Live.17『決戦、LSB合体特別編! ~BATTLE TO SAVE THE WORLD~』
【【超☆緊急報告っ──!!】】
【はいどうもー! グッモーニンアフタヌーンイブニナイっ☆彡】
【今日も女装ウィーチューバー“MARiKA”でぇーすっ!】
【MARiKA先輩だけじゃありませんよ! 自分、リンドバーグも別画面越しにいまーすっ!】
【いやぁ、もうすっかりレギュラーみたいになっちゃったねぇ。どうする? このまま本当にレギュラーになっちゃおうか? ってね(テへ】
【う~~ん、それは中々良いアイデアですねぇ! ですけどですけど、そうには行かないのがこの世の常! 画面の奥の期待してた方はごめんなさいね~。実は今、東京で起きている出来事が関係しているので、レギュラーってのはとても難しいんですよ】
【おっと、台本にない(オイ)話の進み方になっちゃいましたけど、本題が出ましたね。ではお話致しましょう。先輩、オナシャスです!】
【はいは~い、後輩からのバトンタッチでご説明します! みんなは今、東京の空に浮かぶなんか変な黒い歪みのようなのがあるのを知ってるよね? 実はあれは次に出現するアウタードレスなのです!(ナ、ナンダッテー】
【それはもうとーっても強力な相手になると思う……。でもボクらは負けない! だってそのための後輩くんなのです!】
【ちょっとだけエゴサして見つけたネットにこんなスレが立ってました。『ゼスバーグはただのアーマード・ドレスではないかも』、と】
【その予想は大正解、事実です。確かに自分のドレスは他の先輩らとは作りが根本的に異なった特殊機体。それは全て、あの東京の歪みの向こうにいるドレスを倒すための超☆決戦仕様なのです!】
【前回の戦いで乱入してきた変な生き物。あれはその先兵なんです! それらを倒すためにバーグくんはいる……そう、そのためだけに】
【そして悲しいお知らせも一つ。なんと次の戦いでボクの新しい後輩は引退……そんな、こんなのあまりにも早すぎるっ!】
【泣かないでください先輩! 悲しいのは自分も同じ。次の戦いで勝っても負けても同じ結末が自分に待っています。それは全て、あのドレスを倒すためだけに自分は存在しているのですから……】
【──っていうシリアスな雰囲気にしてみたものの、引退したところで死ぬとか消えるとか、そんなことはなくて、普通に元の女の子に戻るだけなんですケドっ(テヘペロ】
【でも次のLSBでバーグくん最後の出番ということは変わらないんだよね……。でも、先輩は負けないっ! 次の戦いも、これからも後輩の分まで頑張ってやっていくから!】
【ありがとうございます。自分もアクターじゃなくなっても、忘れませんから! それでは最後に現在ドレス出現地の周辺に緊急警報を発令し、封鎖している途中です。近隣の皆様には非常にご迷惑をおかけしておりますが、どうか信じて待っていてください】
【ボクらがあいつを倒して、また平穏な日々を取り戻してみせる! みんなからの応援を待ってるよ! ちなみに、スペシャルゲストも呼んでるから、楽しみにね!】
【自分の最後の戦いを──最後まで見届けてください。絶対に勝ちます。勝って皆さんの平和を取り戻しますから!】
『MARiKA♡チャンネル』
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コメント数:3091
〉は?(絶望)
〉マジで?
