キャサリンとトーマスの関係

     ワシントン州 病院の診察室 二〇一五年八月二七日 午後三時三〇分

 さらに治療に関する補足説明として、ダニエルは香澄の担当看護師となる予定の女性 キャサリン・パープルを紹介する。

「それからもう一つ――入院中の間、香澄の担当看護師となる予定の女性を一人ご紹介します」

そう言いながら、ダニエルは左手を自分の左隣へいる白衣を着た女性の方へ向ける。

「こんにちは、香澄。この度あなたの担当看護師となりました、キャサリン・パープルです。それから堅苦しい呼び方は苦手なので、私のことは“ケイト”って気軽に呼んでください」


 両手にカルテを抱えながらも、香澄へ簡単な自己紹介をするキャサリン。キャサリンは香澄より一回り年上で、かつフローラよりも一回り年下の女性。しかし良い意味でフレンドリーかつ気さく性格だったことから、どことなくマーガレットに近いタイプの女性だと香澄は思ったかもしれない。

「は、はじめまして。高村 香澄です。しばらくの間お世話になりますので、どうぞよろしくお願いします」


 二人が簡単な自己紹介を終えたことを見計らって、ダニエルは緊張気味の香澄へこんなアドバイスをしてくれた。

「あなたは年頃のお嬢さんでもありますので、女性特有のお悩みも色々あるかと思います。よって男性医師の私に言いづらいことがございましたら、女性看護師のケイトに何でも相談してください」

「……はい、分かりました。エバンズ先生、ケイト。本当にありがとうございます」


 女性看護師も自分のケアをしてくれることを知ったためか、今まで少なからず不安の色を隠しきれなかった香澄の顔にも笑みがこぼれる。そんな頬笑みを見たキャサリンも笑顔で返し、

「香澄、確かに入院生活には色々と不安はあるかと思います。だけど私たちが一生懸命あなたをサポートするので、一緒に頑張りましょう! そして天国で眠るトムのためにも……ね」

彼女なりの言葉で香澄を激励する。

 

 キャサリンがトーマスの名前を口にした途端、香澄は最初戸惑いを見せる。だがこの場にいるキャサリンとダニエルもまた、以前はトーマスの担当医師と看護師であったことを知っていたためか、香澄は迷うことなく首を縦に振ってくれた。

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