(序):裏商人ギルド会議大掃討

 異世界生活百五十九日目 場所フェニックス議国、砂漠の街デザートレーティア、裏カジノ


 砂漠の街デザートレーティア――フェニックス議国から超帝国マハーシュバラに掛けて永遠と続くように錯覚する巨大な砂漠にある小さなオアシスの街だとされている……表向きは。


 確かに街自体は小さく、小さな泉を囲むだけの小規模なものに思えるが、一度地下に潜ればそこには巨大な闇の世界が広がっている。

 フェニックス議国がアルドヴァンデ共和国だった時代以前に引かれた水道が砂漠という環境を快適に変え、悪徳商人の巣窟へと変えたのだ。しかも、その全貌は地上から確認することができない。……まあ、地中に埋まっている訳だからね。


 そうやって、フェニックス議国になってからも国家同盟や議会の捜索を掻い潜ってきたのである。


 この地下空間に行く方法は二つ。一つは上下水道を使って侵入するというものだが、白崎達に却下された。確かに不潔だからね……嫌な気持ちも分かるよ。

 もう一人は客として真正面から潜入すること。気づかれて脱出経路を使われて逃げられないように偽装をしつつ砂漠の街デザートレーティアの地下に入り、そこから裏商人ギルド会議を潰す。


 そのために俺達は変装し、砂漠の街デザートレーティアの裏世界の入り口――闇カジノに足を踏み入れたのである。

 ちなみに、ここまで入るために町にいた奴隷商人を誘拐して強制的に【契約魔法】で契約を結ばせている。もし、裏切れば即座に命を落とす。一度発動された即死を免れることはできない。


「初めまして、エリザベート=ベルリッツですわ」


「聞き覚えのない姓ですが、貴族令嬢に間違い無いようですね。……しかし、いいのですか? ここは裏社会……負け続けて資産が尽きれば……お分かりですね?」


 カジノディーラーの男はポーカーフェイスの裏で下卑た表情を浮かべている……まあ、白崎勇者パーティの女性陣は基本的に美女揃いだからね。

 このカジノで負け続けて無一文になれば、そのまま奴隷直行。負けまくった分は身体で払えってのはまあ理屈は分かるけど。


 寿司屋とかで皿洗いして安く食べられるとかとは話が違うからな。……しかも、奴隷又は性奴隷に永久就職という……うん、アウトだね。ぶっちゃけ稼いだところで奴隷から解放される訳ではないだろうし。


 ところで、何故カジノディーラーの視線が俺に集中しているんだろう? やっぱり相手の目を見て話すことが重要だからかな? ……そう解釈すると視線が胸に集中している意味が分からないけど。


 ちなみに俺は今、【色慾ト淫魔之魔神】を使って女体化し、架空の令嬢――エリザベート=ベルリッツを名乗っている。

 藍色の薔薇を彷彿とさせる装飾過多なプリンセスラインドレスを身に纏った令嬢で、マスカレードマスクをつけて顔を隠している。


 白崎達女性陣も同じくドレス姿。髪型を変え、それぞれのイメージに合ったドレスを身に纏うことで大きく印象を変えている。

 男性陣の方はタキシードや燕尾服姿。イセルガとかはそのままだな……見た目は完璧な執事だけど、中身は、ね。


「それでは、素晴らしき夜をお楽しみください」


 カジノディーラーが開けた扉の先に広がっていたのは、大きなシャンデリアが吊られた黄金空間。

 ルーレットやテーブルが所狭しと置かれ、いかにも貴族という男女がお忍びできているのか勝負に興じている。


「そ……エリザベートさん、この後どうするの?」


「そうですね。情報によればVIPになることが裏商人ギルド会議に接触する条件だということですが、そのために必要なのは即金で金剛金貨一枚を用意し、支払える財力があるということです」


「……でも、それってエリザベートさんなら余裕で支払えるんじゃないの?」


「いや、それだとつまらないですわ。自給自足――カジノで稼いだお金でVIPになった方が絶対に面白いですし。あっ、聖さん達は好きに遊んでいていいですよ?」


 ――まあ、ここで負けて奴隷落ちしても自業自得だけど、と心の中で付け加えて、俺は標的に定めたテーブルに向かう。


 やっているのはノーリミットのクローズド・ポーカー。

 最も古い形のポーカーで、各プレイヤーは自分の手札を全て隠してプレイをする。カードが配られたらまず賭けベットをし、次にカード交換を行う。そして再びベットをし、最後に全員がハンドを公開して勝敗を決めるというもので人数はディーラーを含めて二人。