〉あの空のやつ、やっぱりドレス関係だったか
〉何とかしてくれマリカーーー
〉バーグ引退ってマ? 嵐馬のファン辞めます
〉相変わらず巻き添えで草
〉みがわりなんでしょ(適当)
〉でもマジかぁ。次で引退とか即堕ち二コマかよ……
〉初の男装キャラだし、貴重なガチ女の子の消失は痛い
〉っモネママ
〉ハーフなのでノーカン
〉東京にいる親戚の心配より、バーグ引退のショックの方がデカいの何とかして
〉不謹慎で草
〉な き そ う
〉ゼスバーグください
〉スペゲスって誰だろ
〉あの特徴的すぎる機体がもう見れなくなるのか。いや、この前見たばっかりだけど
〉妙に印象に残るよな
〉自分はすき
〉戦いぶりからしてフツーのドレスじゃないのは常々思ってたけど、まさか事実とは
〉とにもかくにも、明日がそうなんだろう。俺はしっかり見届けるぜ
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†
《……改めて訊くけど、この戦いを本当に中継しちゃっていいの?》
『構いません。どのみちドレスとの戦いであることに変わりはありませんし、世間の目もこれを見れば大きく変わるでしょう』
作戦実行直前、各々が機体に乗って作戦開始を待つ間、鞠華はこの判断に改めて疑問を抱く。
それはエターナル撃破の様子をいつも通りLSBとして中継する判断を下したことだ。
ただでさえ東京という大都会を舞台とし、戦いを繰り広げなければならない上に、今回のはネガ・ギアーズも同伴。取れ高以前に六機ものアーマード・ドレスを完全に開示するということが許されるのか、甚だ疑問に感じていたのだ。
『支社長さんからも許可をいただいていますので問題ありません。そもそもすでに何度かネガ・ギアーズ機体が動画に移っていますので、今更問題ないとの判断です』
《そんなアバウトな……》
《あんまりそういうの気にすんじゃねぇぞ。一回考え込んだらずっと気になっちまうだろ。作戦にミスなんて許されないんだからな》
《そうだよ~。それに、共闘なんだから後々で誤魔化せるって。ね?》
それぞれが不安げな鞠華を励ましていく中、カタリはネガ・ギアーズ組に連絡を入れる。
「匠さん、そっちの準備は出来てますか?」
《ああ、問題ない……と言いたいところだが、やはり大河の調子は万全ではないようだ》
《もう大丈夫だって言ったでしょ! アタシのドレスだって取り返さなきゃいけないし、それにこの生中継、こっちのチャンネルも増やせるチャンスでもあるんだから!》
「本当に大丈夫? バーグさんからドレスには互換性があるって聞いてるから、無理しなくても他に任せても──」
《だ・か・ら、大丈夫だっての! ほら、さっさとやるわよ!》
カタリに宿る不安の種。大河の体調について、本人は否定を口にするものの、匠曰くでは完治しているわけではなさそうだ。
やる気十分なのは結構ではあるが、それが逆に心配になる。ミスに繋がらなければそれでいいのだが。
『……そろそろ時間です。皆さん、作戦はプランAの通りにお願いします。あと作戦に集中するためにOP後はコメントなどをミュートしておきますので。それでは──』
時間を見やると、作戦開始時刻の午後十二時を示そうとしている。
それぞれが緊張の面もちで時が来るのを待つ。作戦の内容通りに動くイメージを復習しつつ、残り数秒。
──時計の四つの数字が0に統一される。
『作戦、スタートです!』
《ハロー! グッモーニンアフタヌーンイブニナイっ☆彡 戦う女装ウィーチューバー“MARiKA”、ここに見参! みんなお待たせー!》
《チャオチャオー♪ 今日のお昼はカルボナーラでアタシ満足♪ 今日は最初っから本気の黄色担当、モネでーすっ》
《遠からん者は声を聞け、近くば寄ってアタイを拝みな! スケバン・ゼスランマ、推して参るッッ!》
〈マリカーー! 俺らのヒーロー!〉
〈来たああああああああああああ〉
〈モネママ成分補給しました〉
〈あのバケモノ何とかしてくれーーーーー〉
〈全員かっこいいよーーー〉
〈ボクらの東京を取り戻せ!〉
〈今日に限ってはガチのマジで俺らの希望。負けんな!〉
〈Fight together from afar〉
LSBのアバンから早速無数のコメントがサブモニターに流れていく。
今回は大々的に告知をしているためか、よく見ると海外からのコメントも寄せられていた。誰も彼もがこの戦いの行く末を見守ってくれている。
絶対に負けられない戦いはここで決定的となった。そして、このLSBの主役は一歩遅れて声を高らかにあげる。
『──真打ちはすでにここに居るッ! ハローハロー、マイネームイズ“エクリエール・リンドバーグ・ノアン”。ここに推参! 自分の二回目にして最後のご活躍をどうぞ最後まで見届けてください!』
〈相変わらず強個性で草〉
