エピローグ

奪衣の使徒

「こうしてまた一つ、世界から文字化の驚異を拭い取り、さらには神牙の力までも手にしたカタリたち。機獣の力は時に、その圧倒的な暴力で困難を砕き、彼らを救うとこのあらすじには綴られる予定です。



 そして神塚美央とその仲間たちとの再会。この約束が叶うかどうかは私にも知る由はありません。ですが──望むことを止めなければいつかきっと、それは成就するでしょう。



 これもまた、不確定で曖昧な言葉ではありますが、ね?




 さて、次に彼らが向かう世界はどこなのか。その答えは──











 深夜十一時。もうじき日付も変わる頃であろう真夜中、電灯に照らされた道を歩くのは都内の会社に勤めるOLと呼ぶべき女性社員。

 彼女は小走りで駅へと急いでいた。理由は明快、もうすぐ電車が出発するからだ。それに間に合うために走り慣れないパンプスで急いでいる。


 ただの日常風景。だが、そんな彼女を追うように一筋の風が吹き抜ける。

 いやに生ぬるいそよ風。それに驚いた彼女は急いでいるはずの足をつい止めてしまう。


 不穏──そう呼ぶに相応しい違和感。当然だが今は夜中。変質者と出くわす可能性も否定出来ない。そんな警戒心が芽生えたために止めた足を再び回す。

 ふとした隙を狙っては不意に現れた。



 電灯に照らされ黒光りする謎の糸束。まるで蛇の如き駆動で宙を這いずり、女性を背後から狙う。

 その存在に気付いた時にはもう襲い。人を丸飲みする程の大きさへ膨張すると、大口を開けて女性を喰らった。


 音もなく蠢く糸束。獲物を飲み込んで膨らんだ部分は徐々に尾の方へと移動。僅か数分の時間を経て女性は拘束から解放された。

 ただ──その姿は先ほどのレディーススーツではなく、下着と手持ちのハンドバックのみという格好。服だけを奪われていた状態となっていたのだ。



 謎の糸束は目的の物だけを回収すると、そのまま次の獲物を狙いに闇夜に溶ける。

これが後に『服だけを奪う変質者が現れる』という内容で都内に噂となるのはもう少し先の話だ。



 それの正体を暴ける者は、その世界に誰一人として存在しないのであるが。











 おっと、これはいけません。私で隠さなければ。



 とまぁ、そんな使命感はさておき、その世界には人々の絶望やストレスをゲートとして現れる謎の自立兵器『アウタードレス』。目的は不明、先のアウタードレスに味方する謎の組織『ネガ・ギアーズ』と呼ばれる存在がいた。



 そんな奴らと対峙するのが『オズ・ワールドリテイリングJP』。其の組織が所有する『アーマード・ドレス』が一つゼスマリカとその適合者である逆佐鞠華。彼女──否、正しくはは動画投稿を生業とする女装少年だった。



 世界を修復するための欠片を求め、この世界へ介入するカタリたち。しかし、不幸なことに三つの勢力が彼らの前へ順に立ちはだかることとなる。



 自らの世界を失った者と、女装という手段を用いて自分の居るべき場所を作り出した者。二人の少年は、世界を滅ぼす意志無き悪意という個性にどう立ち向かっていくのでしょうか。乞うご期待ください。






 カタリ君は小柄で案外華奢な体格なので、意外と似合うのではないでしょうか。こういったフリフリなドレス……ん、誰に聞いているのかって? それは秘密、です。ふふふ……」







 第三章『聖女禁装ゼスマリカ.XES-MARIKA』編

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