第29話 嫉妬なんか大っ嫌ぃ!




「せーんパイ♪な~にしてるっスか?♪」


「あ、スミちゃん今日も来てくれたん?お早う♪

 いつもいつも、ホンマにごめんな?そない毎日、お見舞い来てくれんでもええんよ?」


「まったく先輩は、そんなの気にしなくていいんスよ♪

 これはスミレが来たくて来てるんス!それに正直なところ、スミレも負傷休暇中で暇なんス♪」



 魔法協会本部の地下深く。そこには、魔法少女専用の治療施設がある。

 分厚いコンクリートやいくつもの魔法障壁に護られたその場所は、地球上で最も安全で安心な場所。乙女達の花園シークレット・ヘブンと呼ばれ、様々な噂や伝説が囁かれている。

 そしてその最奥、一際厳重な警備が敷かれたその部屋に彼女は居た。



 「って!ま~た先輩は魔法少女の動画、通報してたんスか!?

 先輩も毎日飽きないっスねぇ?こういうのって、消しても消してもキリ無いんスよ?イタチゴッコ?とか言うヤツっス!


 。。。で?今度のはなんスか?

 えっと?最年少二つ名持ちナンバーズ、クリムゾン・プラムのハイキック特集!?プハ♪

 つまりは、ロリッ娘のパンチラ特集っスか?超ウケるっス♪」




「もぉ〜、スミちゃん!笑い事やないんよ?あーあー、あんだけの方は蹴ったらアカンて言うたのに、この娘はホンマにもぅ。。。


 。。。。。。ねぇ、スミちゃん?

 ウチらコレでも命懸けで戦っとるやん?なのに、なんでこんな風に変なヤラしい目で見られるんやろな。。。?ウチも別に、皆が皆そうやとは思ってないけど。

 そやけど、例え自分の願いの為に。。。言うても、こんなん観るとちょっとだけ平和を守る人を助けるんがシンドなってしまうわ。。。


 ホンマにいつから世界はこんな世の中に、なってしもうたんやろね。。。?」




「。。。先輩?だったら先輩が世界を、魔法少女を取り巻くこの環境を変えたらいいっス。。。確かに先輩は魔法少女としては、もう死んだ闘えないかもしれないっス。でもきっと先輩だからこそ、これから出来る事が沢山あるとスミレは思うっス!


 だから先輩!スミレは先輩の役に立ちたいっス!

 先輩の為なら、スミレはなんだってする!この命だって要らない!世界を敵に回したっていい!全部、全部先輩にあげる!先輩の為なら喜んで死ぬ。。。

 

 ね?先輩。。。だから今は、早く元気になることだけを考えて、欲しい。。。っス♡」



「ン。。。♡スミちゃんダメ!

 こないカメラのたくさんある所で、キスなんかせんといて?気持ちは嬉しいけど、恥ずかしぃ。。。」


「ニシシ♪ロリッ娘の白パンに浮気した罰っス♪」



「もぉ!スミちゃんのいけず!!!

 。。。。。。でも。。。みこちゃん、知らん間に序列ついてもうたんやね。ウチ、全然知らんやったわ。。。


 スミちゃん、あの娘危ないことしてへんかな!?

 ご飯はちゃんと食べとるやろか?夜寂しくて泣いてへんかな?

 また。。。人を見殺しにとか、しとらんやろか。。。?


 やっぱりウチ、一回だけ様子を。。。」




「。。。。。。先輩?一昨日も言ったよね?

 先輩は傷が癒えるまで、此処からは出られないって。。。」


「せやからキズはもう塞がって、」


「まだ解んないんスか!!!

 先輩の左腕の残りと右足を斬り落としたのは、あのロリッ娘なんスよ!?そのせいで先輩は、危うく失血死するところだったんス!

 それにスミレもお股大事な所をグチャグチャにされたっス。。。スミレは、あんな恐ろしいロリッ娘バケモノになんてもう構いたくない!!!

 なのにどうして!?どうして先輩は、まだあのロリッ娘バケモノのことを気にするんスか!!!殺されかけてもなんで、どうしてそんな顔であんなバケモノヤツのこと心配するんスか!!!

 どうして。。。?どうしてそこまで。。。?」



「スミちゃんあんな?治療術士ヒーラーの先生が言うとったんよ♪


 あの魔獣の牙や爪には瘴気の強いがあって、もし傷のある腕や足をそのままにしとったら全身に毒が回って、ウチは助からんかったって♪

 せやからみこちゃんはきっと、ウチを助ける為に」


「そんなのただの結果論っス。。。

 あの時ロリッ娘は、吐くほどの目眩を起こしてたっス。つまり、先輩の魔法がそんなに働く様なな殺意を持ってたんス!先輩を助けようなんて眼を、を振り上げたアイツはして無かったんス!!!」



「それでもウチは!」



「先輩。。。あの娘は、悪っス。

 先輩と一緒に過ごしても、本質的には何も変わってなかったんスよ。。。先輩は、騙されてたんス」


「スミちゃん聴いて、みこちゃ」



「じゃあ、どうして!!!

 どうしてあの夜あの場所に居て生き残ったのが、スミレと先輩なんスか。。。?他の皆は何故死んだんスか?

 スミレが意識を失うまで、少なくとも3人は無傷だったス!あのロリッ娘が悪じゃないと言うなら、どうしてあの娘達死んだんスか!!!」


「それは。。。。。。」


「。。。。。。先輩?どうして、スミレじゃダメなんスか。。。?スミレはこんなに先輩のこと。。。」



「スミちゃん。。。ウチは、ゴホ!ゴホ、ゴホ!」



「。。。ほら♪。。。そんなに興奮したからっスよ?あれだけの瘴気を喰らったんス。。。外身は大丈夫でも、中身はまだボロボロっス。


 お願いだから、もうしばらく大人しくしといて下さいね。。。?


(チュ♡)


 おやすみ、なさい。。。。。。

 ボクのお姉ちゃん。。。」





 眠りの魔法を乗せた優しいキスをして、紫電色の戦乙女は病室を後にした。


 一人安らかく眠り残された碧色の少女は、此処で護られてなどいない。

 彼女が居るこの場所は、世界一安全強固安心堅固病室牢獄、彼女は此処にわれてる。



「やっぱり。。。あのロリッ娘は、邪魔っスね」



 ガラガラ、バラバラと。怒り嫉妬と憎しみを硬く握り潰した紫色の拳が、平穏という名の壁を粉々に打ち砕く音を、紅の魔法少女は未だ聴いてすらもいない。。。。。。



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