ツインカム(DOHC)について。

 高性能エンジンと言えばカムシャフト二本でバルブを動かす『ツインカム』がイメージされるのではないでしょうか。まぁ日本にはシングルカムターンフローで高性能な日産L型シリーズとか、同じくOHVの日産A型シリーズなんてのも有りますが、何でツインカム(DOHC)エンジンが高性能なのかを考えてみたいと思います。


 そもそも大昔のハコスカGTRやトヨタ二〇〇〇GTの時代は四気筒のOHVターンフローなんてエンジンがゴロゴロしてました。ターンフローエンジンってのはキャブレターとエキマニが同じ側についてる奴ね。例えばエンジンの右側から吸い込まれた混合気が燃えて、Uターンして右側に在る排気管から出てくる。ターンしてから出て来るからターンフロー。聞いただけで流れが悪そうでしょ?


 何でそんな事をするかと言われても正確な事は解らない……もしかしたら学校で習ったかもしれないけれど、忘れちゃった。恐らくOHVエンジンのロッカーアームを動かす為のプッシュロッドやカムが在ったからじゃないかと思います。


 このターンフローは昔のクルマに多かったのかな? キャブレターが排気管の上に在る事もあって排気ガスの熱でガソリンが煮えるパーコレーションが起こったりして渋滞の道路でもよろしくなかったりします。まぁターンフローだからって全部が全部悪い訳じゃなくて、日産のL型みたいなチューニング次第で化け物になるエンジンが有るから一概にダメとは言えないけどね。ただ、ターボを付けるとエンジンの片側ばかり重くなるんじゃないかって気がするけど。


 L28改ツインターボ……キャブが煮えそうだな。


 で、メーカーも「これって右から左にうけ流せばキレイに流れるんじゃないの?」って思ったんだろうね。日産のL型エンジンではレース用のスペシャルヘッド(と言ってもヘッド以外にも交換する部品が一杯)を装着したクロスフローのLYエンジンなんて物も有ります。トヨタなんかT型だったかな? OHVのままでクロスフローにしたエンジンを出してた気がする。通路がスムーズだから吸気・排気が上手く出来てパワーが出る。そして混合気が上手に燃えるから排気ガスもキレイになる。その他にもいろいろ理由はあるんだけど、今のクルマは大概がクロスフローになってる訳です。


 うだうだ言ってますが、そろそろツインカムが出て来ますよ。


 で、クロスフローにしてガスの流れが良くなって満足かといえば、人間の欲望は果てしないもので『もっと流れを良くしたい』となる訳ですよ。するとバルブの面積を増やしたい、でも吸排気バルブが一本ずつだと限度がある。そこで出るのが四バルブ。小さいバルブを四個並べて燃焼室のスペースを目一杯使おうってなる訳です。そうなるとどうやって四本のバルブを開け閉めするかって問題が出てくる。カムシャフト一本で動かそうとなると少々ややこしい。だって一本のカムシャフトに沿ってバルブを四本並べるなんて(直打ちの場合ね)無理なんですもの。だから『え~い、カムシャフト二本で動かしてしまえ~!』となったのがDOHC……じゃないかと思っています。根拠は無いけど。


 やっと本題に入れた。


 このDOHCは色々な利点があって、吸排気をしっかり出来るからパワーが出るだけじゃなくて良く燃えるから排気ガスがクリーンになるとか、さらに四バルブにするとバルブ一つ当たりの重さが軽くなってサージング(バルブが高回転時に上手く開け閉め出来なくなる)とかが起こりにくなったりします。カムシャフトが左右に分かれてるからスパークプラグや噴射ノズルが燃焼室の真ん中に配置しやすくもなるしさ、良い事は多いんですね。


 最近のディーゼルエンジンでツインカム四バルブエンジンを見かけるのはその辺りが影響してるんだと思います。高回転なんてマイクロバスのエンジンとは無関係だもんね。三菱の四M五〇がDOHC十六バルブでした。


 燃焼室だってツインカムだと半球形(伏せたお椀みたいな形)やペントルーフ形(屋根みたいな形)にしやすいからね。電球の傘が有るでしょ? 傘の真ん中に明かりが有ってパッと周りに広がる感じと同じ。真ん中で火をつけると万遍なくエンジンの燃焼室で混合気なり燃料が燃える訳です。まぁ世の中楕円ピストンとか有るけど特殊な例なので突っ込まないよーに。OHVのウェッジ型燃焼室だとセンタープラグ化とかも難しいからね。


 そんな良い事だらけのツインカムエンジンなんですが、高度な工作技術や複雑なバルブ周りを支える設計や材料など、作るのは結構面倒な事が在りまして、昭和四十年代に出たスカイラインのS二〇エンジンはヘッドにクラックが入る事が在るみたい。経年劣化かも知れないし、使っている材料が悪かったのか、それとも工作技術の問題化は解らないけれど繊細なエンジンなので一般車には使われるどころじゃ無かったんですね。


 だからプッシュロッドがガシャガシャ動くOHVが幅を利かせている時代だと滑らかに高回転まで回り、燃焼室やら吸排気効率やらが理想的に作られたDOHCエンジンは滑らかさや高出力さが余計に際立った訳です。


 時は流れて令和。工作技術が上がった今じゃ軽トラでもツインカムエンジンを搭載。OHCエンジンだって一カム四バルブなんてローコストかつ効率が良いエンジンが出て来たり、そもそも上手く設計してあるから昔ほどツインカムのありがたみは感じられないけれど、カムシャフトが吸排気で別だから可変バルブタイミング機構を入れやすいとか、まだまだメリットは多いみたい。ツインカムってエンジンを効率的に動かすって面では理想的なんだと思います。


 そのツインカムでもトヨタの場合は『スポーツツインカム』と『ハイメカツインカム』が有ってややこしいんだよなぁ……。

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