〈二回目にして最後とは悲しいなぁ〉
〈切り札はすでにいるというのも新しいな〉
〈辞めないで〉
『僅か二回目とはいえここまで多くの方に心配してもらえるのは嬉しい限りですよほんと……』
「ははは……。まぁ、全部終わったら最後の配信でお喋りするのもいいんじゃない?」
『あ、それ良いですね。じゃあ、とっとと終わらせますよ!』
アクターとしての自分を応援してくれる不特定多数のコメントで感動しているバーグ。
何だかんだでLSB唯一の女性かつ男装というポジションはやはり強力で、前回のLSB後に投稿された質問返しの動画は中々の再生数とコメント数を誇ったくらいだ。
紅一点という立場は本人も気に入っていたようで、この通り今ではすっかりアクターの一人という自覚を持ってしまっている
そんなアイドルの役目も今日を持って最後。引退した際のことをアドバイスしつつ、最後の紹介に移る。
《なんとなんと、今日の決戦にはボクら以外に強力な助っ人を呼んでるよ! それじゃ、どうぞー!》
《ハァーイ。そこの
〈!?〉
〈!?〉
〈ファッ!?〉
〈だれ?〉
〈悪 夢 の コ ラ ボ レ ー シ ョ ン〉
〈水と油が一つになる……だと……!?〉
このまさか過ぎるタッグは、両方のチャンネルを知る者にとって衝撃以外の何物でもない。
コメント通り水と油のような関係性──もっとも大河側からの一方的な視点ではあるが──だからだ。
そんな双方の歴史に大きな変化をもたらした今回のLSB特別編。敵は同じくして東京上空の歪み、その奥に潜むエターナル。
すでに戦いは始まっている。まずは四機が先制して進む。
《まずはボクとモネさんでエターナルを誘き出すためにあの穴に攻撃。本体が出てきたらヴォイドを吸収させながら引っ張り出す》
《ああ。ある程度近付いたら俺と紫苑が物理攻撃でダメージを重ねて準備までの時間を稼ぐ。それでいいんだよな》
《オッケー♪ それじゃあ、よろしく~》
《うん。さぁ、遊びのはじまりだよ》
目的地への移動中に作戦を復習。先行した四機はそれぞれ二組に別れ、持ち場についた。
作戦の内容は至ってシンプル。穴蔵に隠れる目標を誘き出して攻撃、注意を引きつつゼスタイガとノベライザーによるトラップを仕掛け、一網打尽にするのだ。
この戦いのためだけに造られた特別なドレス、その名も『カンゴク・ロック』。囚人風を意識したパンクファッションをモチーフとした白と黒のドレス。
秘めたる力は
それを纏うゼスタイガは現在、ノベライザーと共に指定位置へのトラップを仕掛けている最中だ。それを終えるまで、鞠華らはエターナルと渡り合わなければならない。
《よし、ここからなら魔法も弾丸も届く。モネさん!》
《あいよー。ドレスチェンジ♪》
ゼスマリカ、ゼスモーネはそれぞれ遠距離攻撃を得意とする形態に換装。魔法少女とガンマンはそれぞれの得物を手に、歪みへ攻撃を仕掛けていく。
火炎と吹雪を浴びせ、弾丸の連射を撃ち込む。すると歪みはゆっくりと動いていたのを急速に加速させ、その大きさを拡大させていく。
そして黒い深淵のような中心から何かが産み落とされる。黒い、人型──否、人が着ているような形をした中身が空っぽの服。
《あの穴、アウタードレスを産み出したッ……!?》
《どんどん出てくる……! 流石にこの量はボクらじゃ厳しいかもしれない》
歪みから産み落とされたのは、レディーススーツのアウタードレス。それ一着だけでなく、他にも様々な服装のアウタードレスが次々と現れてくる。
メンズスーツに煌びやかなタイトスカートのキャバドレス。その服装たちを見て、鞠華は一つのとある法則を発見する。
《もしかして、モネさん、このドレスたちはエターナルの被害者の服じゃないですか?》
《!? ……なるほどー。そう言われれば確かに全部深夜帯に仕事が終わる服装が多い感じだね。奪われた服がアウタードレス化したってことは──》
この予想に百音は納得を示す。現れた服装の傾向を察するに、鞠華の予想はあながち間違いでもないと思ったからだ。
そしてさらに、鞠華が思いつかないことに百音は気付いている。
ボトボトと大量にドレスを産み落としてくる歪みの奥から、一際ゆっくりと現れるドレス。黒いゴシックロリータ風の面影は見た覚えのある形状をしていた。
《“ブラック・ローゼン”……! 大河のドレスまでアウタードレス化してる……!》
インナーフレームが着用するドレスは通常蘇ることはない。だが、理を越えた存在であるエターナルにとって、その常識を打ち壊すのは容易いこと。
目の前に現れたのはつい先日まで大河の下にあったドレス“ブラック・ローゼン”。それがまさかの着る者が存在しないアウタードレス化という形となって再度鞠華たちの前に立ちふさがったのだ。
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