(3)

 「2年4組、全員出席確認できました」

また切り替えの音みたいなのがして

「終了します」

という言葉で画面がまた青一色に戻った。

 (!)

 突然一斉にまた踏切みたいな警報音が鳴った。

 何人かが反射的に机の上の端末を掴む。

 私も端末を持ち上げると、画面には『メールが届きました』とあって、メールマークが点滅してた。

 (・・・・・・)

メールマークに指で触ると、画面が切り替わって、受信メールの一覧が。

 1件だけ来ている“@国王選挙”に触ると、メールは開いて


~今から本日の国王選挙を開始し、30分以内に国王名を送信せよ~


とだけ書いてある。

 「え?」

あまりにも急で一方的なメールの内容に驚いてしまう。

 みんな私と同じ感覚だったようで、ちょっと左を向くと隣の佐藤くんも強張った顔をしてる。

 それにしても、今すぐ選挙しろと言われても、やり方も決まってないし、どうやれば・・・

 「みんな」

その時、途方に暮れそうだった私の目の前で藍川くんが立った。

 藍川くんは身体ごと後ろに向きを変えて

 「呆然としてても仕方ない。やることをやらないと」

と言いながら前の方へ歩いて行く。

 「国王選挙とやらをしなければいけないみたいだから、普通の選挙のようにまずは立候補をしたい人がいるかどうか知りたい」

そう言って、軽く顔を左右に振って部屋全体を見回す藍川くん。

 「・・・立候補はないということか」

藍川くんはちょっと首をひねって

「そうすると、くじ引きとかで決めるのか?」

みんなに訊ねるようにしてから

「分かった。やりたくないのは俺も同じだけど、誰か国王にならないといけないなら、出席番号も最初だし今日は取りあえず俺がやってもいい」

と言って、またみんなを見回す。

 「・・・藍川では駄目だという意見もないようなので、俺でいいという人は拍手でもしてくれ」

物音一つしない中、藍川くんの声の余韻が響いているような状態が数秒続いた。

 左の方からパチパチと音がしたので、そっちを見ると、森さんだった。

 「誰かに決まんないとヤバイんだろーし、藍川でいいんじゃないのー」

私と同じように10数人が森さんを見てて、森さんのその一言で、パラパラと拍手は増えていった。

 「・・・じゃ、みんなの承認ももらえたという感じなので、今日は俺が国王をやります」

藍川くんが言うと、またパラパラと拍手が起こった。


 「国王の名前を送信するということなので、田月くんと野村くんに立ち会ってもらいたいんだけど」

「・・・」

「・・・」

藍川くんが目の前に座ってる田月くんと野村くんに声を掛けると、二人は無言で立って藍川くんの左右に移動した。

 藍川くんが端末を操作して、それを二人が見ている状態が数分続いてけど

「!」

またさっきの警報音。

 端末のメールマークに触ると“@国王選出”“@法の制定”というメールが一度に2通届いてた。


8月1日 @国王選出

~藍川優秀を国王に選出~


8月1日 @法の制定

~国王藍川優秀は法を制定し、本日中に内容を送信せよ~

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