84話 乾いた大地 ~至福のひととき~「★」

「随分南に来ちまったが、ここからどっちに行けばいい?」



 プリンがそう言うとツキは難しい顔をした。



「うーん、とりあえずあっちはもう行けねぇ。西から迂回して北に行こう」



 そう言って指さしたのは、私達が走ってきた方角。

 あの巨大生物のせいで地割れを起こしているため、元来た道には戻れない。


 私達は仕方なく一度西へ行き、再び北を目指し街へと赴く事にした。



「とりあえず腹減んねぇ?」



 そう言い出したのはツキだ。

 騒動があったせいで空腹の事なんて忘れていた。



グゥルルルーー



 空腹を思い出した私のお腹は、殺風景な荒野に鳴り響いた。



「ハハッ! じゃあそこら辺でキャンプしようぜ」



 ツキはあの小馬鹿にするような笑いでそう言った。

 でも今は自然と腹が立たない。

 こうして、ゲームの世界でもう一度ツキに出会えたから。


 その鼻につく笑いですら、幸せに感じる自分がいる。



「ここで休むぞ」



発見 メディックのガレージ EXP270



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 そう言ってプリンが見つけたのは、長年放置され屋根が崩落しているガレージだ。

 ガレージなのかただの小屋に車が突っ込んだのか定かではないが、そのガレージの中には、ボンネットが外れ中身が露出している、黄色の丸みを帯びた車が捨てられていた。

 その周りには、鉄やらアルミやらが散乱している。

 作りが雑とも言える、木の板が重ねられて作られた壁の隙間からは、風に乗り砂が舞い込んでくる。




「あ、これ。ゲームにあった防具改造するやつじゃない? まだ使えるかな? あ、軍帽もあるよっ!」

「おぉ、この世界来てからあまり見なかったが、こんな所にあったのか」



 壊れた車に隠れて防具作業台がある。

 どうやらまだ使えそうだ。



「これならテンでも出来るんじゃねぇか?」



 プリンのその言葉に思わず笑みが零れる。

 その作業台に近付く。



「ちょっとやってみる」



 ゲームと同じように作業台の前に立ち、改造したい防具を乗せる。

 今装備しているメタルアーマー。装備を外し一つずつ作業台の上へ。



「まずは体から⋯⋯」



 作業台の上に防具を乗せると、目の前に半透明のウインドウが現れた。

 どうやらこれを改造するには鉄が必要のようだ。


 鉄なんて持っていない私が困っていると、ふと画面下に目がいく。


 分解。

 これをすれば鉄が手に入る。


 私はすかさず装着する物以外の全ての防具を分解した。




鉄24 粘着10




 幾つかの素材が手に入ったようだ。



「よし!」



 さっそく改造だ。

 項目は幾つかあるが、現在の鉄の量では一段階上げるので精一杯。


 ガードメタルアーマー。

 防御力が少し上昇するみたいだ。


 思ったより簡単で改造と分解の項目しかなく、ワンタッチで思いのままの改造が出来る。

 銃の改造はまだ一人じゃ出来ないけど、これなら一人でも出来そうだ。



ガシャーーガシャーー



 全ての部位の改造を施し満足した私は、何とかこの作業台を持ち歩けないか考えた。



「ね、これインベントリ入んないかな?」

「はぁ? 無理だろ」



 ツキが即答する。

 それが当然の反応だと思う。

 少し持ち上げただけでもその重量は半端じゃない事がわかる。


 それでもどうしても持って歩きたい。

 これがあればいつでも防具を改造出来る。



「ね、手伝ってよ! インベントリに入れるの!」

「はぁ~しゃあねぇな」



 嫌々ながら手伝ってくれるツキ。



ガポッーー



 持ち上がった。



「ちょ、ちょっと待って。インベントリ出す」

「おい、出しとけよ」



ガタンーー



 私が手を離した隙に再び地面へ。



「もっかい行くぞ」

「んーー!!」



 精一杯の力を出し作業台を持ち上げた。

 そして半透明のインベントリ内へ投げ入れた。



「ふぅ~」

「ふぅじゃねぇよ! ったく⋯⋯」



 なんだかんだ行って手伝ってくれるツキ。

 これでいつでも防具を改造出来る。


 私は満足げに地面に座り込んだ。




「ボロいけどいいね、ここ」



 私は独り言のようにそう言うと、サバイバルグッズの中の焼肉セットを取り出し、小屋の中心に設置した。



「お前いいもん持ってんな」

「うん、プリンがくれたんだ!」



 私は笑顔でそう答えると、ツキは網の上にどこで入手したのか肉を次々と並べ始めた。



「だいぶ前に狩ったイノシシの肉だから、腐ってるかもしんねぇけど」



 そう呟きながら。


 ぶっちゃけ、こんな世界なんだし多少腐ってても誰も文句を言わない。

 ご飯が食べれるだけで幸せだよ。



ジュゥーー



「ん~いい匂い!」



 こんな世界でイノシシ肉とか贅沢だよね。

 目の前に並べられたイノシシ肉は、網目に沿ってこんがりと焼き色が付いている。

 煙が昇り食欲をそそるいい匂いがする。



「いっただきまーすっ!」



 私は勢いよくその美味そうな肉にかぶりついた。



「どうだ? うまいか?」



 ツキのその問いも無視するかのように、夢中でイノシシ肉を頬張る。

 お腹が減っていたせいか、美味さが際立っている。



「ふっ⋯⋯うまいみてぇだな。じゃあ俺も! プリンも食えよ」


「あぁ」



 私達は目の前のイノシシ肉に、取り憑かれたようにむしゃぶりついた。

 そして、あっという間に網に乗せられたイノシシ肉はなくなってしまった。



「お腹いっぱーい!」

「おう、満足だな」



 私は、木の破片が散らばりボロボロの床だという事を忘れ、そのまま腕を横に伸ばし倒れ込んだ。



「食ってすぐ寝れば太るぞ~」

「うっさい!」



 そんな私達のやり取りに、プリンが珍しく声に出して笑った。




 ふふっ⋯⋯今、だいぶ幸せだなぁ。


 他愛もない会話。

 今はそれが幸せに感じる。

 私の口元は自然と緩み笑みがこぼれた。


 先程の巨大生物の事など忘れ、私達は至福のひとときを過ごしていた。











後書き

ーーーーーーーーーー

名前 テン

   レベル18


武器 改造威力Hitrangeヒットレンジ10mmピストル

     →命中率と飛距離に加え威力も強化した


防具 ライト付きヘルメット(E)

           →DF(0) RD(1) EN(1) W1

   新生VULTジャンプスーツ(新品)(E)

           →DF(5) RD(20) EN(5) W1

   ガードアーマー(右手)(E)

           →DF(5) RD(2) EN(2)・W2

   ガードアーマー(左手)(E)

           →DF(5) RD(2) EN(2)・W2

   ガードアーマー(体)(E)

           →DF(9) RD(5) EN(4)・W6

   ガードアーマー(右足)(E)

           →DF(6) RD(3) EN(3)・W3

   ガードアーマー(左足)(E)

           →DF(6) RD(3) EN(3)・W3


▼現在能力▼


Ultimateアルティメイト Powerパワー 『4』

Newdaysニューデイズ 『5』

Inspiインスピrationレーション 『7』

Qickvartsクイックバーツ 『9』

Unknownアンクノン Lackラック 『3』

EverNeverエバーネバー 『5』


▼習得済スキル▼


Bagpackバッグパック

 ランク1 持ち運べる重量20増加

Lockpickロックピック

 ランク1 BerryEasyの鍵を解除できる

・ランク2 Easyの鍵を解除できる

Hideハイド Enemyshootエネミーショット

 ランク1 V.A.R.T.S.バーツ使用時物陰の敵を撃てる。精度減少

Sunikinguスニーキング

 ランク1 歩く時の足音を軽減する

Bloodブラッド

 ランク1 スチムパックで40%回復、RADアレイで40%除去

Extremeエクストリーム

 ランク1 体力20%以下で全能力20%上昇

Specialスペシャル

 ランク1 ハンドガンの威力20%上昇

・ランク2 ハンドガンの威力40%上昇

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