 そして、この席のポーカーはノーリミットルール採用。つまり、ベットおよびレイズができる額の上限を定めないというものだ。


 そもそも、アンティが白金貨一枚という時点で金を持たない奴はお呼びじゃないっていうのが透けて見える……ってか、お忍びで来ている貴族達も手を出せないみたいだしな。安心しろ、お前らも後でしょっ引いてやるから……国家同盟が。


「お嬢さん、ここは素人が来るようなところじゃねえよ。素人なお子様は別の席で遊んでくるといい」


「いえいえ、ここで問題ありませんわ。私、カードゲームには多少自信があるのですよ。例えば……Old Maidとかですかね?」


 ちなみに、Old Maidとはババ抜きのこと。


「ハハハ、舐められたものだね。……しかし、お嬢さん、分かっているのかい? この席はアンティが白金貨一枚……つまり、白金貨一枚を即金で払えるような資産家じゃなければ挑戦することすらできないって話だ」


「ご安心ください。お父様が用意してくださっておりますわ。……私、お父様からカジノは素晴らしい場所だと聞かされておりまして、ずっと来てみたいと思っていたのですわ。どうせなら派手に稼げるところでいい思い出を作りたいのですわ」


「なるほどな、世間知らずのお嬢様か。いいぜ、白金貨一枚を出してもらおうじゃねえか!」


 ディーラーのスキンヘッドに白金貨一枚端金を渡し、ゲーム開始。


「ルールは分かっているよな?」


「ええ、お父様から聞きましたわ」


「そうかい。んじゃ、とっとと始めようぜ。……掛け金はどうする?」


「そうですね…………白金貨一枚からでどうでしょう?」


 ちなみに、この裏カジノでは金貨がそのままコインとして使われている。まあ、両替するのが面倒なんだろうね。


 五枚のカードが配られる。予想通り・・・・AとQのツーペア。


「さて、どうする?」


「追加で白金貨一枚ベッドで」


 俺はそのツーペアを解体し――。


「二枚チェンジで!!」


 新たに配られたカードは予想通り5と9……スペードのA、ハートの5、ダイヤの7、クローバーの9、ダイヤのQ……うん、ノーペアブタだね。


「ショーダウン!! ハハハ、俺の勝ちだ!!」


「ま、まだまだですわ!! 次こそは!!」


 二周目。今度は掛け金を二倍にした。組み合わせはワンペア、向こうがフルハウス。最早数字で比べるまでもない戦力差だ。


「このままやっても俺達としては嬉しいが……お嬢さんはそれでいいのか?」


 挙句、スキンヘッドのディーラーから同情的な目を向けられているんだが。……惨めな気分になるな、まあ冗談だけど。


「つ、次こそは!! 次で負けた分を取り返しますわ!!」


 盛大に負けフラグを立てながら白金貨一枚をベッド。

 五枚のカードが配られる。……さて、反撃開始といきますか。


「さて、どうする?」


「追加で白金貨二十枚ベッドで」


「な、何!? この状況で、正気か嬢ちゃん!!」


「こうなればヤケですわ!! お金を増やせなかったら屋敷には戻さないって、そういう約束でお父様からお金を貸してもらったのですわ! ここで負けたら、もう屋敷には……」


