第32話 *少ない魔力で、精密細工(適材適所)

「魔力は、多ければ多いほど良いのですが、多すぎると効果も高くなります。もちろん、効果を小さくすればいいのですが、大抵の場合、魔力が多いとそれを精密に調整することが難しくなります。これには、修練が必要ですが、ほとんどの魔法を扱う者は苦手な分野となっています。100の魔力を持つ者が、0.0001の魔力を使って精密細工をするのは、苦手ということです」

「少ない魔力で、精密細工をする人が細工師で多いのは、このためですか?」

「よく知っていますね。その通りです。少ない魔力で仕事ができるものの代表格となります。他にも、魔力結晶の設計や種火の魔法なども、それに該当します」

「魔力結晶の設計?種火?」

「魔力結晶の設計とは、設計した後に設計図の通りに図面を描きます。ただし、これは小さな点を線に見えるレベルで構築することで、その1点1点に極小の魔法付加を行います。設計者しか構築出来ないので、図面を別の者が複写しても、同様の効果は期待できません」

「設計者さんは、複写が可能なのですか」

「設計した者が、魔力結晶の構築が終われば、その後はいくつでも複写は可能です」

「はぁ~。難しいですね。では、種火はどういうことでしょうか」

「種火とは、火を点ける際などに使うものです。生活魔法が使えない家庭では、この種火を使って、明かりや食事の際にかまどの点火に使います。」

「だから、少ない魔力を持っている方々も色々なお仕事をしている訳でしたか」

「そうです。今日は、ここまでにしましょう。少ない魔力での仕事は、他にどのようなものがあるのか、それを次までの課題にしておきましょう」

「先生。ありがとうございました」


そう、王女さまは言って、宮廷魔法師団長による第1回目の講義は終了した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る