第36話 *お姉ちゃん先生がやって来た!~その1

 前回、王女さまへの魔法教育の担当は、魔法師団長だったが、王さまに召喚なしで先生を務めるのは、なるべく避けるように言われてしまっていた。

 理由は、この世界にはない広い知識を習得してもらいたいとのこと。

 召喚は毎回行い、その時に召喚された者が出てこない場合に限って城内で詳しい者に、先生として講義してもらうという妥協案(?)で、魔法師団長も納得した。


 召喚の間では、前回と同じように準備をしていたが、多分召喚されて来る者はいないと思いながらも、王さまの指示通り召喚の手順を確認していた。

 しかし、召喚呪文を唱えようとしたら、その瞬間に召喚された者?が現れてしまった。


「え?まだ、召喚していないはず」

「いやねぇ~、待ち構えていたのに、じれったくなっちゃって悪いとは思ったけれども、早めに来ちゃった」

「いや、あの、どうやって?」

「面白そうだから、ずっとみていたのよ。私の登場は、いつぐらいがいいかなとか、あれは他の人に任せようとかね」


 信じられない話だが、これまでの召喚について見ていたようなことを言う女性。

そう、女性に見えるのだが、本当に女性か?という姿格好で、服装もゆったりしているので、身体的特徴が分からないのも困惑のひとつだった。


「今回の召喚目的は、魔法に関することだったのですが、失礼ですが魔法について詳しいのですか」

「もちろん。前回は、別件の用事があって来られなかったのよ。ごめんなさいね」


 しかも、前回の召喚の話まで出てきたが、基本的に召喚で呼び出されるのはランダム。もちろん詳しい人を選ぶつもりなのだが、他の人が出てこないのはなぜだろうか。


「決まっているじゃない。私が召喚先をロックしたからよ」

「え?今、声に出していないのに」

「私くらいになると、他人の考えていることは、分かってしまうのよ。隠し事ができないということね。それよりも、早く王女さまのところへ行きましょう」


そういうと、召喚の間から王女さまの部屋の前まで、いきなり転移した。

呪文も魔方陣もなしで。


「これくらいは簡単よ。無詠唱ということでもないわよ。思えば、実現する能力みたいなことね。深く考えない方がいいわ」


そう言うと、王女さまのいる部屋へ、師団長を前に押し入っていった。

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