102. 男の子のお買い物 1/3 ― 手をつなぐと?(一護)
「あ、
なんだかソワソワしている
百貨店に来ていた。『男の子のお買い物』中だ。男の子の、と言っても、特別な物を買いにきたわけではない。普通の買い物だ。この前
(女の人だけって言っても、
ボクの隣には、男の子の格好をしたお嬢様がいる。長い髪をキャスケット帽の中にしまい込んでいて、男の子に見えなくもない。
買い物の話を聞いたときに、お嬢様も一緒がいいとボクが頼んだ。一加がお嬢様と一緒に出かけて、ボクが一緒に出かけなかったら、一加はきっと気にする。気にしなかったら、それはそれでいい。お嬢様と一緒に出かけられて嬉しいだけだ。
(
お嬢様は、ボクの左腕に右腕を絡め、さらに手を握っていた。
「いいのか? って、どういう意味ですか?」
お嬢様は
「ほら~、いろいろとな~。あ~っと、なんて言ったらいいのか~。そのな~、いろいろ
お嬢様は眉間にシワを寄せている。徹さんの質問の意味を、一生懸命考えているようだ。
「あ! そういうことか! 大丈夫ですよ。
「そ、そうなのか~?」徹さんは驚いている。
「この前、一加ともこうして歩いたんですよ。だから、大丈夫です!」
「い、一加じゃなくて~……」
「お、男の子と手をつないでて、いいのか~?」
「男の子? あ、なるほど。そういうことですか」
「そ、そうそう」徹さんは何度も首を縦に振った。
「大丈夫ですよ。慣れてますから。去年まで、買い物のときは、手をつないでないといけなかったし。
「う……、そ、そうだったな~。はあ~」
ため息を
「手をつないでないといけなかったの?」
「うん。この男の子の格好もね、去年までは買い物……、だけじゃなくて、外出のときは必ずしてたんだよ」
「そうなの?」
「
「そういえば、一加のときはスカート
「この格好のほうが楽で好きなんだけどね。女の子のお買い物だったし。あ、可愛らしい格好も好きだよ。たまにするなら。でも、たまにすると、着慣れてないから疲れちゃうんだよね」
「そういうもの?」
「私は、そう」
「手、離したほうがいい?」
「なんで? 一護は嫌?」
「ボクは嫌じゃないけど。せっかく、つながなくてもよくなったのに、あれかなって……」
お嬢様は、ボクの顔をジッと見つめてきた。
「一護は馬車から降りるとき、怖くなかった?」
「え? なんで?」
「一加は怖がってた。一護も、一加と同じくらいじゃなくても、怖かったんじゃない? 少しでも、ほんのちょっぴりでも、怖いって感じなかった?」
『女の子のお買い物』の楽しい話は、お嬢様と一加から聞いた。それとは別に、一加と二人だけでも話をした。
一加は、すぐに馬車から降りられず迷惑をかけてしまった、と反省していた。同じことをしてしまわないように気をつけてと、百貨店の様子を教えてくれた。
心構えをしておいたおかげで、馬車からすぐに降りられた。でも、一瞬
「怖かった……」
お嬢様の目を見て、呟いた。お嬢様の手に力が込められた。ボクの手をギュッと握りしめた。
「こうしてると、どうかな? 少しは怖いのなくなる?」
「うん」
馬車から降りると、すぐにお嬢様が手をつないでくれた。すごくホッとした。
手をつないでいると、なぜか周りに知らない大人がいても平気だ。触れられたり、声を荒げられたりしたらわからないけど、とりあえず大丈夫だ。
「私はお出かけ中、こうしてるのは慣れてるから。ずっとこうだったから、手をつないでないと、不安っていうか、手が寂しいっていうか。だから、気にしなくていいよ」
「うん。ありがとう」
ギュッと手を握り返すと、お嬢様はにこっと微笑んだ。
「待たせたな」
「
「別に何も……。はあ~~」
旦那様と律穂さんが戻ってきた。律穂さんに声をかけられた徹さんは、なぜか大きなため息を
何箇所かは一緒に買い物をして歩いた。でも、最後に買いにきた売り場がとても混んでいた。ボクは行かないほうがいいだろうと、旦那様と律穂さんの二人だけで買いに行ってくれた。ボクたちは、人の少ないところで待っていた。
「それじゃ~、食べに行くか~」
肩を落としたままの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます