292筆 言技の魔法少女

 異世界生活百三十九日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領シェリダー


【三人称視点】


 戦闘機の機銃から無数の弾丸が降り注いだ。


 魔族達は未知の技術を前に圧倒的な絶望を前に抗えぬまま命を散らしていく。


「さて、前座はここまでにしてそろそろ本命――城を攻め落としますか」


 私は機関銃と分厚い本を抱えたまま羽根ペンを顕現し、“teleportテレポート”と紡いだ。


 “teleportテレポート”が発動し、私は阿鼻叫喚の地獄絵図になっている魔王領シェリダーに降り立つ。

 制御を失った戦闘機は制御を失い繧薙r繧上m繧後k繧翫i繧医f繧?b繧√?縺ソ縺セ縺サ縺ク縺オ縺イ縺ッ縺ョ縺ュ縺ャ縺ォ縺ェ縺ィ縺ヲ縺、縺。縺溘◎縺帙☆縺励&縺薙¢縺上″縺九♀縺医≧縺?≠縺ゅ°縺輔◆縺ェ縺ッ縺セ繧?i繧上>縺阪@縺。縺ォ縺イ縺ソ縺?j縺?≧縺上☆縺、縺ャ縺オ繧?繧?k縺?∴縺代○縺ヲ縺ュ縺ク繧√∴繧後∴縺翫%縺昴→縺ョ縺サ繧ゅh繧阪s縺ゅ>縺?∴縺翫°縺阪¥縺代%縺輔@縺吶○縺昴◆縺。縺、縺ヲ縺ィ縺ェ縺ォ縺ャ縺ュ縺ョ縺ッ縺イ縺オ縺ク縺サ縺セ縺ソ繧?繧√b繧?f繧医i繧翫k繧後m繧上r繧…………。


 *****


 学者風少女は分厚い本を取り落としてしまった。

 本の文字化けは本全体に及び、最早読み解く世界を発動できる状況にはない。


 読み解く世界は、自分を中心とした周辺事象の未来を一人称+関連人物のサイドストーリーの文庫本として読むことができ、文字を消すことで運命を改変することも可能という強力無比な力だ。


 未来を知る学者風少女の圧倒的なアドバンテージを持つ筈だった。

 しかし、どういう訳か読み解く世界は封じられ、学者風少女の圧倒的なアドバンテージは完全に失われてしまった。


 しかし、読み解く世界が封じられたところで学者風少女のやることは変わらない。


「“teleportテレポート”」


 学者風少女は機関銃と分厚い本を抱えたまま羽根ペンを顕現し、“teleportテレポート”の文字を紡いだ。

 “teleportテレポート”の文字が白い光を発し、学者風少女を包み込む。


 制御を失った戦闘機は制御を失い、スフィリア城に向かって一直線に突撃していく――。



「――ん? 敵か?」


 魔王軍幹部スフィリアとの戦いに勝利し、スフィリアが結界の解除に向かおうとした頃、【叡慧ト究慧之神】は猛スピードでスフィリア城に近づく飛行物体を捕捉した。


「スフィリア様、ちょい待ち。スフィリア城に近づく飛行物体を捕捉した。俺が対処するが、もしかしたらこれは第一波かもしれない。敵の攻撃の第二波が来るかもしれないから、念のために城内の人達に警戒するように伝えてもらいたい」


「敵……ですか?」


「まあ、大方予想がついているけどね。相手は多分魔王領バチカルや魔王領エーイーリーに仕掛けてきた魔法少女と呼ばれる連中だと思いますけどね。……ジューリアさん、念のためにスフィリア様の護衛を頼む。魔王軍幹部様と雖も超越者デスペラードの性質を付与されている相手に勝ち目はないからな」


「了解なり」


 スフィリアのことをジューリアに頼み、俺は城の外に〝移動門ゲート〟を開いた。


「……おいおい、異世界にF-15かよ。いつからmilitary fantasyになったんだ?」


 それは紛うことなきF-15 イーグル。……89式5.56mm小銃を持って元自衛官が異世界で戦う……訳ではなさそうだな。どう考えてもステイツの制空戦闘機だし。


 ……内部に敵反応は無し。飛行機に乗って戦う魔法少女……と思ったけど違ったみたいだ。魔法少女は魔法少女でも魔導エンジンとユニットを使って突如世界各地に出没した正体不明の謎の存在と戦う魔法少女……あれ、魔法少女の分類でいいのか? な路線に切り替えてきたと思ったけど違ったみたいだ。


 大量のミスリルとオリハルコンを生成し、【主我主義的な創造主デミウルゴス】で形を与える。


亜空を捻じ曲げる常闇アンシャル――掃射バースト


 F-15 イーグルを世界の修正力によって消し去った。


 ……ふう、なんとか城に攻撃される前に手を打てた。……でも、今の銃撃で死傷者が出ているな。


 一応、蘇生は間に合いそうか。……今回の首謀者を探すべきだが、まずは治療だ。


「〝巡れ、廻れ、生々流転の円環世界。移り変わる命の裡に秘めたる聖なる力よ。我が命に秘められし原初の命より受け継がれし愛。その慈愛に満ちた輝きを顕現し、全ての我が同胞を癒し、生きる力を与え給え〟――〝情愛之聖域アモール・サンクチュアリィ〟」


「〝嗚呼、惨き戦場よ! 戦に身を投じ、生命を散らした殉教者達よ! 戦火に焼かれ焦土とかした大地よ! せめて、せめてこの私が祈りましょう! いつまでも、いつまでも、祈り続けましょう〟――〝極光之治癒オーロラ・ヒール〟」


「〝君、死にたまうこと勿れ。我が願いは世界の理を覆す歪んだ願い。然し、それでも我は求める、我が愛する者が甦ることを。君、死にたまうこと勿れ。我が愛する弟よ。君、死にたまうこと勿れ。我が愛する家族よ。君、死にたまうこと勿れ。我が愛する親友よ。運命で定められた理不尽な死。今こそ、その理不尽を歪んだ願いで覆し、愛する者を我が元へ〟――〝死者蘇生リザレクション〟」


 弾丸を抜き、死に至っていない者には【回復魔法】を、死に至った者には蘇生魔法をかける。


「…………能因草子、ですね」


 ――学者風の美少女がそこにいた。


 学者帽子を被り、パニエで膨らませ、紫色のネクタイを合わせた可愛らしいワンピースの上から身の丈以上のサイズの白衣を羽織っている。紫色リボンが至る所にあしらわれてきた。

 ワンピースと黒色ニーソックスの間に絶対領域を作り出している。


 右目は黄昏色、左目は紅色でアスタリスクが刻まれたオッドアイの少女は、どこからともなく顕現した羽根ペンをくるりと手の中で弄んだ。


「私は魔法少女アンテリジャンと申します。単刀直入に言いますと貴方を倒すために参りました。……未来を読む本がバグってしまった誤算はありましたが、貴方が現れてくれたので結果オーライということでいいでしょう。……これから結界を発動します。巻き込んだところでどうせ救出されてしまうので、対象は貴方一人です。それでは、死んでください」


 胸元につけられた文字のように見える形の石――プリンセスジュエルが眩い紫色の光を放つ。

 瞬間、俺は紫色の空間に引きずり込まれた。



 異世界生活百三十九日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国? 悪堕ち魔法少女の結界内


 転送された場所は図書館みたいなところだった。


 ……これまでの結界とは明らかに種類が違うな。内側と外側という分け方ではなく、五つの小さな部屋に分かれているらしく、その最奥部に他の悪堕ち魔法少女の結界では内側の結界と定義される魔法少女の部屋が存在するらしい。


 図書館を徘徊するのは巨大な梟。


-----------------------------------------------

NAME:言技の堕魔の使い魔

LEVEL:100

HP:40000/40000

ΣΑ:80000/80000

STR:90000

DEX:30000

INT:1000000

CON:40000

APP:1000

POW:40000

LUCK:58


SKILL

【鉤爪理】LEVEL:100

→鉤爪使いの真髄を極めるよ! 【鉤爪術】の上位互換だよ!

【翼理】LEVEL:100

→翼使いの真髄を極めるよ! 【翼術】の上位互換だよ!

【羽撃】LEVEL:100

→羽を飛ばすのが上手くなるよ!

【無音飛行】LEVEL:100

→無音飛行が上手くなるよ! 【飛行】の上位互換だよ!

【森羅魔眼】LEVEL:100

→森羅万象を見通す魔眼を得るよ! 【看破】、【邪眼】、【魔眼】、【瞳術】、【透視】、【千里眼】の上位互換だよ!


ITEM

-----------------------------------------------


 何体も徘徊しているみたいだが、こいつらを倒せば次の部屋に行ける……という訳ではなさそうだな。


 とりあえず、部屋の反対側に行ってみるか。


Le Théâtreテアトル duドゥ Grandグラン-Guignolギニョール/glacerグラセ flammeフランム


 張り巡らせた極細の【粘鋼撚糸】に【法則之神】で凍冷焔華を纏わせ、攻撃に繰り出す。


「喰らい尽くせ、【貪食ト銷魂之神】!!」


 細切れにした筆記の堕魔の使い魔を全て捕食していると、近くに立て札が立っていることに気がついた。


『図書館の中ではお静かに。椅子に座って本をお読みください。棚の前に立っていられると他の利用者様の迷惑になります』


 ……図書館職員の心の叫びなのだろうか? いや、これ実はヒントになっていたりして。

 うん、椅子に座ったら筆記の堕魔の使い魔から攻撃を受けることが無くなった。一方的に攻撃を仕掛けられるみたいだ。


 だけど、生存する使い魔の数は常に一定になるようで、倒しても倒してもキリがない。とりあえず進むしかないってことだな。


 言技の堕魔の使い魔を倒しまくって壁まで移動。ちなみに本棚も調べたがただのハリボテで中身は白紙だった。

 表紙に何か仕掛けがあるかと思ったけど、あんまり関係なさそうだな。


「とりあえず、これが鍵……か?」


 次の部屋に続く場所には壁があり、埋め込まれる形で図書館に不釣り合いなモニターがあった。

 片手で言技の堕魔の使い魔を蹴散らしつつ、触れてみる。


『――1分間に12問出題します。6問正解しなさい。正解すると次の部屋に進めます』


「って、タイ●ショックか!!」


 うん、突っ込んでいいよね。これ。


『問題。魔族側ではテネグロ、人間側では何と――』


「――紅茶」


『魔王軍幹部、全部で――』


「――十人」


『PGM ヘカートIIのヘカートとは?』


「ギリシア神話の女神ヘカテーのこと」


『初代魔王のフルネームは――』


「ユグドラジア・ヒュム=ジェドレユ」


『F-22 ラプター、製造者は?』


「ロッキード・マーティン社、ボーイング社の共同開発」


『コンポジション C-4、甘い味のする中毒性の強い――』


「トリメチレントリニトロアミン」


『アーティチョークに含まれる生理活性物質――』


「シナリン」


『今何問目?』


「……やっぱりあるのかよ。八問目」


『今何匁?』


「ダジャレかよ!! 重さじゃないのでカウントできません」


『原子核が陽子1つと中性子1つの水素はデューテリウム。では――』


「トリチウム、又は三重水素」


『魔王領内にある飲食店の数は? など見当もつかないような量を推定する方法を――』


「フェルミ推定」


『次の問題を正解した時次の部屋に進める?』


「そりゃ進めるよ! 全問正解だから」


 画面の端に正答数と問題数が書いてあるのに、出すのかっ! て問題だったな。今何問目もだけど。

 壁が割れ、横にスライドして開き、先に進めるようになった。


 ……どうやら今の行程をもうしばらく続けなければならないらしい……図書館である必要なくない!?



「意外と早かったですね。もう少し時間がかかると思いました」


 ……ふう、なんとか最奥部に辿り着いた。

 異世界カオスと地球の知識が入り乱れた問題だった……やっぱり、異世界カオスに流れ着いた地球人って多いんだな。


-----------------------------------------------

NAME:魔法少女アンテリジャン

LEVEL:999

HP:999999/999999

MP:999999/999999

STR:999999

DEX:999999

INT:999

CON:999999

APP:999

POW:999999

LUCK:999


JOB:魔法少女


SKILL

【言技聖女】LEVEL:9999

→言葉を使って敵と戦うよ!

【ジュドヴァ=ノーヴェ語】LEVEL:10

→ジュドヴァ=ノーヴェ語を習得するよ!


ITEM

-----------------------------------------------


 魔法少女アンテリジャン……なんとなく気づいていたが、やっぱり言葉を弄する魔法少女だったか。

 能力は、自己申告していた未来を読む本とペンを使った魔法のような力……言技みたいなものの二つが確定しているが、F-15 イーグルを作り出した能力もある……強力な能力をいくつも抱えていると考えるのが無難だろう。


「流石に私だけでは荷が重い。悪堕ち魔法少女ドッペルを使わせてもらうよ」


-----------------------------------------------

NAME:言技の堕魔power_of_words

LEVEL:1000

HP:1000000/1000000

ΣΑ:3000000/3000000

STR:1000000

DEX:1000000

INT:56000

CON:1000000

APP:-10000

POW:1000000

LUCK:10


SKILL

【筆理】LEVEL:1500000

→筆使いの真髄を極めるよ! 【筆術】の上位互換だよ!

【ペン理】LEVEL:1500000

→ペン使いの真髄を極めるよ! 【ペン術】の上位互換だよ!

