第4話~合宿~
遥は案内図を見ながら聖門女子高校に着いた。
そこで見たのは白をベースにした校舎が光輝いていた。
まだ受かってもいないのに「ここで過ごすのか」と受かる気満々だった。
目をキラキラさせながら校舎を見ていると正門で掃除をしている老人を見つけ早足で近づき元気な声で。
「すいません、学校の方ですか?」
突然大きな声をかけられた老人はビックリして
「そ、そうですが・・うちの生徒さんでは無いようですが何か用事ですか?」
遥は合宿参加の案内を取り出し老人に見せた。
「あーなるほど そうしたら案内するので着いてきてください」
遥は丁寧な老人にまた元気な声で
「ありがとうございます」
老人についていくと何処を見てもゴミ1つない綺麗な道と整えられた花壇などが目に入ってきて。
「用務員さんがいつも綺麗にしてるんですか?凄いです」
とつい言ってしまった。
「わしは暇だしこれくらいしか学校の役に立てんからのぉーふぉふぉふぉ」
「ここの学校を見たら、私の通っている学校なんてゴミ屋敷ですよ」
「ゴミ屋敷とは、これはこれは」
「もし通うことになったら汚さないようにしますね」
そう言うと老人は寂しそうな声で
「日頃頑張ってる生徒達の視覚だけでもストレスが無くなればわしはいいんじゃが」
そんな会話をしていると何かをしている建屋に着きそこには弓道場と書かれていた。
遥が建屋を見ていると老人が入り口から
「おーい、
少しするとショートカットで首の後ろだけ長い女性が出てきて老人に。
「こんにちは
それを聞いた遥の頭は真っ白で顔を真赤にして固まってしまった。
「ふぉふぉふぉ例の合宿に参加しに来た娘さんを連れてきてのぉ」
そう言いながら門松総理事長は遥の方を指差した。
遥は2人に見られてどうしていいか分からなくなって泣きそうになっていたところに聞き覚えのある声が聞こえてきた。。
「お!折原遥じゃないかー」
遥の目線に片霧陽子が目に入ってきて「片霧さん助けて」と言いたかったが口がパクパクするだけで声が出なかった。
「何だ片霧の知り合いか?」
「大和さん、こないだ話した天羽先輩とのやつですよ」
「あぁなるほど、部活サボる口実の天羽の時のか」
「サボりじゃないっすよ、大和さん」
「じゃーこの娘はお前に任せるのと・・何で天羽は先輩で私は大和さんなんだ?先輩と呼ばんか1年生片霧陽子」
そう言った後、遥に近づいて
「私は弓道部部長の
と挨拶をして大和部長は道場に戻ってしまった。
門松総理事長に平謝りして別れた後に、片霧に1週間お世話になる寮や食堂その他を案内してもらい何と片霧と同じ部屋に寝泊りする事になった。
「用務員?そうだよな、おっちゃん朝から晩まで掃除してるからな」
笑いながら片霧が言うと遥はビックリした声で
「お、おっちゃん?」
「入学以来おっちゃんって言ってるけど?そうだな1年前に折原と同じく合宿に来て同じ事をやってさ」
片霧は嬉しそうに続けて
「その時に用務員さんって言わないで、おっちゃん合宿に来たんだけどって言ってさ」
遥は片霧さんの敬語の基準が理解出来なかった。
荷物を部屋に置きジャージに着替えると片霧と共に弓道場に戻って来た。
「全員集合」
大和部長が号令をかけると10数名程が集まった。
「えーと今日から2週間合宿の手伝いをしてくれる折原遥さんだ、皆よろしく」
そう紹介された遥はお辞儀をしながら
「折原遥です、2週間よろしくお願いします」
すると皆の拍手で迎えられた
「来年の1年候補は礼儀ができてるじゃないですか」
一人適当に拍手している片霧が言うと
「お前が言うな今年の1年」
大和部長が突っ込む様に言うと皆が噴出して笑い出した。
「まぁー部活に入るかどうかは別として、自分がやりたい事が見つかればやればいいさ、そしたら折原さん今日は初日だし片霧について適当に見学しててね」
「えーまじっすか、見られると緊張が・・」
「お前に緊張の二文字は無い!」
そう言うと片霧の頭にチョップをして大和部長は行ってしまった。
遥用に椅子を用意してそこに座って見ててと言った後に片霧が小さな声で
「こないだの天羽先輩との件はここでは私と大和さんしか知らないから内緒やで」
そう言うと「よっしゃー的射抜くところ見せちゃる」と言い練習を始めた。
練習を開始すると煩かった片霧が静かになり猫背気味だった背も真直ぐになり素人の遥には分からなかったが
遥が見とれてると後ろから大和の声が聞こえ振り向くと
「あれで真面目に審査会出れば今頃は有段者なんだよな、もったいない」
「そうなんですか?弓道にも段とかあったんですね、勉強になります」
「弓道は真似してもあいつの私生活をマネしちゃ駄目だからね・・って言っても弓道に関しては私も含めてうちのメンバーのレベルじゃマネすら出来ないけど」
「片霧さんってそんなに上手いんですか?」
「大会に出てれば全国区ってところかな」
片霧の方に「凄いんですね」と言いながら振り向こうとした時遥は見てはいけない物を見てしまった。
耳がダンボの様に大きくなって身体がフニャフニャになっていて的を外している片霧がそこに立っていた、そしてその状態のまま2人の所に歩いてきて
「今、もしかして片霧の事・・褒めてた?」
少し間をおいて遥と大和が顔を合わせて
「なぁマネしたくないだろう?」
「はい 大和さん」
それを聞いた片霧が元の身体に戻り突っ込んだ
「えーなんすかぁそれー」
「片霧今日はGGがあるかもしれないから先に上がって折原の世話でもしてな」
「ほーい」
「はいだろう」
「はーい」
上下関係の無い会話が成立している理由は、遥が知るのは大分先の話であった。
寮に戻り改めて部屋を見ると、部屋には冷暖房、ユニットバス、大き目のワンルームにベットが2つある感じの部屋だった。
片霧が先にシャワーに入り、イチゴ牛乳と書かれたビンを持ち何も着ない状態で遥の前に現れた。
遥は飲んでいた物を噴きそうになり「せめて下着くらいは」と言うと
「ん?折原も女でしょ?じゃーいいじゃん、やってみるといいよー締め付け無いし開放感あって健康にいいから」
そう言いながら手にしたイチゴ牛乳を飲み始めた。
大和が言っていた私生活はマネしちゃ駄目だからねーの意味が理解出来た気がした。
それでも遥がいる間だけはと説得して下着だけは着ける様になった。
その日の深夜、ドアの開閉音で目覚めた遥は横のベットに片霧がいない事に気づいた。
目が覚めてしまって寝れずに数時間後ドアが開き片霧が帰って来た。
遥が起きると片霧が制服姿で
「ごめんごめん、起こしちゃった?深夜だけどシャワー使うね」
そう言うとシャワーし始め、そしてまた何も着ないで出てきて
「ごめん、疲れたから寝るわ」
そう言いながらベットに倒れて寝てしまった。
遥は布団を片霧にかけ、そして自分も寝る事にした。
それから1日置きに片霧は夜な夜な出かけて行った。
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