すれ違う気持ちと願い【エリノア編 プロローグ】
夜は助言を運ぶ
[私の母国フランスに、【
今から数週間ほど前に、私はあるトラブルが原因で親友たちと仲違いをしてしまった。アメリカに留学前にフランスで出会った、ある少年が他界してしまったことを親友から聞かされたのだ。頭が真っ白になったことで理性が抑えられなくなり、感情に身を任せて彼女の頬を叩いてしまいたいと、当初の私は思っていた。だが寸前のところで自制心が働いたのか、私は何とかその気持ちを抑えることが出来た。
後日ふとしたことから親友とワシントン大学で再会するものの、ここでも私は再度親友を傷つけてしまったのだ。暴力に訴えることはなかったものの、少なからず暴言を吐いてしまったため、少なからず彼女の心を傷つけてしまったのかもしれない――その証拠として、和人形のように綺麗に整えられた顔から生気が抜けていく哀しい表情が、今でも私の脳裏に焼き付いているの。
それからの私の心の中に、ある感情が芽生えるようになる――そう、数年間も一緒に生活しながらも最終的に少年を救えなかった親友たちに対する、怒りと憎しみの感情だ。私の両親も数年前に病気で他界してしまい、少年の死がどうしても他人事に思えない。むしろ私の生きがいや夢を奪ってしまった彼女たちを、どうして許すことが出来るの?
その一方で、彼女たちの代わりに私が心のケアを行ったと仮定しても、果たして少年の命を本当に救うことが出来たのか――という疑問も抱いている。“心から少年と仲良くなりたいと想い接したけれど、最終的に小さな命を救うことが出来なかった”と、親友の香澄は私だけにそっと話してくれた。結果的に少年の命を救うことが出来なかったものの、私は香澄がその場しのぎの嘘をつくような非情な女性でないことは最初から知っている。
だけどこのまま何もせず、ただじっとしているわけにもいかない。もうすぐワシントン大学の秋学期も始まるので、それまでの間に何とかして問題を解決しないといけない。だけど今の私に、一体何が出来るというの? 数週間ほど前に香澄の心を深く傷つけてしまった今の私に、許しを
いずれにしても、このままだと彼女より先に私の心が折れてしまう可能性がある――いえ、もうすでに真っ黒に染まりつつあるのかもしれないわ。
この先私が歩んでいく未来では、彼女たちと無事朝日を迎えることが出来るののかしら? それともこの手を紅く染めてしまい、私の体は暗い海に沈んでしまうのかしら? その答えは、私の心の中にある『時の万華鏡』だけが知っている……]
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