110話 HUNTER研究所 ~殺人~
「やめ⋯⋯て」
震える声で喋る私の言葉を無視し、クリスティは話し始めた。
「ドルタ、あなたはいいでしょう? マールがいるからここに残れる。でも私は違う! あんな事をした私を誰が歓迎してくれるのです?! 私にはこの方法しかないのです⋯⋯」
クリスティが話終えた所で、誰かがクリスティの背後から肩を掴んだ。
シュパッーー
「な⋯⋯ァ⋯⋯」
それは一瞬の出来事だった。
クリスティの仲間、怪我をしていたあの男がクリスティに近付いた瞬間、振り向く暇もなくナイフで男の首を切り裂いた。
「「「き、ぎゃあぁぁぁ!」」」
近くで見ていた住人達が騒ぎ立てる。
倒れる男を見て気が動転したクリスティは、後ずさりながらナイフを地面に捨てピストルを取り出した。
私はクリスティの動きに合わせて後ずさる事しか出来なかった。
「クリスティ! やめろ!」
必死に叫ぶドルタの声も聞こえていない。
パァンッーー
クリスティは無作為に近くにいた住人を撃ち殺した。
「やめて、クリスティ!」
羽交い締めを食らっている私は首を何とか動かし、クリスティに訴えかける。
しかしクリスティの指は止まらなかった。
パンーーパンーー
次々と住人達を殺していった。
「おねえちゃん!」
そこへ駆け寄って来たのはヒナだ。
そしてクリスティが持つピストルの銃口がヒナへと向いた。
「やめて! お願い、やめて! ヒナ、逃げて!」
私は必死にクリスティの腕を掴み訴える。
クリスティの顔は強ばり声が耳に入っていないようだ。
「いい加減にしろ、クリスティ。子供はダメだ」
ドルタがこちらに駆け寄り、トリガーに指をかけるクリスティの手を掴んだ。
「ヒナ⋯⋯!」
イザリスだ。
ヒナを見つけ駆け寄り銃口を向けているクリスティに向かって⋯⋯。
パァンーー
イザリスの撃った銃弾クリスティの肩付近に当たった。
致命傷ではない。
その反動でクリスティの腕が緩み、その隙に私は腕から脱出した。
パンパァンーー
クリスティは一瞬体勢を崩したがすぐに立て直し、銃弾を放った。
その瞬間ヒナを抱きしめていたイザリスの手は離れ、地面に倒れた。
「イザリスーー!」
「おかあ⋯⋯さん?!」
倒れたイザリスの体からは大量の真っ赤な血が滲み出て、それが地面に広がっていく。
そして解放された私を見ると、プリンとツキは一斉に銃を構えクリスティ目掛けて勢いよく放った。
ドドドドーーピュゥンーー
ババババババーー
一斉に放たれた銃弾はクリスティの体に無数の風穴を空けた。
「⋯⋯」
カタッーーバタ。
クリスティの手は力が緩み、持っていたピストルは重力で地面へ落下した。
それと同時に、関節を曲げる事なく真っ直ぐに仰向けで倒れた。
クリスティの体から飛び散った返り血が、私の服や顔に付着する。
「大丈夫か、テン?!」
「う、うん」
ツキは無事な私を確認すると安心して、クリスティを担ぎ上げた。
「こいつ、街の外に投げてくるわ」
グサッーーバタッーー
何が起こったのか理解するのに時間がかかった。
気が付くとクリスティを担いでいたはずのツキが倒れていた。
クリスティの手には銀色のナイフが。
私は理解したのと同時に、怒りに任せクリスティの頭蓋骨を何度も撃ち抜いた。
「⋯⋯ツキっ!」
ナイフは腰に刺さり血が溢れ出ている。
「運ぶの手伝って!」
私はプリンと二人でツキを医者の所に運んだ。
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