第2話 妖精なんか大っ嫌ぃ!



 病院の地下にある薄暗い部屋。

 私がそこでお姉ちゃんと再会したのは、あの日の夕方のことだった。



「。。。ぉ姉ちゃん」



 どのくらい泣いたかは知らない。

 泣いて泣いて泣きまくって、もう一滴の涙も出なくなったくらいにアイツは突然現れた。



「やぁ♪少しは落ち着いたかい?」



 私とお姉ちゃんしか居ないはずの部屋に響く声、聴こえると言うより頭に直接響いてくるような?そんな気味の悪い可愛らしい謎の声。



「。。。誰?」


「あぁ!ごめんよ?怖がらせるつもりは無かったんだ。

 ボクは君のお姉さん、桃っちの相棒?というか、友達?みたいな。。。そんな感じで、えっと、全然怪しくはないからね?」



 直ぐにピンときた。

 コイツは魔法少女の相棒。。。

 つまりは、妖精とか精霊とか呼ばれるそういうヤツ。



「怪しい人ほど自分で怪しく無いって言うって、お姉ちゃん言ってた。。。」


「フキャ!桃っちめ、なんて核心を突いた教育を。。。

 う~ん、契約してない娘に姿を見せるのは色々問題あるけど。。。まぁ、しょうがないか。


(PON!)


 ホラ!この通り、ボクは本当に無害で安全な妖精だよ♪これで信じてくれるかい?」




 私の目の前に白い煙と現れたソイツは、猫みたいなフェレットみたいな、白くてニョロッとした何とも気持ち悪い可愛い姿をしていた。

 そしてなんの断りも無く、さも当然と言わんばかりに私のお姉ちゃんの上に乗っていた。。。



「私のお姉ちゃんに触るな!!!!!!」



 反射的というか衝動的に、私の両手はその可愛らしい気持ち悪い妖精の首を思い切り掴む。

 力が入り過ぎてプルプルと震える両腕、これは首を絞めるなんかじゃ生ぬるい。

 その細くて気持ち悪い柔らかい首を握り潰すほどの勢いで、私はソイツをお姉ちゃんから引き離す!


 コイツが!コイツさえ居なければ!!!


 ギリギリ、ギリギリと私は力の限りにソイツの首を握り潰す。本当に本当に、殺す気だった。絶対絶対許せなかった。


 コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル!!!!!!


 痛くて幼い胸が張り裂けそうなほどの殺意が、私の中には溢れていた。。。



「グェッ。。。出ちゃう!

 何か出ちゃいけないモノが。。。色々出ちゃう!」



 お姉ちゃんの仇をとってヤる!!!

 そう思って、必死に首を握り潰していた私。

 コレはきっと悪い夢、コイツさえ殺せば目が覚めて隣にはお姉ちゃんが眠ってるはずだもん!

 私はそんな幻想を抱く様に、妖精の首を握り潰している。

 祈る様に。。。そして、すがる様に。。。



「ゲホッ。。。なぁ、き、キミの。お姉さんの最後の言葉を。。。聴きたくは、ないかい?」



 ソイツの出任せかも知れない。。。

 なんてことは考えもせず、フッと現実に引き戻された私はそれ以上握り潰す祈るのをヤメた。


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