文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
5.紆余曲折を経て封印されていた女神様を復活させることになりました。
5.紆余曲折を経て封印されていた女神様を復活させることになりました。
異世界ガイア生活一日目 場所女神遺跡
女神遺跡の内部に到着。
魔法陣を守護するように配置された九体の女神像が見つめる中心部――魔法陣の中心に転送されたみたいだ。まあ、狙った通りなんだけどね。
「フツミさん、これが戦女神様?」
『はい。始祖精霊――戦女神の像です。北から光と浄化を司る白の戦女神テルミヌス=シエル=セリュエスト、万物を焼き尽くす紅の力を持つ紅の戦女神ソレイフィア=エカルラトゥ=ヴォルカニクス、治癒と癒しの橙の力を持つ橙の戦女神トワイライナ=オランジュ=フランメヌ、大地の黄の力を持つ黄の戦女神トパーシュ=ジョーヌ=アレクサンドロス、木の翠の力を持つ翠の戦女神エメレティス=ヴェルトゥ=フォレノメス、水の蒼の力を持つ蒼の戦女神サファリア=アジュール=シーウォード、鉱石の紫の力を持つ紫の戦女神アメジェス=ヴィオレ=アイリッシュライン、風の藍の力を持つ藍の戦女神インディーアス=アンディゴ=ラピスラズリーヌです。そして、最後の崩壊した石像は闇の黒の力を持つ黒の戦女神アーゥティルキフォ=ヌワール=アッシュドゥーフのものでした」
打ち砕かれた石像からは全く精霊の気配を感じない。
間違いない。この壊れた石像の中身は完全に無くなっている。……何者かに、いや〈
「とりあえず、封印を解きますか。……〝全ての魔法を粉砕せよ〟――〝マジカル・デモリッション〟」
封印は《概念魔法》によってなされていた。だが、《概念魔法》も結局のところは魔法の一種――全ての魔法を破壊する〝マジカル・デモリッション〟の前では無力だ。
石像に込められた永久封印の概念が消滅したことで、石像に囚われた者達が石像から飛び出した。
一人目は白銀の髪と紫紺の瞳を持つ少女。純白のドレスを身に纏っている。……白の戦女神テルミヌス=シエル=セリュエストだな。
二人目は燃えるような真紅の髪と紅玉の瞳を持つ艶然とした女性。燃えるような真紅のプリンセスラインドレスを身に纏っている。……紅の戦女神ソレイフィア=エカルラトゥ=ヴォルカニクスだな。
三人目はセミロングまで伸ばした橙色の髪を音符型の髪留めで止めた橙色の瞳を持つゆるふわ系女子。服装はアイドルか!? とツッコミを入れたくなるようなアイドル衣装風。……多分、橙の戦女神トワイライナ=オランジュ=フランメヌだと思う……じゃないかな? 女神って感じが全くしないけど。
四人目は金色の髪と
五人目は腰まで届く翡翠の髪と
六人目はショートの青の髪と
七人目は肩まで届く紫の髪と
八人目はメガネをかけた才女風。服装はスカートタイプのレディススーツ。……藍の戦女神インディーアス=アンディゴ=ラピスラズリーヌ……だよね? どこかの社長秘書とか、元悪の魔法少女で後に騎士団の会計を務めるようになる藍騎士さんとかじゃないよね!? ……どっちかっていうとどこかの陰険? な第二皇女様を彷彿とさせるけど。
そして九人目……本来、黒の戦女神が居るべき場所からは誰も現れなかった。
俺が【叡慧ト究慧之神】で視た通り、石像の中身は奪われてしまっていたようだな。
そして、現れた瞬間に俺達――否、ヱンジュに明確な敵意を向ける戦女神達。
その事態に困惑する白の始祖精霊に仕える一族の娘――七曜ヱンジュ。
…………俺達置いてきぼりじゃん。もう、読書していていいよね。
◆
『七曜の娘ェ! よくも、よくも篝火の……いや、七曜以外の全ての巫女一族を根絶やしにし、私達をこの石像に封印したという狼藉を働きながら、おめおめと私達の前に顔を出せたわね!! この炎で焼き尽くしてやるわ!!』
手に炎を宿し、烈火の如き怒りをヱンジュにぶつけるソレイフィア。
他の始祖精霊も実力行使までには及ばないとしても明確な殺意をヱンジュに向けている。
「ねえ、フツミさん。何がどうなっているの?」
『分かりません……テルミヌスとリンクして情報を得るまではこの状況を理解することは難しそうです』
ヱンジュとフツミにとっては身に覚えのないことで怒られているからな。
曽祖父とか高祖父がした狼藉を当代が咎められている的な? ……まあ、ヱンジュとフツミは擬似時間移動をしている訳だから、自分達の子孫のした行いなんだろうけど。
まあ、無視されているし、こんなモブキャラの一人、話を聞いていなかったところで問題はないだろう。さて、読書読者……今回は、ミント正教会の教典です! いや、まだ研究が始まったばかりなので……ほら、ずっと旅していてなかなか時間が取れなかったからね。まあ、時間は作るものなんだけど……文字通り、ね。
『あらあら、戦女神――始祖精霊に囲まれているのによく平然と無視して……何かをやっていられるわね』
無視して読書をしていたら三ページ目でインディーアスにジト目を向けられた。
いや、なんで!? もしかして、怒りを向けられていない人も話だけは聞いておかないと駄目なの!? 関係ない話なのに??
『…………というか……貴方、本当に人間なの? そこの色黒のお兄さんや黒い翼を持っているお姉さんも人間ではないみたいだけど……貴方は別の意味で常識の埒外だわ』
「なんか初対面でいきなり常識の埒外扱いされたんだが……いや、何をやっていたって読書ですよ読書。とりあえず、俺達の持っている情報とソレイフィア様の主張、壊れた黒の戦女神の石像と〈
『…………何?』
ヱンジュに向けられた視線が今度は俺に集中。瞬時に殺気を柳のように往なす……往なさないと、これ視線だけで射殺されそうだからな。
「証拠? なら、テルミヌス様が自分の分身――布都御霊姫とリンクすればそれが証明になるんじゃないかな? 七曜ヱンジュ――彼女は布都御霊姫と共にフェアボーテネの《神代空間魔法・
「草子さん! 弁護するならきっちり弁護してくださいよ!?」
ヱンジュが涙目で抗議してきたんだが……何故、自分で誤解を解く努力をしない。
『……草子さん、でしたね。布都御霊姫とリンクをして分かりました。…………今までの無礼、お許しください。戦女神と意識が融合したことでようやく理解できました。フェアボーテネなどという神を語る偽物などとは比べ物にならない化け物――そんな貴方が慈悲深いからこそ、私達はこの世界に帰還することができ、戦女神達を救出することができ、フェアボーテネを倒す算段を立てることができています……そんな貴方様に敵意を向けるなど愚の骨頂。消し去るのなら私だけにしてください』
『『『『『『『――テルミヌス!?』』』』』』』
「いや、一時的とはいえフツミさん……いやテルミヌス様とは同じ目的を共有する立場なのですし、戦女神――精霊を統べる存在の一人がそんな弱腰ではいけませんよ。『おい、そこの男! 全ての精霊を統べる始祖精霊様の御前であるぞ! 図が高い!!』くらい言ってもいいんじゃね? ……と、遅くなりましたが初めまして、始祖精霊の皆様。俺は能因草子、森神歴二万三千年に行った自然神とフェアボーテネの戦争の際に巻き込まれて異世界カオスに転移してしまったヱンジュ様をお届けに参りつつ、全ての元凶――魔導文明サドォリュムの大企業Homesteading the Noosphere industry元課長フェアボーテネ・エヒト・フリュヒテをこの手で抹殺するために異世界から参ったただのモブキャラです。とりあえず、まずは話し合いで解決を」
『…………話し合いだと! そんな悠長なことを言っていられる時間はとうに過ぎた!! 人間、お前もだ! 私達を裏切った償いはしてもらうぞ』
「あの、さ。聞こえなかった。とりあえず黙って話を聞け、つってんの。復讐の怒りを燃やすのはいいけどさ、関係のない人を燃やし尽くしてどうするの? そんなに燃えまくっていると、本当に倒すべき相手を目の前にした時に完全燃焼しちゃっていて何もできなくなるっすよ? 炎だけに? ……と、冗談はここまでにして…………
『…………へぇ、面白いね。人間のお兄ちゃん。まるで見てきた風な口ぶりだね』
「トワイライナ様、なかなか鋭いですね。実は、封印を解いた瞬間に皆様に〝
「…………もしかして、ツバキが。そんな……」
七曜ツバキ……やっぱりヱンジュの家族だったか。
まあ、まだ確定ではないんだけど。
「戦女神の皆様はご存知だと思いますが、森神歴二万三千年――魔導文明サドォリュムから転移してきたフェアボーテネとそれまでこの世界で信仰されていた自然神の戦争が起きました。その際、七曜ヱンジュさんを見て七曜家に目をつけたフェアボーテネは、七曜家の人間の身体を憑依することで手に入れた後に、反抗勢力になり得るその他の巫女一族を滅ぼし、戦女神を封印。皆様が見たのは七曜家の者……まあ、仮に七曜ツバキさんということにしておきましょうか? ということになると俺は推理しています」
『…………確かに、あの時の七曜の者からは邪念を感じました。草子様の仰るように〝神〟を名乗る憑依されていたのかもしれませんね』
トパーシュは俺の推理に賛同してくれたみたいだ。……まあ、あくまで俺の推理であって確定事項ではないんだけどね。
「戦女神の皆様を襲ったのが何者か……その答え合せはフェアボーテネの討伐の最終段階でするとして、問題は砕かれた黒の戦女神の像ですね。……俺は本日、〈
『……異界の天使……聞いたことがないな。…………確かに、草子だったか? お前の考えはかなり真実に近いものなのだろう。お前の話には筋が通っている。……それで、お前は私達を復活させ、何をしようとしているのだ? お前もまた異世界人――この世界に厄災をもたらす可能性は十分にあり得る』
サファリア――良くも悪くも生真面目で融通が利かない騎士っぽい人だな。俺、こういう人、苦手なんだよ。
「俺の目的はヱンジュさんを元の世界に送り届けることでした。もし、自分に世界を渡る力があり、世界の座標を検索する力があり、大した労力も掛からないのであれば、そりゃ誰だって助けるでしょ? いや、寧ろ助けろよ! ですが、ヱンジュさんがこの世界に戻ったところで安全に生きられないのであれば、それは紛争地帯に武器も持たせずに一般人を放置するも同然……折角送り届けたのに死なれてしまっては意味がありませんから。まあ、フェアボーテネの故郷である魔導文明サドォリュムを消滅させたマルドゥーク文明とも縁があるので、縁の繋がりでフェアボーテネくらいは倒して帰ろうと思っています……まあ、結局のところ俺の目的はヱンジュさんを安全な故郷に戻してから安心して異世界カオスに戻ることに集約されます」
というか、異世界カオスでの魔王軍幹部巡りがメインであって、フェアボーテネと〈
「まあ、戦女神様達を復活させた理由はフツミさんがリンクができなくなっていると心配されていたのと黒の戦女神様の状況確認をしたかっただけですので。……フェアボーテネの討伐参加は要請しないですが、どうしても敵討ち、真相を確かめたいという方はご同行お願い致します」
『私はテルミヌスの時も布都御霊姫の時もヱンジュの友です。私はヱンジュの剣――どこまでもあなたの望むままに』
まあ、布都御霊姫の本体のテルミヌスはヱンジュと共に戦うって言うよな。
白の戦女神が同行するのは想定通りだな。
『私は自らの目で真実を見極める。七曜の娘、草子――お前達のことを認めた訳ではない。神と騙るフェアボーテネを倒すのには同行するが、お前らに力を貸す訳ではない。それを
よくあるパターンだな。最後に誤解が解けて、真の意味でヱンジュとの関係が良くなることを祈ろう。
『草子さんって面白い人だね。強大な力を持つにも拘らず、それを
いや、俺じゃなくてヱンジュに力を貸してやってくれよ。俺、別に戦女神と契約しに来た訳じゃないし。
『七曜ヱンジュ、貴女からは私達を封じた七曜の娘のような邪念を感じません。七曜家に対して思うことはあります……ですが、もしフェアボーテネが七曜の一族の身体を奪っていたとしたら、あの娘も被害者ということになります。……よくよく考えると、七曜の娘が自分達の信仰する戦女神を封印する訳がありませんからね。……七曜ヱンジュ、貴女のことを信じ、私も力を貸しましょう』
そうだよ! どっちかっていうとトパーシュみたいにヱンジュの方に力を貸して欲しいんだよ! こんなモブキャラに力を貸しても意味がないんだよ!!
『私は争いを好みませんが、真実を知るためには時に力を振るわなければならないもの。微力ながら、私も協力させて頂きます』
翠の戦女神エメレティス=ヴェルトゥ=フォレノメス――木や植物を司る始祖精霊。
自然を愛する温厚な女性っぽいけど、こういう人に限って怒ると怖いんだよな。
どう考えてもソレイフィアのように戦闘向きじゃないけど、植物を扱う力というのは本当に恐ろしい。それを、俺はクイーンアルラウネから学んだ。
『もし、本当に全ての元凶がフェアボーテネを討ち、水月家の無念を晴らすのは私の役目だ。草子、勿論私も同行していいのだろう?』
「拒否はしませんよ。できれば自分の身は自分で守って欲しいですけどね。危なくなったら神域に姿を隠すなりしてくだされ。まあ、個人的にはヱンジュさんに力を貸してやって欲しいですけどね。他の戦女神様も」
『……私はまだヱンジュを信用した訳ではない。人となりを見た上で、本当に信用に足ると思えば力を貸す。それは、他の戦女神についても同じだろう』
サファリアはどこまでも真っ直ぐ騎士だな。
信用に足るのなら力を貸す――この一言に全てが集約されている。つまり、俺達はまだ完全に信用されていないということだ。……うん、はっきりしていていいね。心に沁み渡る〜。
『私も多々良家の無念を晴らしたい。草子、お前達について行けば、フェアボーテネを倒すことはできるのだろう?』
「まあ、多分ね。どこまでのレベルになっているかは分からないけど、まあなんとかなると思っている。まあ、俺がいた異世界は難易度が意味不明だったから、この世界の上位相手でも遅れを取るつもりはないよ」
『戦女神が束になって戦っても封印されてしまった相手――それにどう立ち回って勝利するのか、私もその場で見させてもらおう。……勿論、私自身でトドメを刺すのを目指すけどね』
現状では得られている情報は少ない。確実に勝てると確証を持っては言えないが、勝てる見込みが全くない訳ではない。
まあ、問題はフェアボーテネよりも〈
『私も同行致しますわ。皆様と同様にヱンジュ様が信頼に足ると確信した時は、この力をお貸しすることをお約束致します。――戦女神に囲まれ、神威を向けられても平然と読書を続けられる
インディーアス……もしかして、割と陰険? 陰険眼鏡キャラなのだろうか?
「ということで、早速フェアボーテネを討伐しに向かおう! と言いたいところですが、そろそろ暗くなって参りました。一日目はここまでにして休息を取った方がいいと思いますが……流石にこのメンバーで宿を取るのは色々な意味で大変ですし……この女神遺跡の周囲にある女神都市――
ジューリア達、俺と付き合いが長いメンバーを除き、ほぼ全員がキョトンとした。
◆
【三人称視点】
白亜の大理石のようなもので形作られた神殿に黄金の光が淡いベールのように降り注いでいる。
魔法により永遠に奏で続けられる荘厳なパイプオルガンの音が響き渡る空間の中央には精緻な彫刻が施された椅子だけが置かれている。
そこまで続く一本道の廊下には《空間魔法》が掛けられ、玉座までの距離を無限だと錯覚させる。
椅子に座るのは婉然とした女性。腰まで届く麦穂のように豪奢な金髪、燃える夕陽のような真紅の瞳。白磁や雪も斯く白く滑らかな剥き出しの肩、大きく開いた胸元から覗く豊かな双丘、すらりと伸びる手足と白魚のような指、艶かしいその肢体は、あらゆる艶の概念を詰め込み、過不足ない完璧な容姿を体現している。
身に纏うのは純白のマーメイドラインドレス。スリットから伸びるスラリとした美しい脚線の足を組み、玉座に頬杖をついて座るその姿は、その瞬間を切り取れば女神を描いた宗教画になってしまうほど絵になっている。
仄かに漂う妖しい色香が魔性を感じさせ、傾世の予感を感じさせる。
そこに、七曜ツバキの面影はどこにもない。
女神――フェアボーテネ・エヒト・フリュヒテは、徐に水晶玉を覗き込んだ。
神の領域に至ってなお〈
そこで、フェアボーテネは魔導文明サドォリュムに存在したホムンクルスの技術を使用し、神の使徒――
「まさか、七曜ヱンジュがこの世界に戻ってきていたとはな」
婉然とした女の声音で、男言葉で話す姿はどことなくチグハグさを感じさせる。
それに何より、絶対的女神である今のフェアボーテネからはどことなく小物の気配が漂っていた。
黙っていれば美人なのに……これほどまでにこの言葉が似合う存在というのもそうはいないだろう。
口を開くたびに、その矮小で邪悪な本心が顔を出し、美しき女神の姿を台無しにする。
フェアボーテネは、当初七曜ヱンジュの身体を新たな器にしようとしていた。
だが、ヱンジュは《空間魔法》に巻き込まれどこかの世界に飛ばされてしまったため、仕方なくフェアボーテネはその妹――七曜ツバキの身体を奪った。
しかし、真にフェアボーテネの器に相応しいのはヱンジュである。フェアボーテネは七曜ツバキの身体を奪ったことで改めてそう強く思い、失われてしまったヱンジュの身体に対する欲を募らせていったのである。
……人の身体と人生を奪っておいて「コレジャナイ感」を感じるのは酷く身勝手だが、エリート至上主義と選民思想、女性蔑視の塊であるフェアボーテネの視点から見れば、「私のようなエリートに身体を貸すことができるという名誉を得られたのだからありがたく思うがいい」ということになる。
フェアボーテネにとっては踏み躙ったものなど些細なものでしかない。
七曜ヱンジュの姿を捉えたのは本当に偶然だった。
元々はクローヌ王国に主導させた勇者召喚――盤上に新たに設置した
その
勇者の監視から
改めてその力を確認したフェアボーテネは、自らの目に狂いがないことを確信した。
彼女は必ず七曜ツバキを救いフェアボーテネを倒すために動く――ならば、こちらは待っていればいい。
フェアボーテネは自らが無敵だと確信していた。
反抗分子となり得る戦女神に仕える家を根絶やしにし、戦女神を全て封印し、それから数年後に突如侵攻してきた異界の天使を斥けた。
最早、この世界に自分に抗い得るものは存在しない――フェアボーテネは、自らの力に慢心し、努力を怠った。
〈
百年前に神に抗い、神の御技に行き着いた者達の置き土産――神代魔法に行き着いた魔人族に対する
その結果、フェアボーテネは魔導文明サドォリュムを瞬殺で滅ぼしたマルドゥーク文明に置き土産相手ではあるものの勝利を収め、神からすら恐れられる特異点――能因草子の存在を認識することができず、最悪のスタートを切ることになる。
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