文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
村人はやはりただの村人じゃなかったようだ。ヒノキの棒もただのヒノキの棒じゃなかったようだ、どころかヒノキの棒ですらなかったようだ。――村人こそが異世界で一番のチートだった!?
村人はやはりただの村人じゃなかったようだ。ヒノキの棒もただのヒノキの棒じゃなかったようだ、どころかヒノキの棒ですらなかったようだ。――村人こそが異世界で一番のチートだった!?
『草子君、そっち行ったよ!』
聖の警告を聞いて振り返ると、そこにはサイクロプスが居た。……あれ、聖の方に居た筈だよね? 【爆縮地】持っていなかった筈だから、もしかして【不意打ち】と【加速】のコンボでここまで来たの?
【加速】には【瞬速】という上位互換スキルが存在するが、サイクロプスの【加速】は今まで体験した【瞬速】以上だったと思う……流石はMAX(限界突破)。
あるいは、MAX(限界突破)とか関係なく、サイクロプスの【加速】が特別製なのだろうか? ……オ●ガの自己修復で付与されるプロ●スみたいな感じ?
サイクロプスは俺に肉薄するとその手に持つ覇神皇の棍棒というチートな棍棒を振りかざす。俺は咄嗟に鍬を盾にしてガード……あれ、前にもこういう構図あったよね。確か――ゴブリンジェネラル戦だ。
はい、立場が逆になっただけで結果は同じ。鍬がポッキリいきました……って、ヤベエよ。武器無くなったよ。悠長に一人称語りしている場合じゃない! 大ピンチだ!!
「〝悪魔の王を封じる極寒の最下層より、摩訶鉢特摩の洗礼を与えよ〟――〝コーキュートス〟」
全力で詠唱し、サイクロプスに向けて〝コーキュートス〟を発動。その一瞬の隙をついて素早く後退する。
「JUDGE MY STATUS!!」
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NAME:能因草子 AGE:16歳
LEVEL:2600
HP:399999/399999
MP:350000/450000
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予想以上にMPの消費が早い。これはかなり早く
次にサイクロプスを【鑑定】。
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NAME:サイクロプス
LEVEL:99999
HP:8999999/9999999
MP:9999999/9999999
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……あんまり減らせていないな。サイクロプスを倒すためには〝コーキュートス〟を後九発――かなりハードだ。
そして、それ以前に物理攻撃用の武器が手元から消え失せた。
錆びたシリーズは効かないだろうし、鋼の武器も有効打にはならないだろう。使えるとすれば、
……仕方ない。一か八か、あの武器に賭けてみるか。
俺は皮の袋からヒノキの棒? を取り出す。“ひのきのぼう”といえば、思いつくのは某有名ロールプレイングゲーム。
まさしく最弱の名に相応しいこの武器をそれこそ
だが、俺はこれを無謀だとは思わない。これがただのヒノキの棒ならば今度もあっけなくサイクロプス達に折られるだろう。
だが、【鑑定】するたびにどんどん分からなくなるヒノキの棒など、最早ヒノキの棒ですらないのだ。
ならば、このよく分からない不確定な要素に賭けてみてもいいのではないか?
……まあ、これがダメだったら
よし、【魔力纏】発動……あれ、ヒノキの棒? が魔力を呑み込んで……脈動……している?
ヒノキの棒? は宛ら生木のように成長し、姿を変えた。
見事な捻れをもつ長い杖へと……あれ、最早ヒノキですらない?
とりあえず、【鑑定】……もしかして、できる? あっ、できた。
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・エルダーワンド
→神の加護が宿ったエルダーツリー(ニワトコ)を用いた杖だよ! 魔力を込めるとどんな武器にでも姿を変えるよ!
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……あれ、おかしいな。物凄い聞き覚えがある名前。確か眼鏡の魔法使いが出てくるファンタジー小説の最強クラスの杖と同じ名前じゃない? こっちの杖の方が長いし、死の秘宝じゃないけど。
やはり、俺の予想通り
果たして、この装備の元々の所有者は何故
もしくは、この杖で混沌を祓った後
一つだけ分かったことがある。このエルダーワンドに【魔力纏】は使えない。貪欲なエルダーワンドは魔力を与えた端から全て喰らい尽くしていく。
だが、それを差し引いてもこの武器は無敵だ。そもそも【魔力纏】で強度を上げる必要が無いほど硬いのだから――。
「伸びろ如意棒……みたいな」
うん、魔力込めたら如意棒みたく伸びた。普通にヨルムンガンドまで届いた。――よし、【赫雷】。
なんとなく使ってみたが、ヨルムンガンドのHPを削ることに成功した。どうやら、スキルは魔法として判定されないようだ。なら、物理攻撃なのだろうか。
いや、そもそもヨルムンガンドにスキルが効くんなら、アレが使えるんじゃない?
俺はエルダーワンド経由で【接触吸魔】と【接触吸勢】を発動し、ヨルムンガンドからHPとMPを吸収する。
最初は吸収速度が遅かったが、時間が経つたびにどんどんゲージが削られていく。ヨルムンガンドは苦痛のあまり顔を歪めて暴れ狂った。
だが、サイクロプスとケルベロスも仲間のヨルムンガンドがただやられていくのを指を咥えて見ていた訳じゃない。
俺に攻撃を仕掛けてきやがった。……ちっ、完全に絞り取れなかった。なら、次はお前だ! ケルベロス!!
エルダーワンドを元の杖の大きさに戻してから再び伸ばす。ケルベロスを拘束するように巻きつけ、再び【接触吸魔】と【接触吸勢】を発動。ああ、癒される。そして、ケルベロスの顔が苦痛に歪む。
スキルは物理にも魔法にも認定されないようだ。即ち、システム的欠陥。【接触吸魔】と【接触吸勢】を効率よく使えばこのチート三体を容易に屠ることができる……【スキル耐性】とか持たせておけよ。こんだけ固めといてそれはねえよ!
対ヨルムンガンドでスキルレベルが上がったのが功を奏し、今回はケルベロスの息の根を完全に止めるに至った。
あっ、聖が絶句している。ジト目をこっちに向けている。いや、戦いってのはなんでもありだから、この狡い戦法も許されるって。だからそんな目で見るなぁ! せめて、搦め手だって言ってくれ!!
ヨルムンガンドの周囲に紫の光が迸る……魔法だ。
思わず目を瞑りたくなるような光の奔流がヨルムンガンドを包み込む。
眩しいけど何なのか気になるから、薄眼を開けて【鑑定】。
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・
→最高ランクの神聖属性の回復魔法だよ! 神聖なる輝きであらゆる傷を瞬間的に修復できるよ!
〝嗚呼、惨き戦場よ! 戦に身を投じ、生命を散らした殉教者達よ! 戦火に焼かれ焦土とかした大地よ! せめて、せめてこの私が祈りましょう! いつまでも、いつまでも、祈り続けましょう〟――〝
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うわぁ、凄くくどい
ヨルムンガンドのHPが急速に回復し、代わりにMPが多少削られた……魔法使い系のMPはパーティ全員のHPと同義だって言ってたけど、いくらなんでも多すぎない? 最上級の回復魔法使っても全然減らないって、絶対におかしい。
だが、ヨルムンガンドのターンはまだ終わらないようだ。……もしかして、「ずっと俺のターン」? いや、反撃できないなら普通に負けるよ。アンタらのステータス、チートだもん。
ヨルムンガンドの周囲に紫の光が迸る。刹那、ヨルムンガンドの影が複数に割かれ、地面を這いながら襲い掛かってきた。
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・
→影属性の拘束魔法の一つだよ! 相手を影で拘束してジワジワダメージを与えるよ!
〝漆黒の影よ、裂き分たれて糸となり、汝を拘束せよ〟――〝
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うわ、影魔法だ。少し違う気がするけど触手プレイだ。……それ、男の俺にすることじゃなくね。一体全体誰得なの!!
「〝光よ、弾けろ〟――〝フラッシュ〟」
適当に詠唱して閃光を放ったら、全ての影が消え去った。……あれ、こんなんでいいの?
「聖さん、影魔法の呪文手に入れたよ!」
『どうやって! ……ああ、【鑑定】したのね。気が進まないけど、その影触手プレイ魔法の呪文、教えて』
聖も触手プレイはお断りのようだ。……てっきり食いついてくると思ったんだけどな。ほら、驚かすのに使えそうだし。
「呪文は〝漆黒の影よ、裂き分たれて糸となり、汝を拘束せよ〟、名は〝
『分かったわ。〝漆黒の影よ、裂き分たれて糸となり、汝を拘束せよ〟――〝
聖の足元から細い影が申し訳程度に飛び出した……ショボ。一本だしショボいし、インビ●ブル・ プロ●ィデンスなの!! ……いや、手じゃないし不可視じゃないから違うか。
『仕方ないでしょ、レベル一なんだから』
そういえば、聖の【影魔法】のレベルは一だった。……まあ、MAX(限界突破)の【全属性魔法】と同じだったら詐欺だよね。比べるのも烏滸がましいよね……すみません。…………ってか、顔に出てた? 心読んだ訳じゃ無いよね?
『それで、どうするの? あの化け物じみた三頭犬は倒したけど、まだ単眼巨人と毒々しい大蛇がいる……どっちから倒すの?』
「とりあえず、ヨルムンガンドをどうにかするよ。聖は一ミリでもいいからサイクロプスのHPを削ってくれ」
『りょーかい♪』
さて、俺も気を引き締め直して……とりあえず、ヨルムンガンドが会話中に発動した魔法に対処しますか。
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・
→氷属性の最強魔法の一つだよ! 絶対零度の極寒を地上に顕現するよ!
〝極寒の世界の冷気よ! 死よりも冷たき愛で凍えさせておくれ! 魂を慄わす愛で包み込んでおくれ〟――〝
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「〝炎よ、炎、地獄の焔よ! 一切合切全てを焼尽してこの世に燎原を現出せよ〟――〝ヘルブレイズ・ゲヘナ〟」
灼熱と極寒がぶつかり、互いに互いを相殺し合う。焦熱地獄と紅蓮地獄を現世に顕現したような、地獄絵図のような惨状。その神話級の衝突を制したのは……とどのつまりは相打ち。両地獄消滅です。
ヨルムンガンド、再び魔法発動の準備を開始。だが、そうはさせんぞ!
エルダーワンドを伸ばしてヨルムンガンドを拘束する。さあ、思う存分吸い尽くすぞ!
物凄いスピードでHPとMPが消えていく……おっ、ゼロになった。ヨルムンガンド撃破。
「残り一体、サイクロプス!」
『最初は絶対に勝てないと思ったけど、全く心配する必要無かったようね。……まだ終わってないけど、もう終わった気分だわ』
おいおい、帰るまでが遠足だぞ……帰る場所この世界に無いけど。
まあ、とにかく最後まで気を抜くなってことだ。……聖はもう
サイクロプスは再び【不意打ち】と【加速】のコンボで接近して、棍棒を振りかざす……が、元々注意を向けていたので不意打ちが不意打ちになっていなかった! 要するにただ物凄い速度で接近しただけ。
「〝極寒の世界の冷気よ! 死よりも冷たき愛で凍えさせておくれ! 魂を慄わす愛で包み込んでおくれ〟――〝
さっきヨルムンガンドから盗み取った魔法をサイクロプスに向けて放つ。サイクロプスは魔法に対する耐性を持っているものの、所詮は【魔法耐性】――耐性を超えた威力の魔法を防ぐ手立てはない。
サイクロプスの身体が徐々に凍っていく。HPもそれなりに減った。……おい、ヨルムンガンド。せめて死ぬ前に回復しといてやれよ。蓄積でかなりヤバい状況じゃねえか。もしかして、仲間は回復しない主義だったのか? ……もしかして、三体の魔獣は連携しているようで連携してなかった? あれ? 烏合の集? 老害は近くに……いない。あれぇ?
ということで、動けなくなったサイクロプスにエルダーワンドを伸ばしてHPとMPを吸い尽くす。
五十層ボス戦勝者。能因草子、高野聖。敵三体の死因、HPとMPを吸い取られて乾涸びた。……ナンダコレ。
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