72話 ブリットン警察署 ~マールの特技~

ド~ンーード~ンーード~ン



 私達は事前にマールから話を聞いていた。

 3つ目の音が鳴ったら出ても大丈夫だと⋯⋯。

 時間は1時間しかない。みんながご飯を食べ終わる時間までに、入り口の扉を開いて外へ出なくてはいけない。



「よし今だ、扉を開けろ」



 私はプリンの合図と共に鍵穴に鍵を当て、カチャカチャと試みた。



「あ、あれ?」

「どうしたんだ?」

「鍵が⋯⋯合わない」



 私が鍵開けに苦戦しているとマールが手を伸ばしてきた。



「見せてッ!」



 マールはパッと見て鍵穴と鍵の種類を言い当てた。



「多分これだよォ。早くッ!」



 私はマールの言う通りの鍵を鍵穴に当てた。



カチャーー



 するとすぐに扉が開く音がした。



「でかしたぞ、マール」



 プリンはそう言って先頭をしゃがみながら進んだ。


 マールの思わぬ才能が見れたかもしれない。

 私はそう思いながら、プリンとマールに続き進んだ。



「こっちだよ!」



 牢屋の扉を開けると二手に別れている廊下に出た。そして右には昇り階段が、左には降り階段があった。

 私達は迷わず右の昇り階段へ進んだ。



「音を立てるなよ」



 私は唾を呑んだ。



カタッーー



「おい、音をたてるなっつったろうが」



 プリンは振り向き小声で私達にそう言った。



「ご、ごめん」



 プリンはゆっくりと階段を上り、私達もそれについて行った。

 すると、螺旋階段を上った先に鉄で出来た扉を発見した。その先からは話し声も聞こえる。



「おかしい、今はお昼だからここに人がいるわけないよォ」



 マールはそう言うと背伸びして、鉄扉の上の方についている小窓を覗いた。



「おいマール、よせ」



 プリンは、鉄扉に手をかけ背伸びしているマールの服を引っ張り元の位置に戻らせた。



「見張りじゃないよォ。もうすぐいなくなると思う。あいつらがいなくなったら一気に扉の先に行くよッ!」



 マールはそう言うと再び背伸びをして小窓を覗き込んだ。



「よし、仕方ねぇ。今はマールの言う通りにするんだ」



 そう言って下ろしていた腰を上げ、壁に寄りかかり小窓の外を横目で見た。

 プリンは手に持っていた銃を肩まで掲げ、その時を待った。


 いざとなったら戦う気なんだろう。私も準備しなきゃ。

 そう思って、腰につけていたホルスターに手をかけ、マールの指示を待った。




 扉の向こうの話し声が小さく聞こえてきた。



「ねぇ、あの子達本当に殺されるのかしら?」

「あん? クリスティがそう言ったんだ。違いねぇ」

「でもさぁ、殺す必要ないと思うのよねぇ。マールだっているんでしょう?」

「あいつは⋯⋯裏切ったんだ、忘れろ」

「⋯⋯まだ信じられないのよねぇ。あの子が裏切ったなんて⋯⋯」

「⋯⋯いいか、もうこの話は終いだ。どうせあいつらは明日殺されるんだ」

「⋯⋯わかったわ」

「ふん、飯行くぞ」



 私達は殺される⋯⋯。

 明日ここの人達に殺されるなら、今ここで戦った方が断然まし!

 第一私達は何もしてないし。マールだって裏切ったわけじゃ⋯⋯。



「⋯⋯あいつらはいなくなったみたい。行くなら今だよッ!」



 マールがそう合図するとプリンは静かに鉄扉の取手に手をかけた。

 私は二人の後に続き喉をゴクッと鳴らし一歩踏み出した。



キィィィィィーー

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