第14話 暇つぶしなんか大っ嫌ぃ!


 かなり久しぶりに登った鉄塔の頂。

 私は耳を澄ましながら、眼を閉じる。以前とは違って、もう人間生ゴミの悲鳴が上がるのを待っている必要は無い。

 今の私ならただ魔力探知を超広域展開するだけで、怪人害虫だろうが魔法少女ゴキブリだろうが居場所なんかは大体判る。そして耳に魔力を集中すれば、そこの音だって拾ったりも出来る。

 この技術が全部お姉さんメガネ譲りなのは物凄く不本意だけど、とりあえず今は自分の成長を素直に認めておくことにする。。。



「キャー!!!」


「チッ」



 あれは違う。あれは、ただの露出魔変態



「ウ、ウワーーーーーー!」


「チッ」



 これも違う。これはただの人間生ゴミが、怪人に喰われようとしているだけ。


 わ、私は別にあのお姉さん変態メガネ狸のことを捜してなんかいない。ただ暇だから。。。

 そう暇だから雑魚なんかじゃなくて、暇潰しに丁度良さげな怪人害虫を探してるだけ!


 本当に絶対、あんなお姉さんメガネのことなんか気にもしてないんだから!




「。。。誰か、誰でもいいっす。。。先輩を、先輩を助けてよ!!!」


「。。。チッ」




 漸く見付けた暇潰しに丁度良さそうな手頃な相手。一瞬迷いはしたけれど、どうするか考えるよりも先に私の体はその場所へ向かって飛び立っていた。


 仕方なくこのまま向かうことにしたその場所は、一昨日無理やり委員長達に連れて行かれたあの公園。そしてたまたま、本当に偶然。

 そこからは、あの紫色の魔法少女鬱陶しいコバエの声がする。


 まぁ偶々?決めた場所が同じになってしまったのだからそれは仕方ないこととして。

 問題は何て言いながら登場するか!とか、そんなどうでも良い様なことでは無い。


 人払いと諸々を閉じ込める為の結界魔法、その外からでも判る。

 そこから漏れて来る魔力は、強くて異質。。。それは怪人害虫でも魔法少女ゴキブリのモノでも無い、今までに感知したことのない種類の魔力酷い臭いだった。



 ************



「怒り荒ぶる雷帝よ。轟く怒号を我が弓に、迸る雷で彼の敵どもを貫き殺せ!『クリムゾン・アロー・ライトニング!』」



 私は地面に降り立つよりも速く、魔法の杖クリムゾン・アローから雷の矢を放つ。

 雷の矢は雨のように降り注ぎ、眼下に群がる怪人雑魚どもを一掃消し炭にした。

 今さらだけど、私の杖は魔力を込めると思い描いた武器へとその形を変える。そしてこれは、私のお姉ちゃんとお揃いの能力♪

 他の魔法少女ゴキブリ達には真似出来ない固有魔法ユニークスキル



「。。。ロリ、ッ娘?」



 灯り一つ無い夜の公園は、一昨日にも増して何とも酷い有り様だ。

 辺りには結構な数の怪人の腕や脚、頭や内臓なんかが飛び散っていて、それから立ち上る瘴気の臭いが充満している。

 そして、所々に怪人のパーツとは違うマネキンの手足みたいなモノもあるのだけど、もちろんそれはマネキンなんかでは無い。


 私の直ぐ目の前にも、採れたてピチピチの魔法少女の生脚ソレの入ったニーソは落ちているのだけれど。。。流石のバンジーでも、


「マニアに売ったら、高いかな?♪」


 なんて冗談を言う様な余裕は無いと思う。

 彼女ゴミ達は殺された。と言うよりも、食い散らかされたと言う方が適切な感じだった。

 そしてリアルに広がっている血の残飯の海の向こうでは、障壁に引っ込みながら天から舞い降りる私を観ていた臆病者ゴミくず達と、不気味な唸り声を上げている黒い影。


 加えて夢で見た通りに左腕を失くし、その黒い影から臆病者達背後の障壁を護るようにお姉さん変態メガネが対峙していた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る