文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
ナイアーラトテップ〜外なる神の総意にして使者だった七賢者〜 その2
ナイアーラトテップ〜外なる神の総意にして使者だった七賢者〜 その2
異世界生活百七十日目 場所ラグナ・ヴァルタ島、ヴァパリア黎明結社本部
【三人称視点】
夜に吠ゆるもの、月に吠ゆるもの、闇に吼えるもの、血塗れの舌の神、闇をさまようもの、闇に棲むもの、燃える三眼、暗黒の男、暗黒神、暗黒の魔物、魔物の使者、暗黒のファラオ、ニャルラトフィス、黒いライオン、無貌の神、顔のない黒いスフィンクス、野獣、黒い雄牛、ナイ神父、アフトゥ、赤の女王、チクタクマン、悪心影、闇将軍、膨れ女、憎悪の像、緑の男、ウィッカーマン、這いよる混沌――ナイアーラトテップ の化身達が一斉に行動を開始した。
黄色く泡立つ粘液の塊が中心で脈動する戦場で、千の貌を持つ無貌の神が一斉に殺意を向けた。
「〈勾玉顕現・妖狐憑依〉!! 〝紅煉の世界の灼熱よ! その熱で全てを焼き尽くせ! 一切合切を焼き尽くして浄化せよ〟――〝
【九尾妖術・瀝青の逃げ水】の効果で志島達とそっくりの色と形と音と熱を持つ幻影が戦場に複数現れ、【狐火】と融合した〝
「降り注げ、地を焦がす稲妻。災いを齎す竜となれ」
「六属性矢――乱射撃」
薫の【黒雷】で形作られた九頭竜、眞由美の六属性の矢が燃え盛る炎に包まれた夜に吠ゆるものに殺到するが――。
「その、ハウラー・イン・ザー・ダーク。あの無人島で戦った奴よりも強いようだな」
『それは勿論。私はこれまで各所に飛ばしていた化身達を取り込み直し、再構成した――あの時の【夜に吠ゆるもの】とは一味違うことを覚えておいてください』
「ふん、それなら僕もあの頃とは一味も二味も違う。例え因果で【運率操作】が防がれようと関係ない。僕の力はそれだけではないからな」
右手に
連続攻撃を受けてなお倒れないハウラー・イン・ザー・ダークに狙いを定め、相沢は
「ふん、それで逃げられたと思ったら大間違いだ。輝くトラペゾヘドロン顕現」
相沢は【混沌之外神】を発動して
「転移!」
相沢の姿が戦場から消え去り、次の瞬間ハウラー・イン・ザー・ダークの頭上に転移する。
本来は見つめることで、心に異界の光景を浮かび上がらせ、混沌の彼方より
これを異世界カオスに到達したナイアーラトテップは書き換え、ナイアーラトテップ達の転移する
今回はそれが裏目に出たパターンだ。相沢から【這いよる混沌】の称号が外されたことでナイアーラトテップの化身ではなくなり、ナイアーラトテップとは別の存在として【混沌之外神】を行使できるようになった。
結果として
相沢は上空から
それが決定打となり、ハウラー・イン・ザー・ダークは闇の破片となって四散した。
『ハウラー・イン・ザー・ダークを倒してもまだハウラー・イン・ザー・ムーン、バーカー・イン・ザー・ダーク、ブラッディー・タングがいます。果たして三体を同時に相手して勝利できるでしょうか?』
ハウラー・イン・ザー・ムーン、バーカー・イン・ザー・ダーク、ブラッディー・タングの三体が一斉に相沢の方に向き直り、一斉に触手を顕現する。
「相沢さんだけではありません! 今回は私もいます!」
流石に一撃では倒れないが二体の注意を相沢から切り離して分散させることには成功した。
「ふん……エリーゼ、無茶をするな。〝万象を滅却する波動よ! 相反する相剋の力によりて顕現し、その力を思う存分揮い給え! 灰は灰に塵は塵に戻りて万物須らく円環の輪へと還る。今こそその輪を外れ、滅びの道を進み給え〟――〝
草子から対ヴァパリア七賢者に際して受け取った
狙いは未だ無傷のブラッディー・タング――エリーゼに狙いを定めたハウラー・イン・ザー・ムーンとバーカー・イン・ザー・ダークを追撃しなかったのは、エリーゼならば二体を相手にしても立ち回れると判断したからだろう。
「超越技。悪役令嬢の詛呪-The evil magic of the villain daughter-」
ロゼッタの周囲の空間がグラっと歪み、溢れ出した闇がロゼッタを覆う。
漆黒の闇が変質したドレスを身に纏ったロゼッタは右手を前に突き出し――。
「底知れぬ絶望に包まれ、光無き世界に閉ざされなさい! 《
瞬間、ザ・フェースレス・ゴッドのいる地点にブラックホールが展開され、大気諸共飲み込んで消え、真空になった空間に勢いよく風が吹き込んでいく。
「……はぁはぁ。……確かに、ナイアーラトテップ 、貴方は強いかもしれない。でもね、私達も負けられないのよ! 私だって
『まさか……【無貌の神】を一撃で。
ザ・フェースレス・ゴッドと同じ無貌の神型に分類されるブラックスフィンクス・ウィザウト・フェイスがロゼッタに標的に定め、飛び掛かる。
「……やれやれ、躾のなっていない犬っころですね。この執事が躾て差し上げましょう」
「えっ……イセルガ!? ……援護なんて必要なかったけど、一応お礼だけは言っておいた方がいいかしら?」
《
イセルガはザ・フェースレス・ゴッドの顎への蹴りから、右ストレートから左アッパーと連続攻撃を加えていった。
ザ・フェースレス・ゴッドが現状を打破するために【混沌之外神】を発動し、顕現した無数の触手でイセルガを捉えようとする。
『クフフ、私を物理で止められると本気でお思いでしょうか?』
ザ・フェースレス・ゴッドがイセルガを捕らえるべく作り出した触手球の上に立ったイセルガが、不敵な笑みを浮かべてザ・フェースレス・ゴッドを見下した。
基本的に可愛い女の子を食べたいという犯罪紛いの願いのための手段として利用される【物質透過】と【透明化】が初めてまともな用途で使われた瞬間……かもしれない。
イセルガの右ストレートが決まり、ザ・フェースレス・ゴッドは闇の破片となって四散した。
「〝万象を滅却する波動よ! 相反する相剋の力によりて顕現し、その力を思う存分揮い給え! 灰は灰に塵は塵に戻りて万物須らく円環の輪へと還る。今こそその輪を外れ、滅びの道を進み給え〟――〝
ミュラの放った相克エネルギーが、Beastと呼ばれる無貌の神型の化身を消し去った。
「〝神聖にして大いなる光よ! 眩い光と共に世界を照らせ! その光で全ての諸悪を消し飛ばせ〟――〝
続けてミュラが放った【神聖魔法】が闇をさまようもの、闇に棲むもの、燃える三眼を包み込み、聖なる光で浄化する。
『こ、これほどの速度で化身達を葬るとは!? しかし、まだ強力な化身達が残っています!』
チクタクマンと悪心影、闇将軍が凛、丑寅、栗栖、畠山、赤城の方へと迫る。
「姐さんには手を出させないっす!」
「これでも食いやがれ!!」
「〝真紅の炎よ。無数の槍となりて、我が敵を貫き焼き尽くせ〟――〝
「
凛を守るように前に出た丑寅、栗栖が
「……お前達」
「佐伯さん……俺達はこれまでアンタのことが恐ろしくて従ってきた。元いた世界でもこっちの世界でも……【即死】の力を得たアンタのことは本当に恐ろしかった。……俺達は今まで佐伯巌のために戦いたいと思ったことは一度だってない。全ては俺達自身の身を守るためだった。……でもな、今の俺は心の奥底から姐さんのために、佐伯凛のために戦いたいと思っている。だってこんなに美しい姐さんのために戦えるんだ、男冥利に尽きるってもんだろ?」
「……丑寅。…………ああ、お前達の気持ち、よく分かったわ。昔のアタシのこと、そんな風に思っていたのね」
「「「「――ひっ、ひぇぇ」」」」
佐伯凛がかつての佐伯巌が命令を下す時の凶暴な形相を浮かべ、丑寅達はかつてのトラウマが蘇り、思わず素っ頓狂な叫び声をあげてしまった。
「…………本当にすまなかった。お前達に酷いことをして、俺がどんなに傲慢だったのか、よく分かったよ」
「…………ふぇ??」
「丑寅、栗栖、畠山、赤城……これからもアタイと一緒にいてくれるかい? 一人だと寂しいし……やっぱり、慣れ親しんだお前達と一緒にいたいからな」
「あ、姐さんが、凛の姐さんがデレた!?」
「……で、デレてないわい!! ふざけたことを言ったらボコボコにするぞ!!」
