第124話 ルナとリュカの育成計画
「今日からルナがエルノール家の一員になるから」
ルナとボーナスルームから出たら、すぐそこの部屋にティナたちがいた。
ルークやリューシン、リュカは探索に出たようで、ここにはエルノール家のメンバーしかいなかったため、俺はそう宣言した。
ちなみにボーナスルームには扉がなかったが、壁の一面を通り抜けることができるようになっていて、そこを通って出てきた。
壁を通る時、ルナが不安がったので手を引いてあげた。結果なんの問題もなく、壁を通り抜けることができ、ティナたちとの合流もできたんだ。
ボーナスルームはダンジョンから切り離された異界に設置されていたようで、中からはティナたちの魔力を検知することはできなかった。
なのでこうして、無事に合流できてほっとする。
ルナがエルノール家の一員になるという俺の言葉は、割とすぐみんなに受け入れられた。
どうやらティナが
みんなルナを迎え入れてくれたが、リファは少し複雑そうな顔をしていた。夜寝る時のローテーションを気にしてるようだ。確かにだいぶ人数が増えてきたので、どうするか考えなきゃいけない。
ちなみに、ルナが転生者かどうかということは聞かなかった。本人が話したくなった時に話してくれればいいと思う。
それから二十分ほど、俺の屋敷における家事の分担をみんなが話し合っていた。普段、家事をしない俺は蚊帳の外だ。
言ってくれれば、なんでもやるんだけどな。
一度、勝手にリビングの掃除をしてたらその日の当番だったリファに怒られた。家事を手伝おうとするより、家事を頑張ってるのを褒めてくれた方が嬉しい──そう言われた。
それ以来、あまり掃除などを勝手にやらないようにしている。その代わり、誰かが家事をしている場に出くわしたら少しでも褒めるようにしていた。
そんなのでいいのかなと思うが、みんな喜んでくれてるみたいなので良しとしよう。
ほどなくして、ルークたちが帰ってきた。
「ただいまー。あっ! ハルトとルナ、無事に出てこられて良かったな」
「ルークおかえり、待たせて悪かった。ところで、この二層目ってなにかあった?」
「何もない。宝箱もほとんど空だった」
「そうだね、つまんなかったよ」
リューシンとリュカが答えてくれた。
やはりティナたちが攻略した後、アイテムなどはほとんど補充されていないようだ。何も無いのであればさっさと先に進んでしまおう。
「みんな待たせて悪かった。それじゃ先に進もう」
「「「おぉー!」」」
──***──
その後、順調に七層目までやってきた。
ここまで来るとほとんどの魔物がレベル50を超えている。たまにレベル70近い魔物も出てくる。
転移や転生勇者はレベルが上がるのが早い。そんな勇者たちに合わせてこのダンジョンは創られているので、一般の冒険者が挑戦すると慎重にレベル上げをしながら進まないと、攻略は困難だろう。
しかし、俺たちは
全員がレベル50を超え、レベル100を超える者も多数いる。なので、この七層目までは苦戦することなく一気に来ることができた。
この辺からならいいかな?
俺にはとある計画があった。
それは──『ルナ育成計画』だ。
少し前、何故かヨウコのレベルが急激に上昇するという出来事があった。シロがうっかり、ヨウコに魔力を与えすぎたらしい。
そのせいでヨウコはレベル150を超えていた。
今やヨウコは、ルークよりレベルが高い。
また、学園祭で頑張ってくれたご褒美にと、俺がマイとメイに魔力を大量に渡した結果──
ふたりはレベル200を超えた。
マイとメイはイフリートやウンディーネといった、精霊王すら凌駕する存在に進化してしまったのだ。
普通はレベルが上がることで魔力の総量が上昇する。しかし、ヨウコは九尾狐という魔族で、マイとメイは精霊族だ。
特殊な種族である彼女たちは魔力を大量に得ることでもレベルアップが可能だった。
メルディは日々鍛錬を欠かさず、イフルス魔法学園の管理するダンジョンなどでのレベル上げに邁進していた。そのため、彼女はわずか一年の期間でレベル90まで成長していた。
さすが、戦闘種族……ほとんど単独でここまでレベルを上げるのは、なかなかできることではないと思う。
リファは元々レベル80を超えていた。彼女はエルフの国の王族で、幼い時から国が保有するダンジョンでレベルを上げていたらしい。
そんなわけで我がエルノール家は、俺とルナを除く全員がレベル80を超えていた。
そこに本日、我が家に加入したルナ。
彼女はレベル53だった。
仲間のサポートを主とする付術師という職業上、どうしてもひとりで戦うことは少なくなるので、レベルを上げにくいのだろう。
ちなみにレベル53が弱いわけではない。Cランクのベテラン冒険者がレベル60程度であることを考慮すると、十分であるとも言える。
しかしエルノール家という括りで見ると、ルナのレベルだけ低いのが目立ってしまう。
俺は家族を──みんなを守りたかった。
もちろん俺が側にいる時は、どんな敵が来ようと絶対に家族を守る。
離れていても駆けつける。
しかし、もしかしたら間に合わないこともあるかもしれない。
そんな時のために、俺は家族のみんなに最低限の力を身に付けていてほしいと思っていた。
だからこその『ルナ育成計画』だ。
「ルナ、リュカこれ持ってて」
俺はルナとリュカに青く輝く小石を渡した。
「
俺がルナたちに渡したものは『パーティー石』と呼ばれるもの。これは複数人で持つことで魔物を倒した時の経験値を仲間と分配できるアイテムだ。
この世界にはパーティーシステム的なものはない。パーティーを組んだからといって、ステータスボードに表示されたりはしないのだ。
その代わり、ルナのような非戦闘職の仲間のレベルを上げるために、このパーティー石が使われる。
「この七層目の魔物を倒して、ルナとリュカのレベルを上げようかなって」
「い、いいんですか?」
「私はリューシンとのパーティー石があるのですけど……」
「悪いけど、少しだけ俺とパーティー組んで。その方が効率いいから」
本当のことを言うと、リュカはルナのついでだった。
非戦闘系の職だからといってルナのレベル上げを手伝おうとすると、回復系職業であるリュカのレベル上げを手伝わないのも、なんだか悪い気がするから。
「あの……ハルトさんとパーティー組むのは、あまり効率的ではないと思うのですが」
「私もそう思います。まだリューシンとの方が……」
ルナもリュカに、そう言われてしまった。
ふたりがそう思うのも無理もない。
この世界では、パーティーを組んでいると
例えばレベル10の冒険者と、レベル20の冒険者がパーティーを組んだとしよう。このふたりが協力して魔物を倒した時、レベル20の冒険者は、レベル10の冒険者のおよそ二倍の経験値を手に入れられるようになっている。
そして、ルナとリュカが俺とパーティーを組むのに乗り気でない理由──それはふたりが、俺のレベルが1であることを知らないからだ。
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