生きてる意味を教えてよ

渋沢慶太

第1話

真っ白な部屋に私は居た。

何もかもが白くて怖い。

机も椅子もベットも本棚も本の背表紙も。

白いから汚したくない。

私はふと、尻餅をついた。

白いから汚したくない。

床も白い。

怖くて背中を壁につける。

壁が背中に当たり、右手にヘラがある。

私は無意識に体を立たせる。

ヘラは壁に引き寄せられる。

ヘラには何もついていないのに、壁には色がついていく。

私が動かなくなると、壁に絵が書いてあった。

その絵を見ると、私は再び尻餅をつく。

その時、私の心は汚れていた事を知る。


私は屋上に立っていた。

「なぁー、さっさと来いよ」

私の声が聞こえる。

後ろを振り向くともう1人の私が女の制服を引っ張っている。

「やめてよ」

女の制服を着た人間が喋る。

それは、有田の声だ。

これは有田が私の彼氏を奪った時この事だ。

「たんたんを返してよ」

彼氏の事をたんたんと私は呼んでいた。

「たんたん。私はたんちゃんって呼んでる」

「お前がたんたんを奪ったんだ」

「言いがかりだよ。あなたに魅力がなかったんじゃない」

「たんたんはお金に困ってたの。両親も早くに死んで。お前はここの高校じゃお嬢様。それを都合よく」

「何か勘違いをしている。誰もたんちゃんを彼氏にするって言ってないじゃない。彼は私の館に働いているだけよ」

「そう言って、たんたんを手懐けて」

「でも、もういいの。たんちゃんはもう飽きちゃった。やるよ。あなたに」

「たんたんの悪口は言わないで」

「結局は庶民って感じだったわね。普通の子」

「やめて」

私は無理矢理有田を押した。

有田の背中はアスファルトと平行だった。

9.8の重力が広い面積にかかる。

物体は加速する。

物体がアスファルトとぶつかると轟音が校舎に響く。

私は尻餅をついた。

無理矢理体を起こしてアスファルトを見ると、直径60cmの血の円が出来ていていた。

階段からも足音がしてきた。

私はアスファルトを垂直に落ちていく。

スカートがめくれそうだがどうでも良かった。

もう、なんでも良かった。

たんたんに会いたい。

頭に何故かたんたんの顔が。

たんたんに会いたい。

私はアスファルトにぶつかった。


私は目を開く。

壁にはたんたんがいっぱい描かれていた。

笑っている顔も、悔しくて泣いている顔も。

でも、無情にも壁は赤く染まっていく。

それは、飛行機雲が消えていくように。

部屋が赤く染まっていく。

床が赤くなる。

赤は膝、胸、そして、首の高さに。

私は生まれる前の赤ちゃんみたいになる。

天井が赤くなる。

私は知った。

これが罪なのだと。

これが世の中だと。



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生きてる意味を教えてよ 渋沢慶太 @syu-ri-

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