第32話【壮絶な勘違い】

「あなた誰なの?」といきなり言われて、「僕影武者だよー」という軽いノリで答えようとした【泥んこ】を葬りたいと思ったが今は止めておこう。

「コホンッ」と一息置いてから答える。


「何を申すか。我は―――」


 血まみれの白布を畳始め、我の言葉に被せるようにフローラ姫は、話を進める。


からって、そんな気を使わなくていいのよ。冷え性だけど平気よ」


 さりげなくとんでもない情報を聞いたかも知れない……目が見えぬだと―――驚きで次の言葉が出なかった。


「なぬ……!?」


 我の寝室で女の子座りをする人間のお姫様が、あろうことか一糸纏わぬ姿で綺麗な人差し指を口元に当て、悩ましそうなポーズを取りながら首をかしげる。


「勇者様との記念パーティーの予行練習は終わりましたの?」


(ん?……話が読めないぞ。予行練習とは1体なんの事やら……)


【数秒の沈黙と時を刻む音だけが鳴る】


「あら?多忙な業務の合間を縫って猛特訓してたじゃない。幾先年もの間、互いに憎みあってた【魔界と人間界2つの世界の王が互いに手を取り合う】っていう内容の話よ」



「ほぇ!?」


 思わず、変な声をあげてしまった。



【母上へ あの2人の鬼気迫る実演はもはや主演男優ものだよ】

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