第11話 ぷりしら日記

 このお話は、まだコーイチとプリシラが出会って間もない頃。お絵描きとかで自由に使いなさいと買い与えられたジャポニカ学習帳と12色のサクラクーピー。

 そこへ描かれたプリシラの日記をこっそりお送りしよう。表紙にはエルフ語で『みちゃだめ!』と書いてあるが……。

 ちなみにエルフ語からの翻訳のため、齟齬がある点はご容赦願いたい。


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『ひとぞくき 7月 8日』


 おてんき、はれ。

 ごしゅじんさまに、まっしろなほん、もらった。あと、いっぱいのペン。

 おえかきして、あそんでっていってた。


 ごしゅじんさま、とってもやさしいひと。

 ごはん、おいしい。

 ふくも、もらった。

 どれいなのに、どうして?

 ふしぎ。


『ひとぞくき 7月 10日』


 きょうは、きゃんぴんぐかーで、いろんなところにいった。

 きらきらのみず、きれい。いっぱいあそんだ。

 でも、こわれたまち、こわかった。

 ごしゅじんさま、あたま、なでてくれた。

 あったかい。


『ひとぞくき 7月 11日』


 りゅうのすみか、りゅう、いた。

 りゅう、ごしゅじんさま、きにいったみたい。

 ごしゅじんさま、つくった、ちゃーはん、おいしい。

 いっしょに、ごはん。いっしょに、ねる。


『ひとぞくき 7月 15日』


 えしぇっと、さん、わたしの、ぷりん、たべた。

 かなしかった。もう、【エルフ語で罵詈雑言につきピー音規制】しようとおもった。

 でもごしゅじんさま、もっとすごいぷりん、くれた。

 うれしい。

 ごしゅじんさま、【エルフ語でフヮーオにつきフヮーオ音規制】。


『ひとぞくき 7月 25日』


 ごしゅじんさま、ゆうしゃたち、たすけた。

 さみゅえる、へんなひと。たばさ、いいひと。ヴぇてる、おもしろいひと。

 みんな、ごしゅじんさま、ほめる。

 むね、ぽかぽか。


『ひとぞくき 7月 27日』


 ごしゅじんさまと、りょうり、たのしい。

 でも、わたし、さいきん、へん。

 いっぱい、えがおで、かお、へん。

 ごしゅじんさまと、ほかのひと、しゃべる。

 むね、ちくちく。

 どうして?


『ひとぞくき 8月 2日』


 どれいのみせ、きた。

 ごしゅじんさま、いっぱいおこってた。

 わたしのために。

 どれい、ちがくなったら、どうやっておんがえし?

 わたし、なにも、ない。


『ひとぞくき 8月 3日』


 ごしゅじんさま、こーいちさんになった。

 はじめては、きんちょう。ぽかぽか、どきどき。

 こーいちさん、呼ぶと、うれしそうな顔。

 ぽかぽか、ふえる。

 べんきょうガンバルと、頭なでなで。

 どきどき、ふえる。


『ひとぞくき 8月 7日』


 ペットのマウと、おさんぽ行く。

 わたし、と、こーいちさん、手をつなぐ。

 マウ、いっぱい、いっぱい甘えてた。

 わたし、が、したら、だめかな?


『ひとぞくき 9月 15日』


 こーいちさん、まほう学校の話、した。

 こーいちさん、家族になってくれた。

 お兄ちゃんでもお父さんでもないけど、家族だって。

 いっぱい嬉しい。

【エルフ語でフヮーオにつきフヮーオ音規制】でも、いいよね?

 わたしのもくひょう、決まった。

 せかいいちの、【フヮーオ】に、なる!


『ひとぞくき 10月……


「なに、見てる?」


 すみません皆さま、どうやら見つかってしまったようです。振り向くとそこには、ぷくっと膨れたプリシラちゃんが居ました。

 その手には精霊魔法で錬成した風の刃。

 あの、私、こういう者でして……


「見ちゃダメ、書いてある!」


 名刺をスッパリ一刀両断。

 え? いや、ちょっと待って? だから私は……


「……ぜったい、【エルフ語で罵詈雑言につきピー音規制】!! 【エルフ語で罵詈雑言につきピー音規制】!!」


 これにて退散!

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