第36話【バルクス様による生前の祝辞】

一息深呼吸をすると、緊張した面持ちでバルクスが記録装置に向かい話しかける。


「この度は魔王様と妃様に大変恐縮ですが、魔界軍並びに国中を代表して、結婚200回記念のお祝いと日々、国や民衆のために労を惜しまない魔王様にまずはお礼を――――」


緊張し改まる【混沌】の口上スピーチに被せる様に、【竜蔦】、【覇将】、【死死舞】が邪魔をする。


「ハハッ……バルクスさーん!!ズボンのチャック全開です……よぉ?」


「ホウッ……混沌からこんにちわですな――――ブッ!!」


失失失失失バルさん隠してっ!!」


画面外に逃げようとしたが、超特注の自動追尾機能搭載オートパイロット最新記録装置ニューデバイスは、バルクスの下半身を拡大ズームアップし、ブレもなく1000Kの画質で鮮明に録画される。


それを投影された会場では、悲鳴に似た笑いが起こり、普段は部下への信頼が厚い硬派な男だけに、慌てふためく様がとても微笑ましかった。


【母上へ まだ動画には続きがあるみたいだよ!!】

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