異世界転生したけたどモブな件について
@xross
第1話 転生
享年24歳。
若くして不治の病を患った俺は、家族に見守られる中で、その短い人生に幕を下ろした。
と思っていたが、転生したようです。
科学とは異なる魔法と呼ばれる文明が発展した、まるで毛色の異なる世界。所謂ファンタジー世界に俺は転生した。
小さい頃から体が弱く、家の中で出来る趣味の1つにネット小説漁りがあった。
そのおかげである程度は順応する事が出来たと思う。
最初は当然のようき混乱し、戸惑いはしたが、人間は時間が経てば自然と順応出来る生き物だ。
それにまぁ……異世界転生と言えばチート人生の代名詞見たいな所がある。
そして当然のように俺にもチート紛いの能力を持っていた。
超能力
あれれー?ファンタジー世界だと思っていたらSF世界だったでござる。
そう、まさに俺が持っていた能力はSF世界に出てくるような力だったのである。
俗に言うサイコキネシス的なあれだ。念じたら物が浮いたりとか出来るあれだ。
本来、この世界の人間には魔臓と呼ばれるマナを貯蓄する臓器が心臓の横にくっ付いているらしい。
だが俺にはその魔臓がないとの事だ。
稀にそんな人間が生まれる事はあるらしいが、世界規模でそんな人間は数人しかいないらしい。
世界に数人のうちの一人になった事を喜ぶべきか、嘆くべきか、判断に悩む所ではある。
じゃあ俺魔法使えないの?
はい!微塵も使えません!だがしかし!所詮チート持ちの俺には超能力の力があった訳だ。
まぁ前世が病に侵された地獄だったからね、この位のサービスは多少ね?
そんな訳で、俺がこの世界に新しい生を受け早3年。
明確な自意識があるのをいい事に、すくすくと成長した俺は、将来の夢の現実実行の為に、日々己を研鑽する毎日を過ごしている。
と言っても3歳から体を鍛える訳にも行かず、超能力の訓練のみだが。
まぁ超能力の訓練と言っても、ただ物を持ち上げたり、自身を浮かせたり程度の簡単なものだけだ。
一見万能に見える超能力なんだが、使いすぎると凄まじい頭痛に襲われるのだ。
それを我慢し、ひたすら使い続けた結果、持ち上げる事の出来る重量が増加したりと、明確な結果が出ているので案外楽しかったりする。
しかし、この世界には超能力なんて力は存在しない……はず。
少なくとも村の住人は魔法しか使っていない為、ばれないように家の裏庭でこっそりと訓練している。
「こら、アイクちゃん!また勝手にお外に出てる!」
まぁバレるよね。
所詮3歳児の身体能力で行ける場所には限度がある。
それも家の裏庭なんて言ったらバレて当たり前だろう。
「1人でどっか行ったら危ないでしょ!」
ちなみに俺の名前はアイクだ。小さい農村に生まれたスーパーベイビーだ。
そして現在進行形で俺の首根っこを掴んでいるのは俺の母であるアシュリー母さん。
真っ赤な毛が特徴的な美人若奥様である。
なまじ明確な自我があるだけ年頃の女性の胸にしゃブリつくのはきついものがあったとだけ言っておこう。
そんなバブバブしてる時の話を聞きたい奴はいないだろう?今も大概バブバブしてるが。
「離してよ!」
子供よろしく手足をバタつかせるが、冒険者と呼ばれる職業に就いている脳筋母さんの力に叶う訳もなく、室内へと連行される。
「離しません!今日はお勉強するって約束してたよね?」
「し、してないもん!」
必殺子供にのみ許された涙目上目遣い!
が、効果はないようだ!
抵抗虚しくそのまま自室まで連行され、勉強机の前に座らされる。
机の上に広がるのは魔法理論と題名づけられた教科書。3歳からこんな教育しちゃう?と思わずにはいられないが、我が家の育成方針はスパルタらしい。
しかし、そのスパルタにもしっかりとした理由があるだけに、俺も強くは否定出来ない。
魔臓がない人間はイコール魔法が使えない人間となる。この魔法文化が著しく発展したこの世界で魔法が使えないと言う事は致命傷所の話ではない。
それを母親は理解しているからこそ、魔法技師と呼ばれる魔道具を製作する立場になって欲しいそうだ。
魔法が使えないのに、魔法関係の仕事を目指すのか……と戸惑うかもしれないが、この魔法技師は魔法を使う才能よりも、純粋な理論で成り立っている、言わば数学者的な職種らしい。
まあ、そんな母さんの思いは理解出来ない事も無い。
魔法技師は一握りの人しかなることの出来ない知恵の叡智とも呼ばれる花形職だ。
生活水準も上がれば、差別されることも無い。寧ろ魔臓なしだろうが賞賛の嵐を受ける立場の人間にだってなれるだろう。
だがしかし!俺はそんな理論だなんだと頭が痛くなる話は大嫌いだ。
母さんには悪いが、俺は超能力者としての道を歩むと決めている。
ふわっとドカンと適当な人生を歩みたいんだ!
「母さん、知ってる?この間お父さんが知らない女の人と遊んでたよ!」
故に、俺は勉強から逃れる為に、ありとあらゆる方法で母さんの監視から逃れる。
だが、正攻法で母さんの監視を逃れる事は不可能に近い。
もはや物理限界を超えた動きをするぐらいだからね、仕方がないね。
だからこそ精神を揺さぶる作戦に打って出る。
この場にいない父には申し訳ないが、あながち間違った事は言っていないのでセーフセーフ。
「そ、そんな嘘でお母さんを騙そうったって……」
効果はバツグンだ!!
「嘘じゃないよ!パパの部屋にキラキラしたのもあったもん!」
3歳児がこんな事を言うかと思われるかもしれないが、中身は20を超えてるから問題ない。
「キラキラしたもの……?」
露骨に狼狽えている母さんに若干の罪悪感を感じつつも、これは行けたと確信する。
普通の家庭ならば、こんな家庭崩壊のきっかけを作りはしないが、父の浮気もどきは日常茶飯事なので割と問題ない。
父自身は、母さん一筋なのだが、現在進行形で冒険者の中でも有名なグループのリーダーらしく、そりゃあ若い女から人気がある。
父は父で女性に大して甘く、ついつい向こうのペースに流されてしまうと言う訳だ。
それに気付いた母さんが相手の女にカチコミを入れるまでが何時もの流れになる。
「うん!いっぱい本棚の後ろにあったよ!」
この言葉が決め手になったのか、瞳からハイライトが消えた母さんは音も立てずに部屋から出ていった。
父よ、後は任せたぞ。
俺は俺でやらないと行けないことが大量にあるんだ。
どうせ夜には2人でイチャイチャしてるからへーきへーき。
さて、母さんの監視が無くなった今の内に超能力の訓練を再開しますか。
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