俺たちはセカイ不適合者だから、青春系はNGです。

@simizuichigo

第1話 言えなかった後悔がある


「お前、クズだな~」


 他人にそう言われるのは大っ嫌いだけど、俺は自分がクズだと『自覚している』系の社会不適合者だ。


 そんな俺の、一番の後悔。

 それは、自分の正直な気持ちを、言いだす勇気もなかったクズらしい自分に、気づかされた時だった。



「ねぇ。今日で本当に、お別れだね――――」


 中学校の卒業式の日、俺はずっと好きだった神崎夢(かんざきゆめ)にそんなことを言われた。

 俺たちはこれから別々の高校へ進学し、もう会う理由も、これと言ってない。

 このまま俺が自分の本当の気持ちを言いださなかったとしたら、夢とは『中学までの友人』というカテゴリーに分類され、いつしか記憶の彼方に抹消されることになる。


「なにか、言い残したことはないか~?」


 卒業証書の入った筒を握りしめたまま、夢はおどけて見せる。


 ……なあ、夢。

俺はまだこの時、自分が『クズ』だと思ったりはしていなかった。

 中学生までの俺は、友人もいて、こうやって喋ることができる女の子がいて、ある一定水準の青春は満たしていて。


そして一端に、恋なんかしていたんだ。


それはとてもとても、分不相応。

なのにこの頃の俺は、それが『当たり前』だなんて――――そんなことを思っていて。



「ははっ。告白されるとでも思った? 自意識過剰な奴」



 俺はこの日のことを、高校二年生になった今でも後悔している。

 好きな奴に『好き』って言えなかった。

ありふれた後悔。

ありふれた思い出。

 でもそんな過去は、きっとこれからの人生でとても大切だったもの……『自信』というものを、奪っていったんだ。


「え~。そんなこと考えてるわけないじゃん! ばっかじゃないの? それに、名城くんに告白されたって、嬉しくもなんともありませーん」


 夢はもう、中学の卒業式にこんなやり取りがあったことも、忘れているだろう。

 『未来』はどんどん更新されて、『過去』はどんどん破棄される。


 それが現実。

 変えようもない、人の宿命。


 ――――じゃあな、夢。

 俺は捨てられない過去を悔やみ、変わらない現在を恨み、そして。



 真っ黒な未来に向かって、今日も毒を吐こうじゃないか。


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