49話 暗殺開花

発見 ヴァルグンベル EXP120



 どこから探索しようかな⋯⋯。


 レーダーに見つかったら絶対、速攻殺されるし下手に動けないよな。



 私は今、レーダーが沢山いる町に来ている。

 レーダーに見つからないように、少しずつ家の陰に隠れながら移動している。

 運よくまだレーダーには見つかってはいないけど、こんなコソコソしてても、見つかるのも時間の問題だ。


 こっちから仕掛けたほうがいいのかな? でも一人やったら、きっとレーダーが集まってくるだろうし。


 どうしようかな。



「こっちやばいな」



 家の壁からレーダーの動きを見る為に、顔を出すとレーダーがこっちに向かって来ている。


 私はすぐに家の裏側に回り、レーダーが来ている方向と別のほうから、見つからないように静かに回った。




「おかしいな。こっちから物音がしたはずなんだが」

「おい、どうした? 何か問題か?」



 レーダー達が私を探しているのか、そんな会話をしている。


 どうしよう、見つかったかな?



「いや、なんでもない。気のせいだったようだ」



 ふぅ⋯⋯どうやら大丈夫だったみたい。

 問題がなかった事を確認したレーダーは、再び向こうに歩いて行った。



 私はそれを確認すると、家の壁にもたれかかった。

 大丈夫かな。私一人でやれるのかな?

 このレーダー達、一掃しなきゃいけないんだよね?




「誰だ、お前は?」

「⋯⋯っ!!」



 どうやら巡回に来た別のレーダーが、私が隠れていた家の裏側に来たようだ。


 私は、レーダーに見つかったと思い、咄嗟に腰に付けていたサバイバルナイフで、レーダーの足を刺してその場から逃げた。



「くそっ⋯⋯おい! 誰か来てくれ」



 レーダーが仲間を呼んでしまった。

 まぁ、足にナイフ刺したくらいじゃ死なないか。


 レーダーが集まって来て、警戒しているようだ。


 どうしよう⋯⋯見つかっちゃったよ。

 今回はピンチになったって、プリンが助けてくれるわけじゃないのに。


 私はいつも誰かに頼ってばっかだな⋯⋯一人じゃ何もできない。

 大輔が言ってた通りだな。


 せいぜいナイフで刺すくらいしかできない。しかも致命傷にもならない足って⋯⋯。

 どうしようもないな。



「おい、探せ。まだ遠くには行ってないはずだ」



 レーダー達はさっそく私を探そうと必死だ。


 これはやっぱり逃げるしか⋯⋯いや、戦う! 戦うしかないよね。

 レーダーはいっぱいいるけど、一人でどうにかするしかない。


 私はそう思って、立ち上がり周りを見渡した。

 まずは一人ずつ、確実に⋯⋯。



「どこ行きやがった」



 私がナイフで刺したレーダーがこっちに向かってくる。

 相手は致命傷とまではいかないけど、負傷しているレーダーだ。こっちにも勝ち目はある⋯⋯はず。



 重装備をしていて、ごつい銃を構えたレーダーが、警戒しながらこっちに来る。

 相手からは私が見えてないはず。


 もう少し⋯⋯もう少し⋯⋯。


 ここの角を曲がったらこのナイフで⋯⋯。



 私の手はナイフの柄を精一杯の力で握りながらも、不安に耐え切れず震えている。



ドンーーグサッーー



「やった!」



 私はレーダーが家の角を曲がった瞬間、首元を掴み重装鎧とヘルメットの間の首筋にナイフを突き刺した。



「うっ⋯⋯」



 レーダーは言葉を喋る暇もなく、その場にゆっくりと倒れ、壁にもたれかかる形となった。



「よし、まずは一人」



 私は一人のレーダーを暗殺した事により、少し自信が持てた気がした。

 そのおかげかあんなにも震えていた手の震えが止まった。


 次のターゲットを探す為、辺りを見渡したが近くにはレーダーはいないようだ。


 そこで私はある事を思いついた。

 殺した遺体をそのままにしておくと、私がここにいた事がバレる。見つかるのも時間の問題だ。

 これは別のゲームでの知識なのだが、殺した相手を担ぎ近くの草むらに隠す事にした。

 そうする事で、時間稼ぎが出来る上に、戦況が有利になる。


 それを思いついて、私は遺体を担いだ。



「うぐっ⋯⋯案外重いな」



 死んでいる人は担いだ事がない。まぁ、当たり前だが、思ったよりも重く感じた。

 やっとの思いで遺体を担ぎ、近くの草むらに運んだ。



「敵を見たか?」

「いや、見てない」

「後ろ姿だが、あれは女だ。さっさと殺っちまおうぜ」



 二人組のレーダーがこっちに向かってくる。


 私は咄嗟に遺体を離し、草むらにうつ伏せになるように隠れた。

 急に遺体を離したせいで、うつ伏せになっている私の上に遺体がドサッと乗っかる形になった。



「うっ⋯⋯」



 思わず声が出てしまったが、手で口を塞ぎ声を殺した。



「今何か、声しなかったか?」

「え? 聞こえなかったが⋯⋯」

「そうか? 確かにこっちのほうから⋯⋯」



 やばい! こっちに来る。

 額から冷や汗が落ちる。



「おい、来てくれ。こっちで何か見つけたみてぇだ」

「お、おう」



 遠くから別のレーダーがこいつを呼んだおかげで、私はこのレーダーに見つからずに済んだ。



「ふぅ⋯⋯」



 助かった。危なく見つかる所だった。

 ここで見つかったら確実に殺されてた。この重い遺体が乗っかってるし、すぐには逃げられなかったし。

 馬鹿なレーダーで助かったよ。


 私は上に乗っかっている遺体が重すぎて、さすがに息が苦しくなっていた為、仰向けになるように力いっぱい遺体をひっくり返した。



「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」



 私は少しの間、仰向けになり息を整え再び戦う準備をした。


 まだ一人しか始末できてない。

 あと何人いるんだろう。そんな事を思いながら重い体を起こし、腰を低くして草むらに隠れている。


 そうこうしている内に、またレーダーの一人がこっちに向かって来た。



「一人か⋯⋯いける!」



 レーダーが目の前に来た瞬間にナイフで足を切り裂くと、もがきながらその場に倒れた。

 そこにすかさず、首元にナイフを突き刺した。


 するともがき苦しんでバタバタしていたレーダーの手足は動きを止めた。



「よし」



 私、案外暗殺とか向いてるかも? いや、向いてちゃまずいよね。

 でも結構楽しい。油断してる相手に何もさせずに一瞬で刺し殺す。

 その行為に私は、少なからず快感を覚えてしまった。


 自分に自信を持てたのはいいけど、暗殺が好きって結構やばいよね。



 私は二人目の遺体も同じ草むらに隠し、すぐにその場を離れた。


 警戒しながら近くの家を壁伝いに歩いて行き、レーダーがいないのを確認すると家の扉を開け中に入った。



「誰だ⋯⋯?」

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