第8話 被災者の女性
でも、彼には他にお気に入りで、仲の良い日本人女性が、何人か居た。
特に一番、彼が気に入ってて、憧れている女性が居た。
その女性は、まだ、20代位の、311の被災者だと言う
英語の堪能な、美しい日本人女性だった。
彼女はいつも、絵画の様に美しい写真と
堪能な英語で、いつもポジティブで詩的な言葉を、書いていた。
彼は、そんな彼女に凄く惹かれ、でも人気者だった事もあり
中々、積極的にアプローチできずに居る様だった。
彼は必ず、彼女の書くメッセージと写真を、一つ残らず大事にいつも、コレクションしていた。
私は、その事実が、積もり重なって往く度に、
嫉妬の炎に駆られてしまった。
身勝手極まりないと想いながら。
本当に彼を愛してるのかさえも、分からないのに。
私は彼にとって、都合のいい、バーチャル上のマスターベーションの相手なのか
本当に女性として、憧れ、尊敬して、想って居るのは、あの子じゃないのか、と。
唯でさえ、脆くて、ちょっと何かに突かれれば、崩れ堕ちる
私の、やっと千切れそうな糸で、保たれていた
人として、女としての自尊心と、在る様で無いに等しい、自己肯定の感覚は、狂い始めた。
彼へ、あまりに、身勝手な、ヒステリックなメッセージを入れて
ある秋の、台風の嵐の夜、部屋着の侭、外へ飛び出した。
傘を差していたかは、覚えていない。
唯、いつも行く、近くの公園の東屋で、暗闇と強風と豪雨の中
涙を、ボロボロ流しながら、手足をだらしなく、ぶら下げて、
だらんと、座っていた。
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