4.9 サシャの異動
「サシャ」
不意に響いた、フェリクスの声に、思考が中断する。
「ここにいましたか」
小さな部屋に入ってきたフェリクスの、いつになく蒼白い顔に、トールの背に緊張が走った。
「何か、御用ですか? フェリクス様」
同時に顔を上げたサシャとルジェクに、フェリクスが頷く。
「バルトからの伝言です。サシャを、今すぐ
続いて、フェリクスの口が紡いだ言葉に、トールの幻の口がぽかんと開いた。
「えっ?」
サシャより先に、ルジェクが声を上げる?
「なんで、サシャが、白竜騎士団なんかに?」
「バルトに聞いてください」
非難を含んだルジェクの問いに、フェリクスは久しぶりに聞く人物の名を挙げた。
このところ、
「むぅ」
トールとサシャの代わりに、ルジェクが唸る。
あのヴィリバルトのことだから、考えていない振りをして何か深い考えがあるのだろう。俯くサシャの蒼白くなった頬を見、思考を巡らせる。白竜騎士団は、この帝都と神帝を守護する任を負う騎士団。おそらくヴィリバルトは、将来サシャを宰相にしたいと言っていた北向の神帝候補リュカのために、自身の権限を使って、サシャを、神帝を守護する騎士団に移動させたのだろう。それならば。無言のまま立ち上がったサシャに、トールは大きく頷いていた。
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