美醜の二国

カワセミ

美醜の二国

 ある顔のいい旅人は一本の道を進んでいた。道の途中で旅人に会ったので

「この道はどこに繋がっているのか?」

と尋ねた。男はこう答えた。

「この先は道が二つに分かれていて、右の道はB国、左の道はU国に繋がっている。」

「その二国はどういう国だ?」

「B国は美しいものだけを集めていて、U国は醜いものばかりを集めているという話だ。領国は隣接しているので、U国の美しいものやB国の醜いものは隣国に送られるとも聞く。住人に関しても同様で、B国には美しい顔の者、U国には醜い顔の者が集められているらしい。B国から聞こえてきた噂ではB国の領主は一生美しくあり続ける術を心得ているらしく、B国の住人は一生美しいままであるらしい。」

旅人は礼を言って先に進んだ。

分かれ道に着き、右の道へ進もうとすると、道端から一人の老人に呼び止められた。

「そこの方。B国に行くおつもりですか?」

「ああ。そうだが。」

「B国の主もU国の主も旅人に対して住人にならないかと誘いをかけますが、同意をしてはなりません。どちらの国の領主も執着心が強く、同意すれば二度と国から出られはしませんぞ。私の友人も同意をした為にB国からU国に移され、今も国から出ることはできていません。」

「旅に拘りはないし、B国にいれば、一生美しくあり続ける事ができると聞いている。」

「確かに一生美しいままではありますが、しかし…」

「ならばそれでいい。」

旅人は老人の話を遮って、先に進んだ。

 B国に入ると旅人は早速領主に気に入られ、住人にならないかと誘われた。旅人は自分が一生美しいままである事ができるかを尋ね、肯定の返事をもらったので、同意した。

 その後、旅人は自身の望み通り、B国から出ず美しいまま人生を終えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

美醜の二国 カワセミ @kawasemi1228

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る