「随分とふざけた親父だな、同情するぜ。でも、これも仕事なんでな」


 ショーダウン。スキンヘッドはフルハウス、対する俺はフルハウス。スートと数字で俺の勝ち。


「やっ、やりましたわ!! 勝ちましたわ!!」


「くっ、やるな嬢ちゃん。だが、勝負はここからだぜ! 勿論やっていくよな!!」


「ええ、勿論ですわ! もっともっと稼いで、お父様に喜んでもらうのですわ!!」


 さて……と。お遊びはここまでにして、そろそろ始めるか。


「追加で白金貨四十枚ベッドで」


「追加で白金貨八十枚ベッドで」


「追加で金剛金貨一枚ベッドで」


「追加で金剛金貨十枚ベッドで」


「追加で金剛金貨五十枚ベッドで」


「追加で――」「追加で――」「追加で――」「追加で――」「追加で――」「追加で――」「追加で――」



「も、もうやめてくれ! 頼むから!!」


「いえいえ、勝負はこれからですわ! 次は掛け金金剛金貨十枚で、追加虹金貨二十枚でいきますわよ!!」


「ふ、ふざけている!! 何故、イカサマが通用しない!! まさか、イカサマを……いや、因果干渉系のスキルか!!」


 あっ……イカサマしていること言っちゃうんだ。


「そうですね。確かに確率操作系のスキルは発動していますわ。後、私って運がいいですからね。ついでに高精度演算心理型未来視も使っていますし。セカンドディール、ボトムディール……まあ、色々やっているようですが、貴方にとっては百パーセントの確率でも、私からすれば特定のカードが出る確率はカードが全て戻っているので七十二分の一。その数値を確定すれば、狙ったカードが一発で出るということです。スキルって興味深いですよね!!」


「くそ、イカサマじゃねえか!! もう勝負は終わりだ!!」


 ディーラーは席を立とうとするが立てない……まるで上から圧力を掛けられているように、身体が動かない。

 無意識な部分に向けられて発動された【貪食ト支配之魔神】の絶望の波動。圧倒的覇気によって、ディーラーの男は無意識下で理解してしまったのだ――もう、この人には逆らえないってね。……なんでそんな力をモブキャラ如きが持っているのかについては甚だ疑問だけど。


 ちなみに、今の会話だが【純潔ト摂理之聖神】で音を操作したので外には聞こえていない。


「それでは、参りましょう。掛け金金剛金貨十枚、追加虹金貨二十枚です!!」



 意識を失って泡を吹いているディーラーから金を巻き上げた俺は白崎達と共にカウンターに向かった。


「あの……金剛金貨一枚でVIPになれるとお聞きしたのですが」


「そのお話はここですることはできませんので……お連れ様も別室にお越しください」


 若いディーラーの男に先導され、俺達はカジノの最奥にあるエレベーターホールに。

 若いディーラーが6,12,B8,3,B1,3,9,B5の順でボタンを押すと、エレベーターが高速で地下に向かって動き出した。


「こんな仕掛けになっていたとは! 凄いですね!!」


「従業員しか知らないルートです。マグレでも辿り着くのは無理だと思います。パスワードも変わりますからね。……改めて、ようこそ裏商人ギルド会議へ。俺はカシム=ヴィルキィンスって言います。以後お見知り置きを」


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NAME:カシム=ヴィルキィンス AGE:23歳

LEVEL:999999

HP:999999/999999

MP:999999/999999

STR:999999

DEX:999999

INT:999999

CON:999999

APP:999999

POW:999999

LUCK:999999


JOB:黎明結社メンバー、闇商人、大盗賊アーク・シーフ


TITLE:【偸盗の王】


SKILL

【全属性魔法】LEVEL:MAX(限界突破)

→全属性の魔法を使えるようになるよ!

【複数魔法同時発動】LEVEL:MAX(限界突破)

→複数の魔法を同時に発動できるよ!

【物理無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→物理を無効にするよ! 【物理耐性】の上位互換だよ!

【衝撃無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→衝撃を無効にするよ! 【衝撃耐性】の上位互換だよ!

【魔法無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→魔法を無効にするよ! 【魔法耐性】の上位互換だよ!

【状態異常無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→全ての状態異常を無効にするよ! 【状態異常耐性】の上位互換だよ!

【即死無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→即死を無効化するよ! 【即死耐性】の上位互換だよ!

【因果無効】LEVEL:MAX(限界突破)

→因果干渉を無効化するよ! 【因果耐性】の上位互換だよ!

【クライヴァルト語】LEVEL:MAX(限界突破)

→クライヴァルト語を習得するよ!

【ミンティス語】LEVEL:MAX(限界突破)

→ミンティス語を習得するよ!

【マハーシュバラ語】LEVEL:MAX(限界突破)

→マハーシュバラ語を習得するよ!

【ジュドヴァ=ノーヴェ語】LEVEL:MAX(限界突破)

→ジュドヴァ=ノーヴェ語を習得するよ!

【エルフ語】LEVEL:MAX(限界突破)

→エルフ語を習得するよ!

