本編 ~ 第七章 ~
63話 ブリットン警察署 ~来る者拒まず~
ドヒュゥンーードドドドーーピュゥンーーバババババーー
「中へ入れ!」
発見 ブリットン警察署 EXP250
スタミナが限界だった私達の前に、堂々とそびえ立つのは警察署だった。
編み目のフェンスの向こうにある、横にも縦にも長いその建物。
建物とフェンスの間には、背の低い石造りの防壁が3つ並び、それぞれ中には警備しているのであろう人が凛と立ち尽くしていた。
アサルトライフルを背負い、その手にはスナイパーライフルを斜めに持っていた。
逃げ入るようにして中に飛び込んだ私でも、パッと見で圧倒されるほど凛としていた。
警察署の中に勢いよく倒れ込んだ。
すると、すれ違うように警察署の中から大勢が外に向かい、私達を追いかけて来ていたあいつらに、恐ろしいほどに銃を乱射し追い払ってくれた。
「よかった⋯⋯」
私の表情は、疲れながらも思わず笑みが浮かんだ。
「大丈夫?」
ひと騒動終えた警察署の中では、慌てたように近くにいた女性が駆け寄ってきた。
物凄い勢いで飛び入って来た私達に驚いたのだろう。
艶のあるブロンドの綺麗な髪を後ろに緩く束ね、細身で短めのキャミソールから露出する肌は、透明感があるが健康的な肌色でとても美しい。
迷彩柄で体に合わない少し大きめのズボンが似合っている。
つり目でナチュラルメイク、薄いピンクの唇⋯⋯女の私が見ても思わず見とれてしまう程に綺麗な女性だ。
「あ、ありがとう」
急に飛び込んできた私に、手を差し伸べてくれたその女性に、精一杯の敬意を払ってお礼を言った。
「私はクリスティ。よろしくね」
その女性の手を掴み、立ち上がりながら私も名乗った。
それにしてもこの人達はNPCなのかな? そういう疑問を横にいたプリンがすぐに解決してくれた。
「なぁ、あんたらプレイヤーか? 見た所暮らしにゃ困ってねぇみたいだけどよ」
するとクリスティはプリンの問いに、これ以上ないくらいの綺麗な笑顔で答えた。
「えぇ、そうよ。私達はみんなプレイヤーなの。お互いに協力し合ってここに住を置いたの。あなた達はどこから来たの?」
「私達は⋯⋯」
クリスティが話終わり、私はすかさずその問いに答えようとすると、プリンが片手を私の前に出し、喋るなと言わんばかりの顔をして話始めた。
「俺達はどっからも来てねぇよ。この世界に来てからたまたまこいつと会って、今まで放浪してたんだ」
プリンは菜園での出来事や今まであった出来事の多くは語らず、簡潔にそう伝えた。
するとクリスティは眉をハの字にして話始めた。
「それは大変だったでしょう? 私達は行く所がなくてここにたどり着いた人は皆、歓迎しているの。来るもの拒まずですよ。ウフフッ」
そう言うと警察署の中を案内しようと歩き出した。
「まずここが皆が集える中央広場。そしてこっちが皆の部屋です。さすがに一人一人の部屋はないけれど、皆一緒に寝るのもいいものですよ。ウフフッ」
クリスティは私達をつれ回して、色々な場所へ案内してくれた。
寝る部屋以外にも料理出来る場所があるキッチン、銃や爆弾や武器類を保管している保管室、ディスアーマーを保管している保管室などさまざまな部屋がある。
警察署には屋上へ行く階段もあり、警備担当の人が屋上で見張りをしているらしい。
ここでの決まりは、皆それぞれ仕事を持つ事。働かざる者食うべからず⋯⋯らしい。
まぁそれは最もだね。
ここまで色々説明されたり、案内されたりしてなんか住む感じになってるけど、プリンはどう思ってるんだろう?
「説明はこんな感じかな。どう? 気に入ってくれました?」
「あぁ。だがわりぃがここに住む気はねぇ」
やっぱり私とは考えが違うみたい。
プリンならそう言うと思ったけど、ここ案外いい所だと思うんだけどなぁ。
「住む住まないは別に強制しないわ。でも二人で外に行ってもそう長くは生きていけないと思うのです。現に何かに追われてここにたどり着いたのでしょう? まぁ焦る事はないですよ。考える間はここにいてもいいので、ゆっくり相談して決めて下さいね」
クリスティはそう言うと、私達にニコッと笑顔を向けて去って行った。
私達はまだ正式な住人ではなく客人だからと言って、個室を用意された。
どうするか決めるまではここにいていいらしい。
この個室は誰かが使っていた場所なのだろうか?
ここ何年も使っているような形跡はない。素人目に見てもわかるくらい生活感がまるでない。
タンスやテーブルやベッドにはホコリがかぶっていて、掃除しないとまともに使えない程だ。
私達はずっとこの部屋にいるわけじゃないから、きちんと掃除する必要はないけど、自分達が寝れるくらいにはホコリをはたき片付けた。
「プリン、どうするの?」
「さっきも言ったがここには住まねぇ」
「でも結構いい場所だと思うけど?」
「あいつらはどうも胡散臭い。何日かはここにいるが、すぐに出るぞ」
プリンはどうやら怪しんでいるようだ。
私にはいい人にしか見えなかったけど⋯⋯何が胡散臭いのかわからなかった。
「その銃、そろそろキツくねぇか?」
プリンがふと私の持っている銃を見た。
「キツいって?」
「そろそろ改造してやろうか?」
「え、何もないけど出来るの?」
「あぁ、部品はあるからそれを取り付けるだけだがな」
私の銃を改造してくれるようだ。
そろそろ私も自分で改造出来るようにならないとな⋯⋯。
まずはどうやって部品を取り付けるのかしっかり見ておこう。
「はい」
ホルスターからピストルを取り出しプリンに手渡した。
「まずは分解して⋯⋯っつっても、中のバネを取り替えるだけなんだがな。これで威力は格段に違う」
「へぇ~」
わかった風に相槌してみたが、まず分解の時点でわからない。
分解したら、もう二度と元通りにはならない⋯⋯そんな気がする。
「よし、出来たぞ」
「え、もう?」
ものの数分で出来てしまった。さすがガンマニアだ。
しかし⋯⋯やはり見ただけではわからない。自分でも改造出来るようになりたいんだけど⋯⋯。
これは後で特訓が必要だな⋯⋯。
「あ、ありがとう」
トントンーー
改造をしてもらっていると、部屋の外から扉を叩く音がする。
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