第38話 *お姉ちゃん先生がやって来た!~その3

「なにかしら。意見があるなら、はっきり言いなさい。でも、私の気分を害したら、いつものあれをしてあげる」

「な、何も言いません。思いません。子ども達の前では、お願いですからあれをしないでください」

「そうそう、それでいいわ。ここは、どういう場所か、覚えている?」

「神界という場所の監視領域ですか?」

「正解。もっと言えば、私の管理している場所ね。あなたたちの事も、ずっと見ていたわよ。子ども達の生い立ちも、全部…ね」


 王妃さまが、慌てて


「コアお姉様、その辺で、それ以上に詳しい話は子ども達にはまだ早すぎます」

「あら、早めに教えておいた方がいいじゃない?性教育は、第2次性徴前に行わないと大変よ」

「もう少しで教えるつもりでした。長兄王子も、そろそろ良いかと」

「…18歳で、第2次性徴前とは言わせないわよ。でも、もう何のことか知っているけれど。侍女に口止めしてるし」


 その言葉に、長兄王子は、固まってしまった。それまで、王さまとお姉ちゃん先生のやり取りを面白そうに見ていたのにだ。


「何を口止めしているの?」

「え、あうあう」


 王妃さまの言葉に、まともに応えられない長兄王子。

 そんな姿を見たことがない子どもたちが、驚いた顔をしている。


「大丈夫よ、ちゃんと相思相愛だから。ただねぇ~、3人は多いと思うのよ。3人で取り合いするのではなくて、きちんと役割分担しているあたりが、あなたたちと似ているわね」

「…」


 王妃さまも何かを感じたのか、黙ってしまっていた。


「さぁ、雑談はここまでにして、本題の魔法について話しましょうか。あなたたちは、復習になるわね。あとで、テストするわよ」


 王子さまだけは、分かっていないような雰囲気だった。


「面倒だから、帰りたい」


 その言葉に、王さま以下大人たちは戦慄した。

 何が起こるか、分かっているから。


「そう。私の講義を聞きたくないのね。仕方がないわね。まず、これをっと」


 その言葉と共に、王子さまの前に現れたのは、手鏡。

 それを持って、顔を見たら…


「は、鼻が赤くなってる!」


 鼻の上に赤い球体が乗っているばかりか、鼻自体も真っ赤に塗られていた。

拭いて取ろうとしたが、全く取れない。


「なんだよう。これ…取れない」

「私の講義が終わって、私の気が晴れたら、自動的にきえま~す。でも、また気に障ったら、増えていきます。よろしい?」

「…」

「返事」

「はい」

「遅い。追加」


 その言葉と共に、右目周囲を青く塗られてしまった。

 よく見ると塗られているのが分かるが、一見すると青あざに見える。


「これだ。昔と同じだ」


 呟くような声が王さまから出て、他の者は逆らわないようにしようと思いを強くした。


「では、始めましょう。魔法のお話です」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る