【ドワーフ語】LEVEL:MAX(限界突破)

→ドワーフ語を習得するよ!

【獣人第一共通語】LEVEL:MAX(限界突破)

→獣人第一共通語を習得するよ!

【獣人第二共通語】LEVEL:MAX(限界突破)

→獣人第二共通語を習得するよ!

【海棲語】LEVEL:MAX(限界突破)

→海棲語を習得するよ!

【ヴァパリア黎明結社共通語】LEVEL:MAX(限界突破)

→ヴァパリア黎明結社共通語を習得するよ!

【算術】LEVEL:MAX(限界突破)

→計算が早くなるよ!

【交渉】LEVEL:MAX(限界突破)

→交渉が上手くなるよ!

【弁明】LEVEL:MAX(限界突破)

→弁明が上手くなるよ!

【相場】LEVEL:MAX(限界突破)

→相場が分かるよ!

【値切り】LEVEL:MAX(限界突破)

→値切りが上手くなるよ!

【韜晦】LEVEL:MAX(限界突破)

→自分の才能や地位などを上手く隠せるようになるよ!

【説得】LEVEL:MAX(限界突破)

→説得が上手くなるよ!

【賄賂】LEVEL:MAX(限界突破)

→賄賂が上手く使えるようになるよ!

【社交辞令】LEVEL:MAX(限界突破)

→社交辞令が上手くなるよ!

【腹芸】LEVEL:MAX(限界突破)

→腹芸が上手くなるよ!

【経理】LEVEL:MAX(限界突破)

→経理が上手くなるよ!

【信用】LEVEL:MAX(限界突破)

→信用を勝ち取りやすくなるよ!

【詐術】LEVEL:MAX(限界突破)

→詐術が上手くなるよ!

【陰謀】LEVEL:MAX(限界突破)

→陰謀を企てるのが上手くなるよ!

【冤罪】LEVEL:MAX(限界突破)

→冤罪を作るのが上手くなるよ!

【証拠隠滅】LEVEL:MAX(限界突破)

→証拠隠滅が上手くなるよ!

【暗躍】LEVEL:MAX(限界突破)

→暗躍が得意になるよ!

【脅迫】LEVEL:MAX(限界突破)

→脅迫が上手くなるよ!

【尋問】LEVEL:MAX(限界突破)

→尋問が上手くなるよ!

【掣肘覇潰】LEVEL:MAX(限界突破)

→圧倒的覇気で相手を威圧するよ! 【覇潰】と【掣肘】の上位互換だよ!

【気配察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→気配察知が上手くなるよ!

【魔力察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→魔力察知が上手くなるよ!

【熱源察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→熱源察知が上手くなるよ!

【振動察知】LEVEL:MAX(限界突破)

→振動察知が上手くなるよ!

【危機感知】LEVEL:MAX(限界突破)

→危機感知が上手くなるよ!

【全マップ探査】LEVEL:MAX(限界突破)

→今居るマップ情報を完璧な状態で得るよ! 【空間把握】の上位互換だよ!

【神魔眼】LEVEL:MAX(限界突破)

→あらゆる視覚スキルの究極体だよ! 【視敵】、【俯瞰視】、【暗視】、【千里眼】、【照魔鏡の瞳】、【心眼】、【邪眼】、【魔眼】、【瞳術】、【透視】、【動体視力超化】、【看破】、【過去視】、【不確定未来視】の上位互換だよ!

【偸盗之王】LEVEL:MAX(限界突破)

→形あるものからステータスのような形ないものに至るまであらゆるものを盗むことができるようになるよ! 形あるものを奪う【窃盗技理】と形ないものを奪う鎖を操る【奪取之鎖】の二つの効果があるよ! 【盗賊者】の上位互換だよ!


ITEM

・フォーマルスーツ

礼服フォーマルスーツだよ!

・黎明結社のペンダント

→ヴァパリア黎明結社のシンボルである六芒星に十字架を合わせた意匠のペンダントだよ!

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 ……ヴァパリア黎明結社のカシムね。やっぱり予想通りだったか。


「ところで、どのような目的で?」


「上質な奴隷が欲しいのと、後は商売やコネクションが目的ですわね。我々、ベルリッツ商会も是非お仲間に加えて頂きたいと思いまして」


「なるほど……闇商売の参入と、裏市場でしか入手できない高級奴隷の購入ですか。……美しい顔をしていても、中身は腐りきった貴族なのですね……おっと、失礼致しました」


「貴方も裏世界の人間ですわよね? そこでお金を稼いでいる以上、私達裏の顧客を否定することはできないと思いますわ」


「……確かに、弱いものが搾取されるのは当然のことです。この世界は弱肉強食ですからね。ですが、貴方方貴族のように生まれながらに莫大な富を持ち、民達から吸い上げたお金で煌びやかに着飾り、華々しい世界で暮らす一方で、奴隷を労働力や欲望よ捌け口として使う歪んだ連中がいることも事実。そういう連中に限ってなんの努力をすることもなく強者として振る舞う。もし、この世界が弱肉強食であるならば、全員が同じ位置にいないと不公平だと思いますが……まあ、そんな貴族からお金を吸い上げている我々裏の人間も同種ですからね。全く、反吐が出ますよ。そういう連中と同じような感覚になってきているということが……おっと、すみません。今のは無しということで。ご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません」


 エレベーターが止まり、扉が開く。


「さて、ここから先が裏商人ギルド会議の会場となりますが、その前に裏商人ギルド会議の議長代行と顔合わせを――」


「それには及びませんわ。もう十分ですわよ。……確かに、反吐が出ますよね。私もですわ。奴隷などという身分の存在も、亜人種差別も、民から徴収した税を領地経営や民のために使う訳ではなく、私腹を肥やし、ギャンブルのために使う貴族の存在も。だからこそ、そんな貴族達と癒着し、表では取り扱えない商品を取り扱う、貴方達――裏商人や闇商人と呼ばれる者達が存在してはならないのですわ」


「…………貴女は、何を言って」


 【色慾ト淫魔之魔神】で性別を戻し、衣装をいつものものに変え、エルダーワンドを刀剣の状態に変化させる。


「〝今、空間は掌握され、封鎖された。故に全ての空間魔法は霧散する〟――〝空間封鎖-Dimensional Lock-〟」


 空間固定効果を持つオリジナル【空間魔法】で空間を固定――この効果により地下空間全体が瞬間移動、空間に干渉する魔法やスキルが使用不可能な領域となった。


「…………ッ! 侵入者か!! まさか性別を変えて貴族令嬢として侵入してくるとは!! 何者だ!!」


「改めまして、能因草子です。国家同盟の依頼を受け、裏商人ギルド会議を壊滅させるために参りました。ちなみに、〝空間封鎖-Dimensional Lock-〟で空間を固定しましたので【空間魔法】では逃げることはできませんし、逃走経路は上下水道を含めて抑えています」


「……草子君、いつの間に」


「いや、白崎さん。万全の状態で敵の拠点に攻め込むのは至極当然でしょう? 使徒天使、魔竜・紫神、クラリッサ=ソレィユ、アーリーン=リュンヌ――持てる最大勢力を配置したので脱出は超越者デスペラードじゃない限りは無理かと。……ってことで、やはりバックにいたヴァパリア黎明結社――お前らも当然逃がさねえよ」


「ちっ、超越者デスペラード……我ら“十罪の王”では勝ち目がない……だが、超越者デスペラードは能因草子――お前だけだったな! 他のお仲間は我が【偸盗之王】の効果を受ける!!」


 はい、残念。超帝国マハーシュバラ冒険者組とアストリアとリーリス以外は全員超越者デスペラードに至っているんだよな。――それに。


「【殺気圏ノ王】!!」


 【殺気圏ノ王】で鎖を砕き、【偸盗之王】を無効化する。


「じゃあ、悪いけど死んでもらうよ。ヴァパリア黎明結社を見逃すとかあり得ないからな。〈凍冷焔華フロスト・ブレイズ〉・〈炎喰焔華デマイズ・ヴァーミリオン〉――〈真金焔華トゥルー・フレア〉。消し炭になりなさい」


 炎を凍らせる焔と炎を燃やす焔を手の中で融合し、金色の焔を構築してから“狐火”と融合して黄金の“火球”を形作り、放つ。

 過程を吹き飛ばして相手を消し炭にするという結果のみを導き出す炎はカシムを一瞬で焼き尽くした。


 ――【偸盗の王】のカシム、撃破。

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