空色の瓶詰
夕雪えい
01.桃源の花の一片
見事な自然林だと錯覚したが、よく見れば隅々まで管理者の手が行き届き、気象や現象までが実に繊細に運行されている。
美しく咲く桃の花、その花びらが落ちる一時までも。
真の理想郷なのかもしれない。
荒廃しきった〝外〟を知らぬ、花咲き乱れ蜜の流れる美しい土地よ。
口をついて歌がまろびでた。
遠くに小さな点が見える。理想郷の人々なのだろう。
世界に求められし庭には、世界に求められし庭師が住んでいる。争いを知らぬ清い心で、穏やかに――。何処までも平穏に――。
また花びらが散ったのを見て、私は踵を返した。
麗しの理想郷は、我が踏むべき土地にあらず。清流に棲むモノのためだけの土地ゆえにと。離れていく視界の端で、花が散るのを辞めるのを見た。安住の地はあまりに遠い。私の旅は、ただ独りぼっちの私の旅に終わりは見えない。
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