第四話「幸せになりたいのに」彼女目線:和子(かずこ)
初恋。失恋。元カレ。元カノ。
今の私たちの関係を例えるなら、こうだ。
「森さん。大丈夫ですか?」
目が赤いよね。うん、知ってるから。
「だ…大丈夫ですよ!ちょっとした辛い事があって…」
同期の原田さん。原田舞子。名前が同じく「子」が付いてるおかげで、よく話が合う。同い年で、優しくて、明るくて、仕事もよくできる女性だ。
「そうなんですね。もしかして、失恋したんですか?」
「ま…まあ、そんな感じです!」
「森さんなら、もっと素敵な出会いがありますから!一緒に頑張りましょうね!」
「はい!ありがとうございます!」
「仕事が終わったら、パーと飲みましょう?」
「いいですね!わざわざすみません!また夜もよろしくお願いします!」
何もかもうまくいかない。
なんで、悠真さんは…あの女を選ぶの?私だっていいじゃない?
「…という事です」
「そうなんですね。森さんも色々と大変でしたね…」
「もう慣れましたよ。あんな男に好かれない方がよっぽど幸せですから。大好きだったのは事実ですけどね…」
いつものコンビニで、ボーとしてたら、急に元カレが現れた。
「和子?なんでこんな所にいるんだ?」
「別に。あんたのことなんか、待ってないし…」
「和子、まさか寂しいのか?」
図星だ。合ってるけど、認めたくない。
「ううっ!悠真さんのバーカ!私も疲れたー!」
「子どもだな…君も」
ピルルッと悠真の携帯が鳴った。
「あっごめん。杏奈から連絡が来てる。ちょっと待っててな?」
「はい、悠真です」
『杏奈です。』
「どうしたの?」
『今日の晩ご飯はどうしますか?』
「あー今から帰ろうと思ってたけど、和子が泣いててさ?放っておけないんだよ…」
『そう?じゃあ、悠真さんの晩ご飯は冷凍庫に入れておくね』
「うん、ごめんな。わざわざありがとう」
『今日は帰ってくる?』
「用事を済ませたら、家に戻るよ」
『分かった。待ってるね』
「うん、じゃあこれで」
ピッと電話を切ると、私の頭を撫でながら、これまでの彼の気持ちを全部隠さず、伝えてくれた。
そこには溢れ出す愛。恋しく思う気持ち。切ないけど、幸せな結婚生活。夜の営みはないけど、彼はどこか幸せな表情だった。
「悠真さん、幸せ?」
急な質問だった。
「幸せだよ。こんな形でしか君と結ばれなくても、みんなに敵を回されようと、俺は君をずっと愛すると決めてるよ。いずれ、この状況はうちの両親にも、杏奈の両親にもばれてしまう。そうなる前に、先に駆け落ちでもしようか?」
笑いながら、真面目な話をするのが、どこか寂しそうだった。
「悠真さん、今日は帰りたくないの」
「じゃあ、俺の所に来るか?一人用に住んでるアパートも借りてるから、そこに向かおうか」
「すみません。お願いします」
そっと髪に触れて、優しくキスをする。
彼が私に対する愛情表現だ。
「私だって、幸せになりたいのに」
そっと囁く小さな願い。いつか叶えられる日が来るのかな?
「このまま、時間止まればいいのにね」
「そうだな」
切ないけど、幸せ時間だった。
貴方が愛を捧げてくれるから、今の私がいるんだよ?
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