SS 一番最初の世界の話(和也)
ブレイブ・ファンタジーの世界から対価を払って元の世界に戻って来るなリ、俺……
「ごほっ、が……。やべ、しんどい。倒れそう」
ゲーム慣れしてて、「詰んだゲーム世界でもクリア楽勝」だと息巻いていた過去の自分に言ってやりたいくらいだ。
あの終わりかけの世界は色々とやばかった。過酷だった。無理ゲー感半端なかった。
のたうち回りたいのを堪えて顔を上げる。
苦しみながら周囲を見回すと、そこは自分の部屋だった。
仁藤和也はこの時間本来ここにはいない。
本当なら、愉快犯で殺人犯な殺人鬼トラックに轢かれそうになって、厨二がもろ手を挙げて喜びそうな展開……異世界転生を果たすからだ。
で、ゲーム異世界に言った俺はチート能力を駆使して、滅亡的なルートを辿っている世界を救おうと苦心するのだが、それは上手くいかなかった。
勇者ご一考を口先で言いくるめて魔王城から遠のけて、生きていたユリカの妹……ユーリィを回収。
魔王討伐の為に行動していくのだが、結果は散々。
それで、和也とユーリィはあの世界を別の方法で救う事にした。
もとから反則だったが、さらにそれより正攻法ではないやり方で。
和也は、自分よりも適任である人間に、勝手な感じで後を託す為に元の世界に戻った。
ユーリィは、詰んだ状態からさらに詰んでしまった世界の時を戻す為に知らない世界に飛ばされた。
それぞれ、生命力と元の世界での存在消失を対価にして、神であるリリシャに願いを叶えてもらって、だ。
和也は血反吐でそこらへんを汚しながら捜索して、携帯を手にとって友人である練へと電話を繋げる。
『携帯の電源を切って、両手を頭の後ろに……』
ネルのゲーム機は、あのゲーム世界と同じルートを辿っている。
きっとバッドエンドになってしまった後は、相当くやしい思いをしているはずだ。
使っているだろうデータは、異世界転移する前に、いたずらで魔改造したやつ。
練に電話でゲームの攻略情報を教えてやった後は、世界の危機を経験した後から考えれば酷くどうでも良い様に思える話題……宿題がどうのとかあほな事を振った。大した理由はない。そう言う気分だったから。
そのうちに、意地悪な悪友から携帯の通話が切られた。
想像通りなら、練はさっそくパソコンに向かって、攻略情報を検索し始めるはず。
非情に残念だ。そのパソコンにも、和也仕様の仕掛けが施されていて、なぜか無性にコンビニアイスが食べたくなるようにそんな広告が表示されるように仕組んである。我ながらあほな仕掛けだった。才能の無駄使い感が半端ない。やった当時はただの悪戯だったが、今はそれはありがたい。
「ぐ……、あ、やべ意識飛びそう」
後は、リリシャが何とかして外に出た練を回収するはずだ。何事もなければ。
家にいた状態で回収すると、不意に他の人まで巻き込みかねないし、念には念を入れて。
普通の人間のくせに、何故か少しだけレアイベント発生率の高い奴だから、ひょっとしたら道中でユーリィと出会うなんて事になるかもしれないが、彼女の事だからうまくユリカのふりをしてくれるだろう。ユーリィが本当は生きていた、なんて記憶が練の頭に万が一残ってもらっては困るからだ。
「悪い……な。練……巻き込まれてくれ。悪友だろ」
非情に誠に勝手で理不尽なお願いですが。
と、和也は思う。
まあ、頑張ってくれや。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます