ランタンの火が消えるまで
@Takonogeso
ランタンの火が消えるまで
ふと、気がつくと僕は、涙を流しながらうす暗い通路に倒れていました。なぜこんなところにいるのだろうと疑問に思いました。ここはどこだろうか、自分は誰なんだろうか、僕には何も分かりませんでした。僕は、何か手がかりはないかと自分の周りを確認してみることしました。すると近くに火のついたランタンが置かれていました。拾い上げるとランタンは周りを照らしました。自分は黒いシャツと黒いズボンを着ていて、ポケットの中を確認しても何も入っていませんでした。僕は何となく暗い通路を歩き始めました。
しばらくすると正面に微かな光が見えました。それは僕の背丈を超えるほどに高く、きらめく美しい光の壁でした。壁に近づくと、壁の向こう側から「誰ですか?」と、声がしたので、「すみません、ここはどこなのでしょうか?このとても美しい壁はあなたが作ったのですか?」と、僕は返事をしました
すると、光る壁は動き始め、壁は糸で出来ていたことが分かりました。奥から声の主が現れました。それを見たとき、それが蜘蛛と呼ばれるものだと分かりました。しかし、蜘蛛というものは女性の上半身が生えているものだっただろうか?と、考えながら、「この壁はあなたの糸で作ってあったのですね」と言うと、壁と同じ輝きを放つ服を着た、人の部分から壁の向こうから聞こえてきたものと同じ声で、「はい...気持ち悪いですよね...」と言うので、「いえ、とても美しく素晴らしいと思いました。私にも作れるでしょうか」と言うと彼女は少し驚きながら「いえ、あなたは蜘蛛ではないので作れないと思います。」と答えました。僕はとても残念に思いつつも「そうですか...この糸で作った服はとても綺麗だろうと思ったのですが」と零すと、彼女は「では、私が作ってあげますよ」と言って、10本の腕を操り目にも留まらぬ速さで、服を編み始めました。
彼女は、白いシャツと白いズボンを編んでくれました。その服は思っていた何倍も素晴らしいもので、彼女に断りを入れ、すぐに着替えると、僕は嬉しくなり、「ありがとうございます。想像していたよりもずっと良い服です。あなたの糸は本当に素晴らしいと思います。」と言うと、彼女は嬉しそうに微笑み「いえ、こちらこそありがとうございます。私はこの姿を気持ち悪いだけのものと思っていましたが、あなたのおかげで自分のこの体が気持ちの悪いだけのものではない思えました。まずはこの体が作る服から自分を受け入れられるようになっていきたいと思います。」そう言うと、彼女は光に包まれ消えていきました。
僕は消えていく彼女を見ながら、全てを思い出しました。”僕”は、生まれ変わる魂が自分を否定する時、道案内をするために存在するということを、役目が終わった自分はまた記憶をなくし、次の彷徨う魂を道案内しなければならないということを。僕は涙を流し、(あぁ、彼女の今世に幸せがありますように。僕もいつか彼女のように、夢を持って生きてみたいなぁ)と思いながら、ランタンの火を消しました。
.................................................................
ふと、気がつくと僕は、涙を流しながらうす暗い通路に倒れていました。なぜこんなところにいるのだろうと疑問に思いました。ここはどこだろうか、自分は誰なんだろうか、僕には何も分かりませんでした。置かれているランタンを拾って自分の服装を確認すると、とても美しく輝く白いシャツと白いズボンを着ていることに気づきました。なぜか、僕はとても嬉しくなって、何となく暗い通路を歩き始めました。
ランタンの火が消えるまで @Takonogeso
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ランタンの火が消えるまでの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます