神アプリ

Black river

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「今春イチオシ!神アプリ20選」

なにもすることのない電車の中だと、こんな月並みな広告すら思わずタップしてしまうことがある。飛ばされたリンク先には、今流行りの動画や画像加工のアプリ、ゲームなどが連なっている。なんだかどれも見たことがあるものばかりだな、と思いながら私は軽く流すつもりで画面をスクロールしていった。

その時ふと、一番下に表示された変わった広告に目が止まった。

「これが本当の神アプリ!インストールして世界の運命をあなたの手に!」

説明欄を読んでみると、大仰なタイトルがついていはいるものの、どうやら一種の心理テストをメインとするゲームのようだった。いろいろな状況で選択肢を選んで、問題を解決していかなければならないらしい。暇だった私は迷わず「インストールする」を押した。

ホーム画面に「神」と一文字だけ書かれた、黒い四角形のアイコンが表示される。開くと協賛企業のマークらしきものが出た後、「今すぐ始める?」というボタンが現れた。もちろんタップ。

「問題」の文字が大きく表示された。

「あなたの前には裁きを待つAとB、2人の人間がいます。Aは嘘ばかりついていつも人を困らせていますが、人を直接傷つけたことはありません。Bはとても真面目で、今まで人に迷惑をかけたことはありませんでしたが、自分の保身のために一度だけ人を殺してしまいました。あなたはどちらに重い罰を与えますか」

なるほど、こういう回答者の倫理観を問う問題が出るのか。

私はしばらく悩んだ末、Bを選んだ。どんな状況であれ、殺人は嘘よりも重い罪だと思ったからだ。

こんな風に神の視点で人の運命を振り分けていく問題が何問か続いた。

「あなたが見ているのは駅のホームです。2人の人間が同時にホームから落ちようとしています。駅を通過する列車はすぐそこに迫っているため、神といえどもどちらか片方しか助けられません。1人は余命一ヶ月の老人ですが、もう1人はまだ若い詐欺師です。あなたはどちらを助けますか?」

私は迷わず「老人」のボタンを押した。

その時、ドンという鈍い音がして電車が大きく揺れ、止まった。

少しして、こんなアナウンスが車内に響き渡った。

「ご迷惑をおかけしております。ただいま、人身事故がありましたため、電車を急停車いたしました。現在、安全確認を行っております。もうしばらくお待ちください…」

私は直感的に何かを察し、そっとアプリを閉じた。

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