第9話~入学~

聖門女子高校入学式当日



折原遥は聖門女子の制服を着て聖門女子の正門の前に両親と一緒に立っていた。


「わたし・・ついに・・ここまで・・きたー」


学校のカバンを胸にギューっと抱きしめ心の中で一人騒いでいた。



合宿後、残り少ない時間を勉強だけに使い、途中で家庭教師を名乗り部活を全力でサボってきただろう片霧陽子が全力でサポートしてくれた。



「お!来た来た、おーい遥ー」


そう言いながら遥一家の前に現れたのは片霧陽子、片霧は両親に挨拶をすると遥の頭をヘッドロックして頭をグリグリし始めた。


「遥、合格出来て先生は嬉しいよ・・大和さんに練習より大事な事があるって真面目に話してさ、部活サボれたし一石二鳥だったよー」


やっぱりそうだったんだと遥は思った。


「片霧先輩、髪型が・・」


「あーごめんごめん、つい嬉しくて、で・・今何て言った?」


片霧は頭を解放しながら嬉しそうに言った。


「髪型が崩れちゃう?」


「その前の」


「片霧先輩?」


片霧は耳が大きくなってフニャフニャモードに突入していた。


「いいねー先輩・・響き最高だな・・遥、一緒に頑張ろうな」


そう言うとそのままの状態で「片霧先輩」を連呼しながらどこかに行ってしまった。



片霧は家庭教師をしている間に折原遥って長いからと途中から「はるか」だけになってしまった。


今まで友達からもそう呼ばれていたし、嫌でなかったのでそのままにしていた。



入学式も順調にすすみ新1年生代表の挨拶の時だった、代表に呼ばれた内川 彩華うちかわ あやかと言う娘が壇上を降りる際に一瞬止まり遥と目が合った気がした。


入学式も終わり、両親とも別れ1Dと言う教室に向かった。


席順は黒板に書かれていて一番先頭になっていた。


「あいうえ音順なんだ・・あいうえ居なくて「お」から始まるんだ・・」


遥は次の人と横に座る人の名前を見ていた。


「後ろが貝塚舞かいづか まいさんで横が椎名夏樹しいな なつきさん仲良くなれるといいな」

そう言いながら席に着くと後ろの席に片側に三つ編みしてメガネをかけ読書をしている貝塚がいて、遥は意を決して振り向き。


「始めまして、前の席の折原遥です、よろしくね」


急に振り向かれて後ろに引いた身体を戻しながらずれたメガネを戻し。


「貝塚舞です、よろしくね」と慣れて無さそうな笑顔を見せた。


そして挨拶が終わりかけで割り込む声がした。


「丁度よかった挨拶中で横の席の椎名夏樹です、折原さんと貝塚さんねよろしく」


そう言って席に座った。


始業のチャイムが鳴り全員が着席し静かにしていると担任が現れた。


「今日から担任になる南雲睦美だ」


そう言うと淡々と実務を始めた。


午前中は学校の規則や寮生活について説明があり午後から寮に案内され1部屋2名の同学年の共同生活だった。


遥は「誰と同じ部屋になるのか」とドキドキしていたが遥だけ1人残された。


「折原遥、手違いがあってお前はこっちだ」


南雲先生についていくと建屋は同じだったが1つ上の階の部屋の前に来た。


遥は「あれ?このドアは何処かで・・」そう思っていると。


「折原遥、当分ここで我慢してもらうぞ」


そう話し南雲がドアをノックするとドアが開き中から「ちゃんと」服を着た片霧が出てきた。


「遥ー朝振りーと」言って遥を抱きしめた。


遥は南雲が「我慢してもらうぞ」と言った意味がようやく理解出来た。


「片霧先輩、痛いですよー」


「あーごめんごめん、入学してから同居者の入れ替わりが激しくて、ようやくまともな人が来てくれた」


遥は「まともな?」って今まで何があったかはあえて聞かなかった。


その状況を見て南雲が


「片霧、合宿の時も同じ部屋だったんだろ、今日から頼んだぞ」


「南雲先生、了解です」


そう片霧が言うと南雲は行ってしまった。


遥が部屋に入ると、数ヶ月前と何も変わっていなかった、遥が来るのが分かっていたのか遥のスペースだけは綺麗になっていた。



「遥、南雲先生が担任だなんて・・ついてないな」


「皆でも話をしていたんですが、南雲先生って正直怖わそうな先生です」


「怖いなんてもんじゃない、ありゃ鬼だよ、もし遥が来るのを知らなかったら俺は全裸でお迎えしてたぜ」


それを聞いた遥は思い出し手を上げ。


「片霧先輩・・部屋のルールの延長を」


先輩と言われ危なくフニャフニャモードになりそうになった片霧が元に戻り。


「わーたわーた、可愛い後輩の為だ頑張って下着だけは履く」


「何で頑張ってなの?」と突っ込みたかったが嬉しそうな片霧を見てそれはやめた。



入学者決後の聖門女子理事長室



部屋には門松総理事長、大和美佐、南雲睦美の3人がいた。


「結局、即戦力候補は内川と折原の2人でしたか」


熱いお茶を啜りながら門松が言うと。


「基準値をギリギリクリアーしてるのが数名いますので、それが上がってくれれば・・」


入学者名簿に目を通しながら南雲が言うと嬉しそうに大和が。


「いいんじゃないレート60オーバーが2人もいるし、去年は数で今年は質って事で・・大和は侵食対象が減ったのが悲しいけど・・」


少しすると門松が思い出した様に机からメモを取り出し


「他校じゃが鯨森に1名、開徳に2名、九南に1名、開徳と九南は分からんが鯨森は蓮見姉妹の末っ子が入学したそうじゃ、それと菱条と真城はまだ公開していない、神龍宮に関しては公開していないから分からん」


国の所属になる神龍宮以外は能力所持候補者の他校への公開を義務付けされていた。


蓮見はすみ姉妹の下にもう一人いたの?しかも能力所持者で?」


南雲は驚いた、姉妹、親子での事例はあったが、3姉妹となると過去に事例がなかったからだった。


南雲が驚いていると部屋の電話が鳴り門松が電話に出た。


「はい、聖門女子の門松ですが、はい・・菱条が1名で真城が4名ですな・・了解しました」


門松が電話を切ると南雲が


「真城が4名って・・どうやって」


「お金じゃない、それと何処の学校も関東より上は調査してないし、北海道に新設された真城にとっては宝(身体)の山じゃない」


と大和は僻みっぽく言った。


「そうじゃな、東側にある学校は(聖門、鯨森)人員的な事もあって近場ばかりを探していたし、未開拓地で4名ならありえない話でもない」


門松は冷めたお茶を一気に飲みながら言った。

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