第49話【乗り物酔いと二日酔いと酔いどれ影武者……ザ・三つ巴の闘いである】


 状況を察するに家族三人ほんもの2+偽物1で、〝幽怨血ゆうえんち〟とやらに向かっているらしい。


 昨日の飲酒と高速移動する社内の揺れのせいもあってか、視界が定まらない所か吐き気を催している。


 目の前の娘は可愛らしく車窓から見える、血の池地獄を純粋な瞳で見て笑っているし、妃様は『何処にそんなの売っているの?』と突っ込みたくなる程の、ド派手な色彩と奇抜かつ最先端過ぎるサングラスを掛けながら、優雅に昨日の余り酒をラッパしている。


『やぁ……おはよう。昨日はすまなかったな』


『おはよう、あなた。昨日は楽しかったわね――――今日は家族水入らずのプチ旅行よ!!』


『パパ上おはよ!!さっきね、ママ上がパパは素晴らしい魔王の前に、最高の旦那さまって言ってたんだよ!!』


『コラッ!!』っと妃様は娘である、フレデシカの口元を塞ごうとしたが、座高が足りずに空振りに終わり、真っ赤に染まる頬を隠しきれずに照れ笑いをする。


(家族って暖かいな……本当に素敵な夫婦だったんだなぁ)


 晴れ渡る空と幻想的な外の景色は、今までの出来事を全て忘れさせてくれる様に美しく、窓を開ければ風が顔を優しく撫でると共に――――綺羅綺羅キラキラした嘔吐物が、朝陽に当たり輝きを放ちながら後方へ飛び散っていった。



【ははうえへ エヴッ……今日もぼくは……グフッ……げんきで……オロロロロッ】

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