幸運者転移 ~クラスメートとともに異世界に召喚されたので取りあえず自由に生きよう~

ゼロから十

第1話 プロローグ

 〝自由〟それは、何物にも縛られず、自分自身の意思で行動し、自分の行動に責任を持つ、という意味の言葉。

 それは、何という素晴らしい言葉。

 だからこそ、ほぼ全ての人間は自由を求めている………と、思う。


 俺───柊幸助ひいらぎ こうすけは誰しも自由を求めていると考えている。

 実際、俺もその一人の人間だから。

 だから、友達が無い俺が、別に他人とコミュニケーションが苦手とかじゃなくて、ただ単純に友達と一緒にいると、何かに縛られた気分になっている。

 つまり、何が言いたいのかというと。

 俺、別に寂しいわけじゃないし、別にボッチとかじゃないだから。


「はー、誰に言い訳するのやら、俺」


 現在、授業中にも関わらず、小さいため息を吐きながら小さくつぶやけるには、ただ単純に教師から見え辛い位置にいただけだ。

 そして、何故、授業中にそんなくだらない事を考えた理由は…………


「暇だ、休み時間、カムプリーズ」


───キーン、コーン、カーン、コーン


「えー、授業はここまで、ちゃんと家で復習するように、では」


「よっしゃ、食堂に行こうぜ」

「一緒に弁当食べましょ」

「ねえ、さっきのこれ、教えてくれる?」


 クラスメートは各々自然に自分のグループに集まる。

 かたや、弁当を食べながら会話し、かたやさっきの授業の復習しながら昼食を食べている等々。

 俺はというと、自分の弁当を即座に完食し、鞄から朝に読んでいたラノベを続けている。


 何故俺が他のクラスメートと一緒にだべってないかという理由は心当たりは、ありまくる。

 中学の時、少しトラブルがあったからだ。

 そのトラブルは…………追々に話すとしよう。


 今はラノベに集中しよう。

 今、俺が読んでいたラノベは、最近、ヒットジャンルの異世界転移系のラノベだ、いわゆるファンタジーというやつだ。

 まあ、王道のストーリーのやつだけど。

 クラス全員が異世界に召喚されて、主人公がチートを使って敵をばったばった、的な話だ。


「異世界、ねえ」


 もし、異世界召喚というのが本当にあったら、このクラス、真っ先に召喚されるんじゃね?

 このクラスのほぼ八割がスクールカーストの頂点が集まっていたクラスだからな。

 あ、俺は違うからな、俺はどちらかというと普通の一般生徒だからな。


「まあ、召喚されても、このクラスは恐らく順調に帰る方法を探せるかもな」


 2年A組───このクラスには〝美形揃いのクラス〟〝完璧クラス〟〝超人の集まり〟etc.、というあだ名がついているほどの集まりだから。

 まあ、そういうあだ名が着けられても文句が言えないほどの集まりだからな。


 たとえば、委員長の佐々木麻耶ささき まや、きりっとした美少女で、成績もよい、委員長でありながら生徒会の秘書の役割も賜っている、スポーツもそこそこにできる、スタイルもグッド、出るところは出てるし引っ込んでるところも引っ込んでる。


 次は、一之宮霧乃いちのみや きりの、こっちはお姉様系の美少女、剣道部女子のエース、鷹のように鋭い目、原動や行動が男前、男女問わず、告白の頻度が高い(主に女子から)、こちらも成績も優秀、スポーツも言わずもがな、スタイルも佐々木とさほど違いは無い。


 次には、月宮桜つきみや さくら、癒し系の美少女、部活は、入ってないと思う、一之宮の幼馴染、らしい、成績は上の上、つまり頭はよい、が、結構天然という噂がある、スポーツは中の上、本人曰く、あまり得意でわない、らしい。


 こいつら三人は、三女神、という称号を持つ三人の美少女だ。

 まあ、他の女子は、こいつらには劣るが、俺から見れば全員が可愛いけどな。

 え、男子はどうしたって?

 知らん、俺の耳に入った噂はこいつらだけだ。

 つーか、野郎の噂なんぞ聞きたくも無いわ。


 そんな馬鹿な事を考えると、突如、クラスの真ん中から強い光が現れた。

 始めは一本の棒のように光が現れたが、驚く暇もなくいきなりその光はクラス全員に広がっていた。

 よく見ると床には幾何学模様の様なものが書かれている。


 これって?魔法陣?

 嘘でしょ!さっきはフラグ!?

 取りあえず、ここから出よう。


 そう思ったが。

 足が動けねえ!

 ドアは開いたけど足が動けねえんじゃあどうしようもないだろ、こりゃ。


 そこに佐々木の声が木霊した。


「みんな、教室から今すぐ出ていてください!」


 が、その声も空しく、2年A組の18人の生徒がこの日、行方不明になっていた。

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