鬼がきた
アライ
第1話
「ああ、まだ仕事が終わらない」
ちらりと時計を見てみると、今の時刻は19時26分。
残業を始めてすでに2時間以上経ったけれど、まだまだ仕事は終わらない。
「山田!
まだ終わらないのか」
「もう少しで終わります!」
部長の怒鳴り散らす声から反射的に言葉が出ていた。
またやってしまった…。
部長怖いから関わりたくないんだよな…。
「そうか。
これ以上待たせんなよ」
返事に満足したのか自分のパソコンとにらめっこしだした。
なんとか乗りきれた。
絶対に今日中に終わらないから一区切りするまでやるか。
「疲れたー」
ガラガラの電車に乗ったのは20時15分を過ぎていた。
なんとか20時までに仕事をほとんど終わらせたけど、残り1割終わらなかった。
部長に終わったって嘘ついたから明日の朝に一時間で終わらせておこう。
飲みに行く気にもならないからコンビニで弁当買って帰るか。
電車の窓から見える景色は真っ暗で気分が滅入る。
早く家に帰りつきたい。
駅から家までの途中にあるコンビニ。
仕事し始める前は自炊して健康な生活を送るって考えていたけれど、社会人になってコンビニでご飯を買う生活になっていた。
まじめに自炊してる人ってすごいし、実家のご飯がどれだけ偉大だったかこの年になってようやくわかった気がする。
「2点で759円です。
おはしつけますか?」
「お願いします」
最近は箸を洗うのも億劫に感じる。
しかし、ごみを捨てるのも面倒だ。
疲れているときほどどうでもいいことが頭に浮かぶ。
「ありがとうございました」
最近は財布を出さなくても買い物できるところが増えたから楽だ。
レシートも電子化してくれないだろうか。
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