文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
キングとエンペラーってファンタジーとかロールプレイングではよく出でくるけどどっちも君主だからその間に序列は無い筈。……えっ、エンペラーはキングを任命できるから序列が上なの?
キングとエンペラーってファンタジーとかロールプレイングではよく出でくるけどどっちも君主だからその間に序列は無い筈。……えっ、エンペラーはキングを任命できるから序列が上なの?
ゴブリンキングB、ゴブリンキングC、ゴブリンキングD、ゴブリンキングEvs俺という切り取り方によっては相撲取り並みの体格の四人にリンチされている絵にも見える状況だが、優勢なのは体格が小さい筈の俺だった。
戦闘開始早々襲ってきたゴブリンキングAを鍬を振りかざして一撃でぶっ倒したところから、ゴブリンキング達の動きは確実に鈍っている。
【威圧】を使ったつもりはないが、ゴブリンキング達は恐慌一歩手前という状態に陥ってしまっているようだ。……たくでかい図体してメンタル弱えな、豆腐メンタルかよ。油でサクッと揚げて揚げ出し豆腐メンタルにして美味しく召し上がってやるぞ……えっ?
ゴブリンキング達の動きが鈍っているのを好機と見た俺は、魔力と雷を纏わせた鍬を握り締め【縮地】を発動――ゴブリンキングBと距離を詰めて一振りする。
ゴブリンキングBもゴブリンキングAと同じく無抵抗のまま脳味噌をぶちまけて崩れ落ちた。……もう少し抵抗しろよ。最初に出会ったゴブリンジェネラルは錆びた両手斧で俺の攻撃を防いで見せたんだ。上司なら死んでいった部下にカッコいいとこ見せてやれよ!
「〝渦巻く風よ、刃となりて切り刻め〟――〝ダイバカゼ〟」
素早く適当な呪文を詠唱し、魔法を発動。その瞬間、ゴブリンキングCの立つ地面に小さい旋風が発生し、次第にゴブリンキングCを呑み込むように拡大――ゴブリンキングCの体を切り刻んでいく。
状態としてはラノベで〝ファイアボール〟に並んでよく用いられる〝カマイタチ〟に似ている。
似ているなら、カマイタチって名前にしておけよ。なんだよ、ダイバカゼって?
……えっ、それくらい勉強しているって。
で、提馬風ってのは江戸時代に編まれた浅井了意による仮名草子『伽婢子』などに登場する鎌鼬の親戚みたいな怪異だ。
で、具体的な伝承だけど。
里人が馬に乗り、また馬を引いて道を行くと、旋風が起こって砂を巻き込み、丸くなって馬の前を立ち回る。それは宛ら車輪が転がっているようだ。
旋風は徐々に大きくなっていき、やがて馬の上を回りはじめる。その時馬のたてがみがすくっと立ってそのたてがみの中へ細く赤い光が差し込む。
すると、その馬は急に立ち上がっていななき、倒れて死んでしまう。
風はその時に散り失せ、跡形もなくなる。何者の仕業であるのかは誰も知らない。
旋風が馬の上に来た時に刀で馬の上を薙ぎ払いながら光明真言を唱えると、旋風は消えて馬にも何事もないという。
どちらかというと、この魔法は風の刃っていうより竜巻みたいな魔法だろう? だから〝ダイバカゼ〟って名づけた。
……ちなみに、風の刃を飛ばす〝カマイタチ〟って魔法は別にあるんだけどね。……えっ、先に言えって?
ゴブリンキングCさんは、竜巻に切り刻まれてお亡くなりになりました。ということで、残るはゴブリンキングD、ゴブリンキングEの二体だけ……短時間で結構減ったな。
と、恐慌状態に陥っていたゴブリンキング達が(もう二体しかいないけど)ようやく調子を取り戻したのか、槍を構え直した。
ゴブリンキング名物? 下卑た笑みは引っ込み、表情は真剣そのもの。「やっといい顔つきになってきたじゃねえか」ってどこかの騎士団長とか教官殿とかが言いそうな表情をしている。
ゴブリンキングDは【刺突】と【縮地】を発動して距離を詰めながら突き刺し攻撃を放ってきた。
おお、流石は【刺突】レベル40と【縮地】レベル28。【縮地】の速度自体はゴブリンジェネラルとほとんど変わらないが、【刺突】の動きは洗練されている。
……だけど、残念。強者よろしくのスローモーションじゃないけど、くっきりと動きが見えているんだよね。
ゴブリンキングDよりも先に鍬を振りかざす。素人でも後の先を簡単に取れるのだから、やっぱりステータスというのは理不尽だ。
しかし、なんでレベルはそこまで大差ないのにステータスにこんなに差ができたんだろう? ……理由になりそうなものが一つくらいしか思い当たらないけどアレについてはよく分かっていないしな。
残ったゴブリンキングEもゴブリンキングDと同じ末路を辿った。……そりゃあ、ゴブリンキングの最大値攻撃は見た限り【刺突】と【縮地】のコンビネーションだからね。それが封じられたら勝ち目は無くなるよ。
ゴブリンキング達の死体を布の袋に突っ込み、俺は拠点に戻った。
◆
ゴブリンキング達との戦闘から一時間後、俺は不気味で纏わりついてくるような紫の輝きが包み込んでいる大部屋に辿り着いた。
心なしか空気もピリピリしている気がする……これ、明らかにボスの間だよね。もしかして、コイツ倒せばクソ忌々しい飯マズ迷宮生活ともおさらばできるの?
目の前に立つのはゴブリンキングよりも更に大きな体躯を持つ見るからに偉そうなゴブリン。
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NAME:ゴブリンエンペラー
LEVEL:85
HP:800/800
MP:100/100
STR:450
DEX:11
INT:110
CON:180
APP:-500
POW:180
LUCK:3
SKILL
【片手剣】LEVEL:50
→片手剣を上手く使えるよ!
【唐竹】LEVEL:50
→唐竹が上手くなるよ! 上から下に斬るよ!
【袈裟斬り】LEVEL:50
→袈裟斬りが上手くなるよ! 相手の左肩から右脇腹を斬るよ!
【逆袈裟斬り】LEVEL:50
→逆袈裟斬りが上手くなるよ! 相手の右肩から左脇腹を斬るよ!
【左斬り上げ】LEVEL:50
→左斬り上げが上手くなるよ! 袈裟斬りの逆に斬り上げるよ!
【右斬り上げ】LEVEL:50
→右斬り上げが上手くなるよ! 逆袈裟斬りの逆に斬り上げるよ!
【居合い】LEVEL:30
→居合が上手くなるよ!
【兜割り】LEVEL:50
→兜割りが上手くなるよ!
【刺突】LEVEL:50
→刺突が上手くなるよ!
【薙ぎ払い】LEVEL:50
→薙ぎ払いが上手くなるよ!
【武器破壊】LEVEL:50
→武器破壊が上手くなるよ!
【不意打ち】LEVEL:65
→不意打ちが上手くなるよ!
【体当たり】LEVEL:10
→体当たりが上手くなるよ!
【怪力】LEVEL:50
→怪力を得るよ!
【硬化】LEVEL:60
→体を硬化させるよ!
【加速】LEVEL:20
→速度を上げるよ!
【火魔法】LEVEL:30
→火属性の魔法を使えるようになるよ!
【水魔法】LEVEL:30
→水属性の魔法を使えるようになるよ!
【氷魔法】LEVEL:30
→氷属性の魔法を使えるようになるよ!
【風魔法】LEVEL:30
→風属性の魔法を使えるようになるよ!
【土魔法】LEVEL:30
→土属性の魔法を使えるようになるよ!
【木魔法】LEVEL:30
→木属性の魔法を使えるようになるよ!
【火耐性】LEVEL:30
→火に対する耐性を得るよ!
【水耐性】LEVEL:30
→水に対する耐性を得るよ!
【氷耐性】LEVEL:30
→氷に対する耐性を得るよ!
【風耐性】LEVEL:30
→風に対する耐性を得るよ!
【土耐性】LEVEL:30
→土に対する耐性を得るよ!
【木耐性】LEVEL:30
→木に対する耐性を得るよ!
【威圧】LEVEL:60
→威圧感で相手を怯ませるよ!
【縮地】LEVEL:40
→物凄い速度で相手と距離を詰めるよ!
【性豪】LEVEL:160
→性欲を上昇させるよ!
【性技】LEVEL:160
→性技が上手くなるよ!
【強姦】LEVEL:160
→強姦が上手くなるよ!
ITEM
・錆びた大剣
→鉄製の大剣が錆びたものだよ! 鋭利さは低いけど傷口から錆びが入って感染症になる可能性があるよ!
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……うん、ファンタジー作品とかゲームによく出てくるゴブリンエンペラーだ。
しっかし前々から疑問だったけど、キングとエンペラーってファンタジーとかロールプレイングではよく出てくるけどどっちも君主を表す言葉だからその間に序列は無い筈だよね? なんでどの作品でもキングよりエンペラーの方が上ってなっているんだろう?
……えっ、エンペラーはキングを任命できるから序列が上なの? それは勉強不足でした。はい、すみません。……いや、
しっかし、毎度エロ方面に振り切れているな。……本当にすみませんね、相手が男の俺で。
そういえば、ゴブ網ゴブ目ゴブ科ゴブ族の魔獣って、どうやって数を増やしているんだろう?
少なくともこの迷宮にはメスのゴブリンっていないみたいからな。少し踏み込んだ異世界ものだと、ドワーフの女子は美少女ロリだったとかゴブリンのメスは超がつくほど可愛いっていうのがあるんだけど……。
ということは、別種族のメスを孕ませて子を増やすのか……でも、こんな迷宮に入ってくる女子なんてどんな種族でも珍しいだろう。
なら、外に出てきていないだけでメスゴブリンズがどこかにいるのだろうか? ゴブリンエンペラーやゴブリンキングがゴブリン版大奥みたいな後宮を作ってメスを囲って居るのだろうか? ……女子向け異世界ものの定番、後宮ものキターって言いたいけどその前に「ゴブリンの」ってつくんだよな。『異世界ゴブリン後宮物語』って誰得だよ!
それとも、プラナリアみたいに斬ると二体に分裂するのだろうか? ……いや、普通に殺せたからそういうことは無いだろう。
となると、体細胞分裂みたいに時間経過とともに増えるのか、あるいは混沌核がなんちゃらとか魔力溜まりがなんちゃらとかで異世界的な何かで増えるのだろうか?
……とりあえず、メカニズムを考えたところで何かになる訳でもない。倒しても倒してもGさんのようにどこからともなく湧いてくる魔獣を一掃する方法があるなら確かに知りたいが、頭だけで考えても机上の空論で終わってしまうだろう。
そういえば、ゴブさんもある意味ではGさんだったな。「ゴブさんを一体見つけたら近くに三十匹は居ると思え」って感じなのだろうか? ……まあ、ゴブさんもGさんに負けず劣らずいっぱいいるし、どこからともかく現れるけどな。
もしかして、テラフォーミングのために火星に送ったゴブリンが人型に進化して人間と激戦を繰り広げるって展開があるかもしれない。……えっ、ゴブリンは元々人型だって?
『ゴギ、ゴギャギギャゴ、ゴギャギ、ゴギャギャギ、ギャギャゴ、ゴブゴギャギ、ゴギャブゴギ、ゴギャギャブブギャギャァ!』
ゴブリンエンペラーは怪しげな呪文を唱えた。……俺にはゴブゴブとかゴギャゴギャ言っているようにしか思えないが、きっとゴブリン語で魔法を詠唱したのだろう……言語が分からなくても何やっているのかって意外と分かるものだよね。言葉を知らなくても、ボディーランゲージと雰囲気で大体通じるっていうのは迷信だと思っていたけど、強ち間違っていないのかもしれない。
ゴブリンエンペラーの手に灼熱の火球が生み出された……あれ、〝ファイアボール〟だったのか。滅茶苦茶長く詠唱していたから、大魔法撃ってくるのかと思って気を張っちまったじゃねえか。
「〝母なる水よ、呑み込む蛇となれ〟――〝サーペント・アクア〟」
俺は掌を猛スピードで接近する火球に向け、執念深く絡みつく蛇のような水の奔流を解き放つ。
大きく口を開けた水蛇は火球を呑み込むと同時に大量の水蒸気を吐き出して消滅した。
「ゴブリンエンペラーは耐性スキルを持っているらしいが、どれくらい効くか試してみるか。〝渦巻く風よ、刃となりて切り刻め〟――〝ダイバカゼ〟、〝溢れる水よ〟――〝クリエイトウォーター〟」
スキルには存在しない、二つの魔法の同時発動。しかし、試してみると案外簡単にできてしまった。
二つの魔法を融合するイメージ……あれ、こっちも意外と簡単にできた。
「〝複合魔法〟――〝アクア・トルナーデ〟……的な」
さっきから古代ラテン語やらイタリア語やらを別言語と混ぜて魔法名にしているが、全く違和感がない。
……まあ、普通のファンタジーで〝ファイアボール〟とか〝クリエイトウォーター〟とか英語名の魔法の中に普通に〝カマイタチ〟とか混ざっているしな。まあ、大体ヨーロッパ圏だし特に問題も無いだろう。
『ゴギャ、ゴブゴブ……ゴギャ? ぷっ、ゴギャゴギャギ(笑)』
「やばい、溺れるぅ……あれ? ぷっ、全然効かねえじゃん(笑)」って的な感じだろうか? 正直腹立つな。
とりあえず、耐性スキルは厄介だな。俺の持っている魔法ではさっきの二の舞になると考えればいいだろう。
となれば、いつも通り「撲殺☆」するしかないか……いや、ぶっちゃけこっちの方が簡単なんだけど。
いつも通り“魔力纏雷コンボ”からの【縮地】。そのまま鍬を振りかざして「チェックメイト」ってのがいつものパターンだが、コイツはそう簡単に死んではくれなかった。
ゴブリンエンペラーが火の構え――刀を頭上に振り上げる構えをしたのだ。
剣術において、この構えは非常に攻撃的な構えだとどっかの本で読んだ気がする。
この構えから対戦相手を斬る為に必要な動作は極論を言えばその体勢から剣を振り下ろすことだけで、斬り下ろす攻撃に限れば凡そ全ての構えの中で最速の行動が可能だ。
身の危険を感じた俺は意識的に【回避】を発動――間一髪のところでゴブリンエンペラーの唐竹を回避する。
だが、ゴブリンエンペラーの攻撃は終わらない。今度は水の構えを取り、そこから袈裟斬りを仕掛けてくる。
……本当に剣術知っているって攻撃を仕掛けてくるな。ゴブリンのエンペラーの前世は侍だったのだろうか?
いやぁ、しかし強い強い。ここまでの激戦は久しぶりだな。
命の危険を感じたのは迷宮に来て初めてのゴブリン戦以来だ。
俺の得意とする攻撃は“魔力纏雷コンボ”で威力を高め、【縮地】で一気に近づいて攻撃する不意打ち的な要素が強い。
逆にこと体術に関しては、今の俺にはそれしかないと言っても過言ではないだろう。……自分で言ってて物凄い悲しくなってくる。
一応レベル19の【鍬術】があるが、相手の【片手剣】のレベルは50。ステータスはこちらが勝っているものの、技倆の面では明らかにこちらが劣っている。
技を知っている者にとって、ただ腕っ節が強いだけの相手を組み伏せることは造作もない。小柄な警察官でも逮捕術によって大柄な被疑者を取り押さえられるのと同じである。
俺がここまでほぼ無傷で勝利できていたのは、騙し討ちに特化した戦法があったからに他ならない。
相手の油断を突き、一撃で仕留める故の強さ。だが、この強さというのは紙一重で成功しているのであって、一つでも歯車が狂えば簡単に崩されてしまう。
一度反応されてしまった以上、ゴブリンエンペラー相手に最速攻撃は通用しないだろう。
直接打ち合ったとしても勝算はほぼ無い。
ゴブリンエンペラーと対峙したまま時間ばかりが過ぎる。
ゴブリンエンペラーは木の構え――刀を立てて右手側に寄せ、左足を前に出す構えのまま微動だにしない。恐らくこちらから仕掛けるのではなく、後の先を取るためにこちらの一挙手一投足に気を配っているのだろう。
そうして、互いに動かないまま静かな時間が数分ほど続いた。
――と、突然俺の脳裏を一つのアイディアが過った。
打開策とは予想しなかったところで突然降ってくるものなのかもしれない。
俺は都合よく降ってきた妙案を反芻し、ニヤリと仄暗い笑みを浮かべる。
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