「そんな姐さんも可愛いっす!! ……姐さん、ここは俺達に任せてください!! 姐さんは俺達のお姫様っすから!」
「…………お姫様、ね。アタイがそんなに可愛らしい存在だと本気で思っているのかい?」
凛は
連続攻撃を仕掛けてくるクイーン・イン・レッドの攻撃を全て受け流す凛。
防戦一方を強いられているのはこれまで【即死】に頼り続けてきたからだろう。
そのツケが回った結果、凛はクイーン・イン・レッドの隙をつけないまま常に後手に回されていた。
「…………やっぱりか。どうせ僕なんて誰からも見向きもされないよね。そんな路傍の石みたいな僕に殺されるってどんな気分かい?」
凛は対峙していたクイーン・イン・レッドの動きが鈍くなり、遂には完全に動かなくなったところでようやく違和感に気づいた。
チクタクマン、悪心影、闇将軍の三体の化身も完全に動きを止めている。
凛達もすっかりその存在を忘れていたクラスメイト。
傍若無人な振る舞いでクラスメイトに迷惑ばかりかけていた巌達不良も、その存在があまりにも希薄過ぎて――影が薄過ぎて忘れていていじめることすら無かった存在。
【不可視ノ王】を得て更に影の薄さに磨きが掛かった度会影介が【風掌握】で風を纏わせた
「ありがとう…………えっと、度会君だったっけ?」
「もしかして助けなかった方が良かったかな? 不良にすら存在を忘れられて苛められなかったクラス一影が薄い男は僕だよ、悪かったなァ!! なんで助けたのになんで疑問形なの!? というか、なんでこんなに化身倒しているのにナイアーラトテップにすら認識されていないの!? おかしいよね!!」
「うふふ、やっぱり影介君のことを認識できるのはこの私だけわ♡ やっぱり私と影介君はベストパートナー! さあ、行きましょう♡
「だからそんなに情熱的に愛を向けられても生まれてこの方誰にも愛されたことがないからその愛、絶対に受け止められない!! とりあえず今は保留にして!! 今度必ず返答するから!!」
「やったわ! 遂に私の愛が実を結ぶ時が来たわよ!!」
度会は一度も「陽炎の愛を受け止めて結婚する」とは言っていないのだが、既に振られることは絶対にないと取らぬ狸の皮算用で「結婚式場は海が見える場所で、親戚は誰を呼ぼうかしら♡ 子供は二人くらいは欲しいかな? 男の子と女の子を一人ずつ」と思考がトリップしている陽炎。
ちなみに、例え度会が告白を断ってもその程度で諦めるほど陽炎は諦めがいい女ではないので、度会が了承するまで永遠に告白を続けるだろう。……要するに諦めろ、度会。末長くお幸せに爆発しろ! ということである。
戦闘中に度会と陽炎の追いかけっこが始まったが、既に度会の手によりチクタクマン、悪心影、闇将軍、赤の女王、暗黒の魔物、魔物の使者、暗黒の男が、陽炎によって膨れ女、憎悪の像、緑の男、ウィッカーマンがそれぞれ討伐されている。
また、エリーゼによって月に吠ゆるもの、闇に吼えるものの二体が討伐され、志島の十八番の【狐火】コンボと薫、眞由美、ミュラの〝
残るは暗黒神、暗黒のファラオ、ニャルラトフィス、黒いライオン、黒い雄牛、ナイ神父、這いよる混沌、そして本体であるナイアーラトテップ。
戦いは佳境に入った……かのように見えた、が。
「嘘でしょ……」
戦場にアンブローズ・デクスター、闇の跳梁者、宿主、浮き上がる恐怖、骨格の恐怖、シュゴラン、オールド・ワンの使者、ルログ、嘆きもだえるもの、ココペリ、白い男、バロン=サムディ、テスカトリポカ、ロキ、ジャック・オ・ランタン、ハロウィンマン、這い寄る霧、黒い嵐、黒衣の男、影たまり、黄色い仮面のもの、口にするのもはばかられる大司祭、小さき這うもの、角を持つ男、皮膚無きもの、セト、トート、パズズ、黒衣の男……ナイアーラトテップの新たな化身達が姿を現わす。
そして、その中には薄汚れた印象を与える灰色の翼を持ち、黒と白が反転した瞳を持つ使徒天使の化身の姿もあった。
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