【言技の堕魔の呪法】LEVEL:1500000

→言技の堕魔の呪法だよ!


ITEM

-----------------------------------------------


 無数の筆記具が寄せ集まった堕魔か……ソード●ーレムのペン版みたいな奴だな。

 とにかくでかい。……そして、寄せ集め感が凄い。万年筆とかならともかく毛筆とか羽根ペンとか武器になるのか?


「“emeth”……“×e”……“meth”」


 っていきなり《power_of_words》? ペンゴーレムが攻撃を仕掛けてきたんだが……それってゴーレムを倒す手法であってゴーレムの使う技じゃないよね!!

 即死攻撃分類なので無視してペンゴーレムに接近。


「【魔法剣・闇纏ヤミマトイ】」


Envelopperオンブルベ avecアベック les ténèbresテネーブル/Fenteファント innombrable《イノンハーブル》 pleineプレン luneリュンヌ


 エルダーワンドを変形させ、【魔法剣理】で闇を纏わせ、複数の円を描いた後に巨大な円を描き、その中心を突く。

 無数の切っ先がペンゴーレムを破壊した。


「しりとり、リナリア、アンチマテリアルライフル」


 そのままペンゴーレムを破壊しようと思ったんだが、魔法少女アンテリジャンが対物アンチマテリアルライフル――アキュラシーインターナショナル AW50を顕現し、こっちに撃ってきた。


 まあ【物理無効】があるから効かないんだけどね。

 しかし、F-15 イーグルを召喚できた理由がまさか一人具象●しりとりだっとは……違う?


 なんとなくみっちゃんみたいな手にした物を別の物に変える能力の応用かと思ったけど違ったみたいだ。見た目は似ているのにな、フクロウはあしらってないけど。


言霊書技ソリッド・ワード・【STONE】」


 手で書いた文字に性質を付与して実体化させて放つこともできるのか。


Envelopperオンブルベ avecアベック les ténèbresテネーブル/Centソー rendezファンデ-vous rapidesラピッ


 エルダーワンドをレイピアの形状に変化させ、高速突きを放つ。

 石化した巨大なSTONEの文字を砕き、そのままアンテリジャンに向かって走る。


「“teleportテレポート”」


 ちっ、瞬間移動まで使えるのか。……また面倒な。


「“Jewelsジュエルズ”・“deployディプローイ”・“shootシュート”・“accelerateアクセラレート”・“crystallize《クリスタライズ》”・“painペイン”・“delayディレイ”・“explosionエクスプロージョン”」


 羽根ペンから次々と文字が紡がれていく……おいおい、どんな大技を使う気だよ!!


「【宅警ノ王】!!」


 多種類結界を張り、アンテリジャンの攻撃に備える。


 顕現した無数の宝石Jewels設置deployされ、一斉にshootれる。

 多重結界に命中した無数の宝石は結界を結晶crystallizeさせ、数秒後に爆発explosionさせた。


「しりとり、林檎りんご林檎りんごをリンスに、リンス、水爆」


 ……おいおいマジかよ! Царьツァーリ-бомбаボンバまで使うのかよ!!

 ……これはマズイぞ! 被曝の意味で。……水爆の熱は魔法を重ね掛けすればなんとか耐えられるだろうが、被曝の方は免れられない。


亜空を捻じ曲げる常闇アンシャル――掃射バースト


 亜空を捻じ曲げる常闇アンシャルを作り出し、Царьツァーリ-бомбаボンバを世界の修正力で消し去った。


「【転移ノ王】!!」


「“teleportテレポート”」


 ちっ、逃げられたか。だが、今回は範囲内だ!


「【支配者の聖域ディヴァイン・ゲート】!!」


 【転移ノ王】で【支配者の聖域ディヴァイン・ゲート】を発動し、アンテリジャンを俺の前に転送する。


「“chainチェイン”・“explosionエクスプロージョン”・“extendエクステンド”・“overheatオーバーヒート”・“feverフィーバー”」


 瞬時に羽根ペンで単語を紡ぎ、俺を倒そうとしたようだが無駄に終わったな。


「残念。俺に炎は通じないんだよ! 【法則ト靈氣之神】」


 数珠繋ぎchainになった大爆発explosionを【法則ト靈氣之神】で操作し、無害化四散させる。


「これで終わりだ。Envelopperオンブルベ avecアベック les ténèbresテネーブル/concasserコンカッセ


 そして、そのままエルダーワンドで切り刻み、【貪食ト銷魂之神】で捕食した。

 ……ふう、ご馳走様でした。

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