──」
「「剥きますか!」」
二体の式神が、気を失っているティナの服を脱がせていった。
もちろんそれは、ティナの持ち物全てから、遥人の名前を確実に消すために必要な行為。
「こ、これは──」
「いや、もう、服の上からでもデカいって分かってたけども、これは──」
「「メロン!!」」
二体は半裸に剥いたティナの上半身を、まじまじと眺めていた。
「ねぇ、これ……揉んでいいかな?」
「ティナのメロンを揉んだところで、貴女のはおっきくならないよ?」
「うっさいなぁ、もう」
「あっ、ずるい!」
「ちょっと……これ、ヤバくない?」
「う、うん。すっごい気持ちいい」
「これを遥人が好きにしてたって思うと、ズルいよね」
「……彼ね、魔王倒してからするつもりだったみたいなの。だから、こーゆーことを全くシてないの」
「えっ、バカじゃん! てゆーか、こんな巨乳で、美女で、自分に従順な女の子がいたのに、よく我慢できたね?」
「なんか、ティナとそーゆー関係になったら世界を救うのとかどうでも良くなっちゃいそうだって考えてたみたい。それで彼、必死に我慢してたから」
「あぁ、分かるわ。これ揉んでたら、なんか勝手に世界が平和になってる気がするもん」
「巨乳は世界を救う!」
「……あ? それはあれか? 貧乳の私は、世界を救えないと?」
「あっ、ご、ゴメン。そんなつもりじゃ──」
「素直に謝られても、なんか傷付くわぁ」
「…………」
「ねぇ、ちょっと。コイツめんどくせぇ──って顔するの、やめてくれる?」
「あ、ゴメン。あんた、めんどくさい」
「直球過ぎない!?」
「はいはい、そろそろ仕事するよー」
その後、二体の式神がティナの持ち物、そして遥人がこの場に残した物に、遥人の名前がないかチェックしていった。
──****──
「一通り見たけど、特になかったね」
「うん。気になるのは、このブレスレットの記号くらいかな?」
ティナが利き腕にはめていた革のブレスレットには、『H&T』と刻印されていた。
それは、遥人の世界の文字だ。
「これ、この世界の文字じゃないよね?」
「うん。多分、遥人の世界の文字だよ。たまに異世界人が使うのを見たことある」
「一応、消しとく?」
「んー、これが遥人の名前を表してるのかどうかが分からないんだよね。あまり関係ないのを消すのも良くないし……」
「じゃあ、放置でいっか」
「うん。そうしよ!」
物から名前だけを消すのは、結構めんどくさい。なので式神たちは、できるだけやりたくないと考えていた。
加えて、二体の式神は記憶の女神から『ティナの持ち物から遥人の
式神が面倒くさがったことと、『H&T』が、遥人とティナの
そのブレスレットは、遥人がティナに贈った初めてのプレゼント。
彼女はそれを、常に身につけていた。
とても思い入れのある品だったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます