第58話 無理に歩くな!

 右手の指を全部広げるようにして


「ここまで、いろいろ話してきましたが、注意点があります」

「注意点ですか」

「はい、非常に疲れていたりした場合は、歩かないこと。歩くことで逆効果、すなわち疲労度がさらに高くなってしまうことになります。また、不眠症などの病気を持っている場合は、夜間歩くことはおすすめできません」

「…眠れなくなるですか?」

「そうです。夜間、すなわち眠らなくてはいけないのに、運動をすることで身体が活性化してしまい、眠る障害になってしまいます」

「なるほど~」

「私からのお話…歩くことでのリフレッシュというより、歩くのはこうやるといいですよ~というものはこんな感じですが」

「それで、その時間はどれくらいすればいいのでしょうか」

「あ~肝心なことを忘れていました。1回30分ほどで、1週間に3~5回程度でいいのですが、最初からこんなに長時間ではなくてもよく、10分から始まって少しずつ伸ばしていく方が負担も少なくてよいと思いますよ」

「ありがとうございました」

「うーん…」

「どうしました?」

「ここの外を歩いてみたいですね。建物の中にも興味はありますが、外からの眺めもよさそうだ」

「これから、歩いてみますか」

「できれば、ぜひ」

「では、こちらからどうぞ」


 結局、送還前に城内外の案内をした上に、この世界に頻繁にウォーキングに来るという異例な召喚先生になってしまった。

 なんでも、魔法師団長が唯一、仕事を離れて話せる親友のような立場に収まってしまったからだった。


 そのためか、最近の魔法師団長はとても元気である。

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